企業価値評価に関するアプローチについて

基本的にこのノートは、世界中のありとあらゆる企業の内在価値を計算して、「今、投資するべき」企業を見つけ出すことを目的としています。


そのために、このノートでは簡易化されたDCF(割引キャッシュフロー)法を使っているのですが、そのことについて毎回説明するのはアレなので、方針をここにまとめておきます。

DCF法の基本的な考え方

DCF法はその名の通り、企業の本質的なバリューを「将来生み出されるフリーキャッシュフロー」を現在価値に割り引いて(ディスカウントして)合計することによって計算します。

この考え方自体は極めてシンプルで、要するに「毎年うん億円分の金の卵を産むガチョウ(=上場企業)を買うとしたら、いくらの値段が妥当か?」という話です。


例えば、とある上場企業Aが永遠に10億円のフリーキャッシュフローを生み続けるものとしましょう。

もし、その会社を200億円で買うことができたら、20年で元が取れることになります。500億円かかったら50年です。


その上場企業Aをいくらの値段で買いたいか、というのは究極的には買い手次第であり、絶対的な適正価格は存在しません。


ただ、一つ間違いないこととして、将来の10億円は、今手元にある10億円よりも価値が低いと言えます。

それは確実性の問題もあるし、単純に現実化するまでに時間がかかるということで、その分を割り引いて考えるべきです。


このようにして考えられたのがDCF法であり、件の上場企業Aの値段でいうと

「10億円 + 10億円 x 割引率 + 10億円 x 割引率の二乗 + ...」という風に計算することで妥当な価格を導き出すことになります。

DCF法の問題点

極めてシンプルでなおかつ「絶対的に正しい」とも言われるDCF法ですが、一つ致命的な問題があります。

それは、「どんな値をインプットしたらいいかわからない」ことです。具体的には

・将来の期待フリーキャッシュフローがわからない

・割引率がわからない


計算する筋道は正しくとも、入れる値を間違えれば「ガーベジイン・ガーベジアウト」になってしまう。それがDCF法の致命的な難点です。


この問題を解決するために、いわゆる”きちんとした”DCF法では、将来キャッシュフロー及び割引率を緻密に計算してゆきます。

将来キャッシュフローは、売上高成長率やROIC(投下資本利益率)などを分析することで算出します。

割引率を算出するには、株主資本コストと負債資本コストの加重平均を用います。

株主資本コストの計算方法はいくつかあるものの、CAPMと言われる数字を使うのが一般的です。


そういった手法により、将来を見積もる際の誤差を少しでも小さくしよう、というのが一般的なアプローチです。


ウォーレン・バフェットらのアプローチ

ただ、そのやり方に真っ向から対立する考え方を打ち出している人がいます。

それが、「投資の神様」として有名なウォーレン・バフェット氏と、そのパートナーであるチャーリー・マンガー氏の二人です。


彼らは、世の中に存在する割引率の計算方法について「正しかった試しがない」としています。

そして、「計算というものは複雑になればなるほど本質からは遠ざかる」といったことも度々発言しています。

そこで彼らがとったアプローチがこれです。

極めてシンプルな考え方ですが、まずは「正確に見積もる」ことを最初から諦めます。


その上で、将来キャッシュフローについては「ほぼ間違いなくこの中に収まるだろう」という「可能性の幅」を見積もることに集中します。

そしてその代わり、割引率はかなり小さめに、米国長期国債の利回りで割り引きます。


そして、その計算結果として「明らかに魅力的な」会社である時のみ投資を行う。そういう考え方です。


このノートのアプローチ

基本的には私も彼らと同じアプローチを取りたいと考えています。


正確な予測を行うことは無理であり、「とても強力な競合優位性をもつ企業を、そこそこ魅力的な価格で買い、半永久的に保有する」ことの方が、長い目で見ればはるかに良いリターンをもたらしてくれる、と考えているからです。


ただ、そのためには実際にその会社を購入する前にかなり慎重に判断しなくてはなりません。何と言っても「半永久的に」保有するのですから。


ということで、毎日1社ずつを目安に企業をチェックしていっているのがこの「企業価値を考えるノート」となっています。

連載シリーズ (全13回)

ウォーレン・バフェット特集