バフェットから投資家へ、決算報告を読む際の3つの忠告

バークシャー・ハサウェイ


最近、バフェットの株主の手紙を1977年から40年分くらい地道に読み進めているのだが、だんだん説教が増えてきて面白い。


2002年の「手紙」の中で投資家が決算報告書を読む際に注意すべきことについて語っていたのでメモしておく。

ざっくりと言うと、

1. 一つでも不審な点があったら、その会社を信用するな。キッチンにゴキブリが一匹いたらその何倍もいるのと同じ。とりわけEBITDAゴリ押しは悪の所業

2. 理解できない説明を行う会社を信用するな。それは何かを隠したいからだ。

3. 業績予測をやたらと行う、そして達成する会社を信用するな


とのこと。1と2はまあバフェットらしいし、常識として頷ける部分もあるけど3に関しては今の上場企業のほとんどが当てはまってしまうんじゃないか。

彼の論によれば、ビジネスの将来予測なんて誰にもできないから、当てにできないし、予測が当たるようならなおさら疑わしい(数字を作り上げている)とのこと。


追記:なぜEBITDAゴリ押しは悪の所業なのか

よく理解していなかったが、EBITDA(Earnings before interest, taxes, depreciation and amortization)とは金利、税、有形固定資産の減価償却費(depreciation)、無形固定資産の償却費(amortization)の4つを引く前の利益、という意味。実際の計算では営業利益に有名・無形の減価償却費を足し戻すという形で計算される。

EBITDAの背景にあるのは、減価償却費は実際の支出を伴わない「ノンキャッシュ(非現金)費用」であるため、それを足し戻して現金の流れのみで算出する利益を知りたいよね、という考え方だ。

バフェットはこのEBITDAを真っ向から否定している。

減価償却費は、ある資産を獲得するのに支払ったコストを、その後有効とされる期間に分割して計上する費用だが、それをなかったことにすることなどありえないと言うのだ。

これを説明するのに、彼は「もし10年分先に支払ったのが従業員の給料だとしたらどうだい?2年目以降の給料を『ノン・キャッシュ費用だから』となかったことにするのが正しい考え方だと思うかい?」という例え方をしている。

原文と簡訳

http://www.berkshirehathaway.com/letters/2002pdf.pdf

一部簡訳:

投資家に向けて3つの忠告だ。まず一つ、弱っちい会計を示す会社に注意しな。もし、会社が未だにオプション費用を計上しなかったり、年金想定が架空のものだったら、注意しな。経営陣が、目に見える低い道を選ぶようなら、まず奴らは裏側で似たような道を通ってると思っていい。キッチンにゴキブリが一匹だけしかいないってことはないんだ。

EBITDAをやたらと喧伝するのは特に悪質な行いだ。そうすることは、deprecation(有形固定資産の減価償却費)が「非現金」費用であり、本当は費用でないと暗に言いたいのだ。真実として、deprecationは特に魅力のない費用だ、なぜならそれが表す現金支出は事前に支払われ、獲得した資産が事業に何かしらの利点をもたらすよりも前だからだ。よかったら想像してみてくれ、今年の始めに会社が今後10年間の社員のサービスぶん、お金を払っていたと(固定資産が10年間利用可能であるとされるように)。その後の9年間、給料は「ノンキャッシュ」費用となる - 今年に行われた事前の給与から差し引かれるのだ。2年から10年までの費用の記録は単なる簿記形式だなどと議論をふっけようとする人がいるだろうか?

二つ目に、理解不可能な脚注は通常、信頼できない経営陣を示唆する。もしあなたが脚注やその他の経営の説明を理解できないなら、それは通常CEOが理解して欲しくないからだ。エンロンのとある取引の説明は未だに困惑する。

最後に、利益の予測や成長の期待をやたらと吹聴する企業には懐疑的になるべし。事業が静かに、サプライズなしの環境で営業されることは滅多にないし、利益はスムーズに成長するもんではない(もちろん、投資銀行員の売り出し届出書では違うけど)。

チャーリーと私は、我々の事業が来年どのくらい稼ぐかを知らないだけではない - 次の四半期にどれだけの利益を上げるかすら知らないのだ。我々は、常々未来がわかると主張するCEOに対して懐疑的だ - そして、もし彼らが宣言した目標を一貫して達成しているなら、実に疑い深くなる。「数字を達成する」ことをいつも約束する経営者はいずれ、数字を「作り上げる」誘惑にかられるものだ。

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ウォーレン・バフェット特集