Zoom Video Communications 事業内容・ビジネスモデル

フォロー
時価総額 668億2586万7000 ドル
銘柄コード ZM(NASDAQ)

事業内容とビジネスモデル

沿革・会社概要

Zoom Video Communications, Inc.(ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ)は米国カリフォルニア州サンノゼに本社を置くビデオ会議SaaS企業。2011年、「WebEx」(2007年にCiscoが32億ドルで買収)を創業期から支えた開発者の1人であるEric Yuan(エリック・ヤン)氏によって創業された。2013年にWeb会議サービス『Zoom Meetings』をリリース。Sequoia Capital等から出資を受け、2019年にNASDAQへ株式上場を果たす。2020年4月、1日あたり会議参加者数が3億人に到達(重複有)。

Zoomがミッションとして掲げるのは「動画コミュニケーションの摩擦をなくすこと」である。実際にその通り、Zoomを使い始めるためのハードルは既存の動画会議プラットフォームと比較して低く、コンピュータに詳しくない人でも気軽に使い始めることができる。

「Zoom」と聞いたときに思い浮かべる製品は『Zoom Meetings』だ。そのほかにも『Zoom Phone』や『Zoom Rooms』などの製品を法人向けに展開している。

もともと『Zoom Meetings』は大企業での使用を想定しており、だからこそのシステムの安定性が売りとなっている。しかしながら、新型コロナウイルスの拡大によって個人の雑談用途など、事業としては期待していなかった使い方が急激に拡大した。Zoom社側にとっては、こうしたツールを通じてエンタープライズ(大企業)の社内オペレーションに深く入り込むほど、既存顧客による解約を防ぎ、顧客単価を上げることができる。

2020年2〜4月期の決算報告によると、Zoomを利用する「社員10名以上の顧客数」は26.5万社にものぼる。前年比354%増というとんでもない成長率だ。そのうち年10万ドルを支払った大口顧客は769社。こちらも前年比90%増と少し加速している。

コロナ影響で最も伸びたのは「従業員10名以下」による利用。2020年2〜4月期の売上構成比は30%を占めるまでに拡大し、前四半期の20%程度から急激に拡大した。こうしたユーザーの多くは(年契約ではなく)月次での課金を行うことが多く、解約率が高い。こうした動向が今後の数値にどう影響を与えるかが注目点と言える。

創業者エリック・ヤンとZoomの創業

Zoom創業者のエリック・ヤンは1970年、中国西部に位置する山東省で生まれた。

高校を卒業後、山東省の山東科技大学に進学。1987年、ヤンが大学一年生だったころ、当時付き合っていた彼女(後の奥さん)と遠距離恋愛をしていた。

当時はコンピュータが発達しておらず、リアルタイムで通信する手段はなかった。ヤンは片道10時間の道のりを経て年に二回、彼女に会いに行っていた。

長い道のりの中で、ヤンは「長い時間をかけずに繋がれるデバイスがあれば」と夢想していたという。これが後のZoom創業につながる原体験となった。

大学卒業後、日本でも働いたのち苦労してシリコンバレーにわたったヤンは1997年にビデオ会議サービスのパイオニア「WebEx」に入社する。技術部門のVPまで昇格すると、2007年にシスコによって買収された後も活躍する。

ヤン自身はWebExのサービスに不満をもっていた。機能性が低く、とても快適と言える製品ではなかったのだ。ヤンは上司に「システムを再構築すべき」と提案するも受け入れられず。これを機に、ヤンは自ら理想とするビデオ会議サービスの立ち上げに動き出すことになった。

2011年、エリック・ヤンはシスコのエンジニア40人を引き連れてZoomを創業する。 初めの2年間は丸々プロダクト開発に集中し、納得いく水準に仕上がった段階でスタンフォード大学を最初の顧客として獲得した。

当時すでにスカイプやグーグル・ハングアウトなどのツールはあったが、顧客の不満を直に聞いていたことから確信をもって創業にあたることができた。

詳細:原体験は彼女との遠距離恋愛!Zoom創業者「エリック・ヤン」の半生

事業内容

Zoom(ズーム)はクラウドベースで動画コミュニケーション・ビデオ会議ソリューションを提供している。Zoomのプラットフォームの基盤は『Zoom Meetings』であり、簡単で信頼性が高く、革新的なビデオファーストのコミュニケーション体験を実現している。

Zoomのクラウドネイティブ・プラットフォームはサードパーティ・アプリケーションや物理的なスペースとの統合が容易であり、シンプルで使いやすく、管理・展開が容易で、投資対効果・拡張性が高く、信頼性の高い高品質のビデオ・音声ソリューションに発展している。

Zoomは、プラットフォームに対するバイラルな熱意と、最適な効率性を実現するための多面的な市場投入戦略を組み合わせたユニークな事業モデルを構築している。バイラルな熱意は、ユーザーがZoomのプラットフォームを体験することから始まる。この熱意は、会議の参加者が有料ホストとなり、あらゆる規模の企業がZoomの顧客となることで継続・発展する。Zoomの営業活動は、このバイラルな需要を各顧客機会に最適化されたRTM(routes-to-market、流通)戦略へと落とし込んで推進されている。Zoomはダイレクトセールスのほか、フリーミアムモデルによるオンラインチャネル、リーセル業者、戦略的パートナーを通じた顧客獲得を図っている。

製品・サービス

Zoomは、ビデオファーストのユニファイド・コミュニケーション・プラットフォーム、UCaaS(Unified Communication as a Service)を提供しており、摩擦のないビデオ、電話、チャット、およびコンテンツ共有機能を通じて人々を結びつけ、人々のコミュニケーション方法を根本的に変える。Zoomの製品には、『Zoom Meetings』『Zoom Phone』『Zoom Chat』『Zoom Rooms』『Zoom Conference Room Connector』『Zoom Video Webinars』『Zoom for Developers』『Zoom App Marketplace』がある。

Zoom Meetings

『Zoom Meetings』は、モバイルデバイス、デスクトップ、ラップトップ、電話、および会議室システム全体で、HDビデオ、音声、チャット、およびコンテンツ共有機能を提供する。

Zoomのアーキテクチャは、1つの会議で何万人ものビデオ参加者をサポートすることができる。会話は、1対1、1対多、または多対多にすることができる。『Zoom Meetings』は49人のビデオギャラリー・ビュー、バーチャル背景、トランスクリプト、ビデオブレイクアウトルーム、注釈付きのスクリーン共有、およびチームの共同作業を助ける他の強力なビジネスアプリケーションとの統合、MP4/M4Aのクラウドおよびローカル録音を特徴とする。

『Zoom Meetings』は、AtlassianDropboxGoogleLinkedInMicrosoftSalesforceSlackなどのツールと統合できる。

『Zoom Meetings』はモバイルデバイスやタブレットでのユーザービリティ向上にも注力しており、外出先で会議に参加する従業員にとっても柔軟なツールとして大きな役割を果たす。実際、2020年1月期には会議参加者の6人に1人がZoomモバイルアプリを使って『Zoom Meetings』に参加していたという。

Zoom Phone

『Zoom Phone』は、セキュアなコールルーティング、コールキューイング、コール詳細レポート、通話録音、通話品質モニタリング、ボイスメール、ビデオへの切り替えなど、強力な「プライベートブランチエクスチェンジ(PBX)」機能を提供する企業向けクラウド電話システム。スタンドアローン、または『Zoom Meetings』のオプションアドオンとして利用できる。『Zoom Phone』は、顧客が既存のPBXソリューションを刷新し、ビジネスコミュニケーションとコラボレーション要件のすべてを Zoom に統合することを可能にする、Zoomのモダンなビデオファースト・UCaaS 戦略の中核的なコンポーネントとして機能する。

『Zoom Phone』は、公衆交換電話網(PSTN)へのネイティブ接続のサポートを介して、インバウンドおよびアウトバウンド通話を提供する。『Zoom Phone』は、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、プエルトリコ、英国、および米国でネイティブのPSTN接続を提供している(2020年3月時点)。

『Zoom Phone』はまた、既存のサードパーティの音声回線を『Zoom Phone』のクラウドにリダイレクトすることにより、企業顧客に現在のPSTNサービスプロバイダを維持する柔軟性を提供するプレミス・ピアリングおよびクラウド・ピアリングをサポートしている。ハイブリッド接続もサポートされており、顧客はネイティブの『Zoom Phone』通話プランとサードパーティの音声回線を混在させることができる。このユニークな機能により、顧客は、既存のサービスプロバイダ契約、電話番号、および通話料金を維持しながら、『Zoom Phone』のすべての利点と機能を享受することができる。

Zoom Chat

『Zoom Chat』は、会議や電話でコミュニケーションを図る顧客向けのZoomクライアントに含まれており、デスクトップ、ラップトップ、タブレット、モバイルデバイス間でメッセージ、画像、音声ファイル、およびコンテンツを即座に共有して、チームが接続状態を維持できるようにする。組織は、グループまたは 1-1 チャンネルでの共同作業、ファイルや情報の共有、および接続状態を維持するために『Zoom Chat』を使用する。

『Zoom Chat』は、ユーザーの組織外の人々に簡単に招待することができ、ユーザーは簡単にチャットから会話中に電話やビデオ会議に切り替えることができる。また、『Zoom Chat』は、会話や共有ファイルを確認したいユーザーに発見可能性(discoverability)を提供し、コンテンツを保存することができる。『Zoom App Marketplace』には、他の企業システムへの通知やワークフローの改善を提供する60以上のチャットボットが用意されている。

Zoom Rooms

『Zoom Rooms』はソフトウェアベースの会議室システム。エグゼクティブオフィス、ハドルルーム、トレーニングルーム、放送スタジオなど、あらゆる部屋・会議室にソフトウェアと統合されたシステムを導入することで、室内およびバーチャル参加者全体で円滑なコラボレーションを実現できる。『Zoom Rooms』は、摩擦のない『Zoom Meeting』の体験向上のために、ワンクリックでの会議参加、ワイヤレスのマルチシェアリング、インタラクティブなホワイトボード、および直感的な部屋のコントロールを可能とする。

『Zoom Rooms』は、ターンキー展開のために『Zoom Rooms Appliances』などの専用ハードウェアを活用したり、Zoomのオープンなハードウェアエコシステムとプロフェッショナルなオーディオ/ビジュアル機器を使用して部屋の構築をカスタマイズしたりすることができ、組織はあらゆるユースケースに対応したビデオ会議室を構築することができる。

Zoom Rooms Scheduling Display:
『Zoom Rooms Scheduling Display』は、カレンダーシステムを介してシンプルでオンザフライ(on-the-fly、リアルタイム、直接的な)部屋予約と部屋の利用管理を提供することで、アジャイルオフィスのニーズを満たすために役立つ。『Zoom Rooms』のライセンス1つで顧客はこのサービスに無制限にアクセスすることができる。サービスを利用するために必要な準備は、部屋の外に設置されたiOSまたはAndroidのタッチディスプレイのみで、利用管理を簡単にデジタル化できる。

Zoom Rooms Digital Signage:
『Zoom Rooms Digital Signage』は、会議室内外のディスプレイを活用して、画像、ビデオ、URLコンテンツのプレイリストを投影する。『Zoom Rooms』の一部として含まれており、役割に応じた管理者は、Zoom管理者ポータルを介して無制限のデジタルサイネージコンテンツとディスプレイを簡単に管理し、企業コミュニケーション、社内マーケティング、ブランディングなどのために画面に表示されるコンテンツを遠隔操作することができる。

Zoom Conference Room Connector

『Zoom Conference Room Connector』は、SIP/H.323 エンドポイントが『Zoom Meeitngs』に参加するためのゲートウェイ。PolyCiscoなどのプロバイダーが提供するSIP/H.323 会議室システムを使用している組織では、『Zoom Conference Room Connector』を使用することで、これらの従来のハードウェア・ビデオ会議システムをクラウドに移行することができ、Zoomプラットフォームを活用しながら既存の投資を活用することができる。

組織が従来のハードウェアベースの会議室からソフトウェアベースの『Zoom Room』に移行する際、IT管理者は、『Zoom Conference Room Connector』を使用することで、サービス、メンテナンス、およびサポート契約のレイヤのコストを削減し、エンドポイントをブリッジすることができる。コスト削減により、組織はより多くの会議室のビデオ・イネーブリング(動画配信対応)に再投資し、既存のSIP/H.323 エンドポイントを活用して、すべての会議室で一貫したクラウドベースの体験を継続することができる。

Zoom Video Webinars

『Zoom Video Webinars』では、タウンホールミーティング、ワークショップ、マーケティングプレゼンテーションなどの大規模なオンラインイベントを実施することができる。最大100人のパネリストがフルビデオ、音声、チャット、コンテンツを共有し、10,000人以上のビューオンリーの参加者とコミュニケーションをとることができる。

『Zoom Video Webinars』には、Q&A、レポート、招待状、CRMおよびマーケティングオートメーションソフトウェアの統合などの機能が含まれている。また、『Facebook Live』『YouTube』その他のカスタムストリーミングサービスと簡単に統合し、大規模な視聴者ベースへのアクセスを提供する。

Zoom for Developers & Zoom App Marketplace

『Zoom for Developers』では、開発者は、Zoomのビデオ、電話、チャット、およびコンテンツ共有を他のアプリケーションに統合したり、どのシステムからでもZoomアカウントを管理したりすることができ、その使用状況やネットワークメトリクスデータに完全にアクセスできる。ZoomのSDKとAPIを使用して、Zoom、サードパーティの開発者、およびパートナーは、Zoomのプラットフォームを他のクラウドサービスと統合するアプリケーションを構築できる。また、顧客は、Zoomをシステムに統合する高度にカスタマイズ可能なプライベートアプリケーションを開発することができる。拡張可能な API、クロスプラットフォーム SDK、および MobileRTC の豊富なツールボックスにより、2020年1月期の月間平均1億7,000万件以上のAPIエンゲージメントが実現した。

『Zoom App Marketplace』は、Zoomとサードパーティの開発者によって構築されたインテグレーションを集約し、マーケットプレイスとして公開している。開発者がアプリを簡単に公開できるようにし、顧客が新しい機能でZoomの体験を強化できるようにしている。『Zoom App Marketplace』では、セキュリティとユーザーエクスペリエンスを確保するために、アプリ公開にあたって審査を必須としている。『Zoom App Marketplace』は、Salesforceや『Microsoft Teams』、Google Workspace(旧称 G Suite)といったサービスに対応したアプリやボットのほか、DropboxBoxAtlassianAdobe Marketoとの製品統合を特徴としている。

セキュリティ問題

Zoomは、かねてよりセキュリティ上の問題が取りざたされてきた。

3月の新規上場からまもない2019年7月には「攻撃者が悪意のあるビデオ会議のURLを配布してユーザーにクリックさせると、Webカメラが自動的に起動し、カメラ越しに生活を覗けてしまう」という問題が指摘され、大きな批判に晒された。

Zoomは当初、抜本的な対応をしない方針を示しユーザー側の対応を求めたが、そんな方法で批判が収まるはずもない。CEOのエリック・ヤンは謝罪し、ローカルウェブサーバーの機能を、Zoomから外すことを発表した。

参考:ヴィデオ会議「Zoom」のウェブカメラ利用に脆弱性、その対応を巡る方針転換の理由

セキュリティ上の問題がより大きく話題になったのは、コロナ影響でZoomの利用が膨れ上がった2020年からのことだ。

3月には1日の会議参加者数が2億人を突破。2019年12月末には最大1,000万人程度だったことを考えれば、信じられないような拡大である。

注目度が高まる中で、セキュリティ上の問題も急増した。中でも象徴的なのが、「Zoom Bombing(Zoom爆撃)」と呼ばれるもの。会議室のIDやURLさえ分かっていれば参加できるという特性を悪用し、学校のオンライン授業に見知らぬ人物が乱入するなどの問題が相次いだ。

3月26日には、ZoomのiOS版アプリが利用者の承諾を得ずにユーザーデータをFacebookに送信していることが発覚。アメリカでは集団訴訟問題にまで発展している。3月31日には、通信データの暗号化に関する問題も発覚。Zoomは「エンドツーエンドで通信を暗号化している」と説明してきたが、実際には十分ではなかったのだ。

参考:結局、Zoomは使っても大丈夫なのか?

こうした批判を受け、CEOのエリック・ヤンは公式リリースで再び謝罪。問題が起こってしまった要因について「Zoomが大企業向けに構築された」という点を強調している。要するに、もともとセキュリティ要件がある程度整ったエンタープライズ向けのシステムだから、個人や大学などが使った場合に問題が露呈したというのだ。

種々の問題に対応するため、エリック・ヤンは「90日間プラン」を実行、セキュリティ問題の掃討にあたることを表明した。この経過についても、公式ブログで何度か報告されている。

7月3日には90日間プランの完了を報告。「プラットフォームの安全性、個人情報保護、セキュリティを業務すべての中心に据えることができた」とアピールしている。


2020年1月期 Annual Report FORM 10-K(提出日:2020年3月20日)