ウォーレン・バフェットが過去に行なった「株式以外」の投資を元に語る「投資の基本原則」とは

バークシャー・ハサウェイの2013年の「株主への手紙」に「Some Thoughts About Investing(投資に関する考え)」という項目があったのでメモしておきます。

内容は、バフェットが過去に行なった「株式以外」への投資について語ったもの。

かなり長いですが、彼の「投資」全般に対する考え方がよく現れています。



投資に関する考え

「投資は最もビジネスライクな時、最も賢明になる」ー『賢明なる投資家』ベンジャミン・グレアム著

この話を始めるのに、ベン・グレアムを引用するのはぴったりだ。それは、私が投資について知っていることの多くは彼のおかげだからだ。

ベンについては後でもっと詳しく話すし、株式投資については少し早めに話す。

だけど、まずは私が大昔に行った株式でない二つの小さな投資について話させてほしい。

どちらも私の資産の大きさにはあまり貢献しなかったが、教育的だ。


1986年、農地への投資

この話はネブラスカで始まる。

1973年から1981年まで、中西部では農地価格の暴騰があったが、その原因は急激なインフレが起こり、小さな農村銀行の貸金ポリシーによって加速されるという噂が広まったからだった。

それからバブルが弾け、価格は50%以上下がり、レバレッジをかけた農家やその貸し元の両方が打ちのめされた。

アイオワとネブラスカの銀行はそのバブルの余波で直近の大恐慌の5倍倒産した。

(訳注:バフェットは1930年生まれ、バークシャーの会長になったのが1965年なので、それよりも少し後ということになります)

1986年、私はFDIC(米連邦預金保険公社)からオマハの50マイル北にある400エーカーの農地を購入した。

28万ドル払ったが、倒産した銀行が数年前に農家に貸した額よりもかなり小さな額だった。

私は農業について何も知らなかった。

しかし、私には農業が好きな息子がおり、その農地から何ブッシェル(単位)分のトウモロコシや大豆が生産されるかや、どのくらいの営業費用がかかるかを彼から学んだ。

これらの推計から、私は農家の平均的な利回りはだいたい10%くらいだろうと計算した。

また、その生産性は時間をかければ改善しそうだし、穀物の価格も上がるだろうとも考えた。

両方の予想は実証された。


私はその投資になんのダウンサイドもなく、潜在的にかなりのアップサイドがあると結論づけるために特別な知識や知能は必要なかった。

もちろん、たまたま収穫が悪かったり価格がときどき下落することはあるだろう。

しかしだからなんだ?通常の良い時期もあるだろうし、その土地を売るどんなプレッシャーも受けずに済むだろう。

それから28年経った現在、その農地は利益を3倍に増やし、私が払った額の5倍以上は価値がある。

今でも私は農業について何も知らないし、最近その農地に2度目の訪問をしただけだ。


1993年、商業用地への投資

1993年に私は別の小さい投資を行った。

ラリー・シルバースタインは私がCEOだったときのソロモンの領主だ。

RTC(Resolution Trust Corp)が売っていたニューヨーク大学の隣にある商業用地について教えてくれた。

またしても、バブルが弾けていた。商業不動産に関するバブルだ。

RTCが作られたのは、楽観的な貸し出しにより愚か者を助長し、倒産した機関の資産を処分するためだ。


ここでも、分析は単純だった。

農地のケースと同様に、その不動産からの当時のレバレッジなしの利回りは10%ほどだった。

しかしその不動産はRTCによって管理されていたので、その収入は空っぽの店をいくつかリースしたら増加しそうだった。

さらに重要なことに、最大のテナント - そのプロジェクトスペースの20%くらいを占有した - は1フィートあたり5ドルしか払っていなかったが、他のテナントの平均は70ドルだった。

そのバーゲン・リースがあるということは、9年以内に利益が大きく増えるだろうということだ。

その不動産の場所はまた素晴らしかった。ニューヨーク大学はどこにも行かない。

私はラリーや友人のフレッド・ローズを含む小さなグループに加わり、その区域を購入した。

フレッドは経験豊富なハイグレードの不動産投資家で、彼の家族とともに、その不動産を管理してくれるはずだった。

実際管理してくれた。古いリース期限が終了すると、利益は3倍になった。

年間の利回りは今や我々の元々の投資の35%を超えた。

さらに、我々の元々の抵当は1996年と1999年に借り換えされ、いくつかの特別な利回りが投資額の合計で150%を超えるまでになった。


まだその不動産をみたことはない。

農地とニューヨーク大学の不動産の両方からの収入は、これからの数十年でほぼ確実に増加するだろう。

収益は劇的なものにはならないだろうが、二つの投資は私の人生を通じて、しっかりしてて満足のいく資産であるだろう、ついでに私の子供達や孫たちにとっても。


バフェットが考える投資の基本原則

私がこの話をしたのは、投資における基本原則を説明するためだ。

① 満足のいく投資リターンを達成するために、専門家になる必要はない。

しかし、専門家でないなら、自分自身の限界を認識し、合理的に確かにうまくいくコースについていかなくてはならない。

ものごとをシンプルにしておき、ホームランを狙ってはいけない。素早く儲かると約束されたら、素早く「やめとく」と反応しろ。

② あなたが検討する資産の「将来の生産性」に集中せよ。

もし、その資産が未来に生み出す利益の大まかな見積もりが安心してできないなら、忘れて次に進め。

全ての投資機会を評価する能力がある人など誰もいない。

しかし全知である必要はない。あなたが引き受ける行動を理解する必要があるだけだ。

③ もしそうではなく、「価格の動き」を予測することに集中しているのであれば、あなたは投機しているのだ。

そこに不適切なことはない。しかしながら、私はうまく投機できないことを知っているし、長い間そうやってうまくいくと主張する人々に対して懐疑的だ。

コインを投げれば、半分の人間は最初のトスで勝利する。

もし彼がゲームを続ければ、その中の誰も利益を得る期待はできない。

そして、その資産が最近、調子がいいからといって、それを買う理由には決してならない。

④ 私の2つの小さな投資で、私はその不動産が生産するもの”だけ”について考えたし、日々の評価額については全く気にしなかった。

試合に勝つのは、試合に集中しているものだけだ。スコアボードに目が釘付けになった人たちではない。

もしあなたが株価を見ることなしに土日を楽しめるなら、平日にそれを試してみてほしい。

⑤ マクロな意見を考えたり、他の人のマクロや市場の予測に耳を傾けるのは時間の無駄だ。

実際、それは危険だ。

なぜならそれにより、本当に重要な事実を見る目がぼやけてしまうかもしれないからだ(私がテレビのコメンテーターが市場がどうなるかについてベラベラと意見を述べるのを聞くとき、私はミッキー・マントルの痛烈なコメントを思い出す:「放送席に入るまでは、試合がどんなに簡単なものかわからない」)。

⑥ 私が行った2つの購入は1986年と1993年のことだ。

経済、金利、株式市場がその直後にどうなるかは私がそれらの投資を行うのになんの重要性もなかった。

その頃、新聞の見出しや専門家がなんと言っていたか私は思い出せない。

誰がなんと言おうと、ネブラスカでコーンは育ち続けるだろうし、学生たちはニューヨーク大学に集まるだろう。

私が行った2つの小さな投資と、株式投資には大きな違いが一つある。

株式は、保有するポジションに対して分刻みで評価額を知らせてくるが、私の農地やニューヨークの不動産はどちらも見たことがない。


投資家にとって、保有資産の評価額が激しく変動することはとてつもないアドバンテージだ。そして一部の投資家にとっては実際そうだ。

結局、もしも不機嫌な奴が農地にいて自分なら売買する不動産価格を毎日私に向かって叫んできたら、そしてそれらの価格が彼らの精神状態によって短い時間で大きく変わるのであれば、彼の不安定な行動から一体どれだけの利益を得ることができるだろう?

もし彼の日々の叫びが馬鹿げているほど低ければ、そして手持ちの現金があれば、彼の農地を買うだろう。

もし彼が叫ぶ数字がむやみに高ければ、私は彼に売るか、そのまま農業を続けるだろう。


しかし、株式の保有者たちは、あまりにも頻繁に気まぐれになるし、仲間たちの非合理な行動から彼らもまた非合理になったりする。

マーケットには金利や株式相場の動向などについてあまりに多くの会話が存在するので、一部の投資家たちは専門家の言うことに耳を傾けるのが重要だと信じている。

そして、さらに悪いことに、彼らのコメントを基に行動することを考えるのが重要だと信じているのだ。

農地やアパートを所有する時には何十年も静かに座っていられる人々でも、株式相場の流れや、「そこにじっと座ってないでなんかしろ」と暗にメッセージを送ってくるコメンテーターがくっついてくるのに晒されると、狂乱すると言うことがあまりにも多く起こる。

そんな投資家たちにとって、流動性をメリットとする資格はなく、災いに変わる。


不安定で口の空いた隣人が私の農地への投資をダメにできる以上に、「瞬間暴落」やいくつかの他の極限的な市場の変動によって、投資家が傷つけられると言うことはない。

実際、転落する市場は真の投資家にとっては助けとなるものだ、値段が価値のある水準からはるか遠くに離れた時、利用可能な現金を持っているなら。

恐怖の地合いは、投資する際には友人である。調子のいい世界こそ、あなたの敵だ。

2008年の終わりに起こった並外れた金融恐慌の中で、私は決して農地やニューヨークの不動産を売ろうという考えは起こさなかった、厳しい景気後退が明らかに来ようとしているとわかっていても。

そして、もし私が長期の良い見通しがあるしっかりした事業を100%所有していたなら、それを安売りすることを考えることさえも私にとっては馬鹿げたことだろう。

だから、なぜ素晴らしい事業の小さな持ち分だったら株式を売却しなくてはならないのだ?

確かに、それらのどれかは最終的に残念な結果となるかもしれないが、全体としてうまくいくのは確かだ。

世界がアメリカに存在する信じられないほどの生産的な資産や無限の人間の創造性を全て飲み込んでしまう、などと本当に信じる人がいるだろうか?

チャーリーとバフェットの株式購入の意思決定プロセス

チャーリーと私が株式(ビジネスの小さな一部分と考えている)を買うとき、我々の分析はビジネス全体を購入する時に使うものととても似ている。

まず我々は今後5年間、あるいはそれ以上の利益の幅を分別良く見積もることができるかどうかを決断しなくてはならない。


もし答えがイエスであり、我々の見積もりの低限と比べて合理的な価格で売られているのであれば、その株式(あるいは事業)を購入する。

しかし、もし未来の利益を見積もる利益に欠けているなら(それは普通のことだ)我々は単純に他の候補に移動する。


54年もの間、一緒に働いたが、マクロや政治的環境、他の人の見立てをもとに魅力的な購入を見送ったことは一度もない。

実際のところ、これらの題目は決断する時に出てくることすら一度もない。


しかしながら、我々が自分たちの「技量の輪」の大きさを認識し、その中にとどまっていることはとても重要だ。

それでも、株式や事業において、時には間違いをおかすこともある。

しかしそれによって、長期的に上昇する市場が、予想される価格行動に基づいた購入を誘発し、その行動がどこにあるかを望む場合に発生するような災害にはならない。

プロでない投資家は、低コストのインデックスを買っておきなさい

ほとんどの投資家たちは、もちろん、人生でビジネスの見通しについて調べることに重きをおいてきていない。

もしそうであるなら、特定のビジネスについて将来の利益を稼ぎ出す力について予測するために十分な知識がないと結論づけるだろう。

これらのノン・プロフェッショナルたちには良いニュースがある。

典型的な投資家はこのスキルを必要としていない。

全体として、アメリカのビジネスは長い間素晴らしい結果を残し、今後もそうであり続けるだろう(しかし、ほぼ確実に、予測できないのらりくらりとした動きで)。

20世紀の間、ダウ平均は66から11497にまで増大し、配当の上昇気流を支払ってきた。

21世紀にはさらなる利益が得られるだろうし、ほぼ確実にかなりのものになるだろう。

ノン・プロフェッショナルの目標は勝ち馬を選ぶことであるべきではない - 彼も彼の「ヘルパー」たちもそんなことはできない - しかしむしろ、全体としてうまくいくであろうビジネスの横断的なまとまりを保有するべきだ。

低いコストのS&P500インデックスファンドがこのゴールを達成するだろう。

それこそがノンプロの投資があるべき「何か」だ。

「いつ」かもまた重要だ。

大きな危険は、臆病だったり初心者の投資家はマーケットに極端な活気がある時に参入し、含み損が発生した時に幻滅することだ。(最近のバートン・ビッグの洞察を思い出せ:「強気の市場はセックスのようなものだ。それが終わる直前が最も心地よい。」)

そういう種類の間の悪さへの解毒剤は、投資家が長い時間をかけて持分を増やしていくことで、ニュースが悪かったり株式がすごく高くなっても決して売らないことだ。

それらのルールに従うことで、「何も知らない」投資家はコストを分散し、同時に最小化し実際に確実に満足のいく結果を得られるだろう。

実際、自分の欠点について現実的な洗練されていない投資家たちは、たった一つの弱点にも盲目な、知識のあるプロフェッショナルよりも長期的には良い結果を得られそうなものである。


もし「投資家」が熱狂的になって農地をお互いに売買し合ったからと言って、利回りも収穫の値段も増加するわけではない。

そういった行動のただ一つの帰結として、助言や不動産の交換にかかるかなりのコストにより、農地所有者たちの長期的な利益が減少したことに気付くであろう。

それにも関わらず、個人や機関は、助言をしたり取引を促進することで利益をえる人からアクティブになるようにいつも促されるだろう。

結果としての摩擦コストは巨大なものになりうるし、投資家全体にとって利益を欠く。だからそういうガヤは無視して、コストを最小化し、農地に投資するように株式に投資しなさい。


付け加えておいた方がいいと思うが、私のお金は、私が言ったように管理される:私がここで助言するのは要するに私の意思で並べる特定の指示に等しい。

私の遺贈ではお金が妻の利益になるように委託される。(お金を個々人の利益となるように使わなくてはならない、なぜなら私のバークシャーの持分は全てある種の慈善団体に10年かけて寄贈されるからだ。)

私の委託先へのアドバイスはこれ以上ないほどシンプルだ:現金の10%短期国債に投じ、90%をとてもローコストなS&P500インデックスファンドに投資すること(バンガードのがおすすめ)。

このポリシーによるその委託の長期的な結果はほとんどの投資家が達成するよりも高い結果を期待できると信じている。

年金ファンドだろうと、機関だろうと個人だろうと。高い給料のマネージャーを雇っているよりもね。

連載シリーズ (全13回)

ウォーレン・バフェット特集