沿革・会社概要
サイボウズ株式会社は東京日本橋などにオフィスをおく企業。1997年に高須賀宣氏(当時30歳)と畑慎也氏、現社長の青野慶久両氏(当時26歳)により高須賀氏の出身地である愛媛県松山市で創業。事務所は2DKのマンション(畑氏の住まい)であった。同年「サイボウズ Office 1」 を発売。1998年「サイボウズ Office 2」 、1999年「サイボウズ Office 3」を発売し2000年東証マザーズに上場。現在もコラボレーションツール事業としてクラウドサービスを中心に展開する。
「サイボウズ」という社名は、「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めた「子供」の呼び方「坊主(bozu)」の造語によるもの。「電脳社会の未来を担う者達」という意味も込められている。
事業内容
サイボウズは、グループウェアの開発とライセンス販売に加え、SaaS・クラウド型グループウェア・ネットサービス事業を展開している。そのほか高付加価値SI(システムインテグレーション)も提供している。グローバルに拠点をもつ企業や公共団体などの大規模チームから、企業間プロジェクト、ボランティア、家族などの小規模チームまで幅広い顧客を抱える。
サイボウズは創業時からソフトウェアライセンス販売を中心としてきた。近年はサーバーやセキュリティなどの運用環境も提供するクラウドサービスを積極的に推進している。
サイボウズグループは、サイボウズ株式会社、子会社5社及び関連会社2社により構成されている。
連結子会社は、ソフトウェア技術の研究開発を行うサイボウズ・ラボ株式会社、ソフトウェアの開発・販売を行う才望子信息技術(上海)有限公司、ソフトウェアの開発を行うCybozu Vietnam Co., Ltd.、Kintone Corporation、KINTONE AUSTRALIA PTY LTD、持分法適用関連会社が1社となっている。
製品・サービス
kintone(キントーン)
業務アプリ構築クラウド「kintone(キントーン)」では、PaaS(Platform as a Service)として提供される。プログラミングも特別なスキルも不要でデータベース、情報共有、コミュニケーションなどのツールを作成できる。システム連携や、高度な開発にも対応する。1ユーザー月額1500円、最低5ユーザーから契約できる。
積極的な広告展開を行い、業務改善に役立つクラウドサービスとして認知度向上を図っている。契約社数は2019年に14,000社を突破し、売上高については連結ベースで前年同期比40%を超える成長を遂げている。「kintone」の利用が拡大する中、利用率の高いモバイル版について、2019年5月にiOS/Androidアプリともにデザインを大幅リニューアルした。「kintone」内のアプリやレコードに到達するまでの操作性などのユーザビリティ改善及びアクセシビリティへの配慮をするとともに、PC版との親和性をより高めている。
2019年7月には自治体専用閉域ネットワーク「LGWAN」に対応し、官公庁でも「kintone」を活用し業務を効率化することが可能となった。また、教育現場での校務支援や、児童虐待防止のための地域連携でも「kintone」が活用され、様々な場面での活用が広がっている。
サイボウズOffice(サイボウズオフィス)
中小企業向けグループウェア「サイボウズOffice(サイボウズオフィス)」は、勤怠管理や経費申請などビジネスに必要な機能を集約したサービス。数人から300人程度の組織に最適なツール。クラウド版は1ユーザー月額500円から。最低5ユーザーから契約できる。
Garoon(ガルーン)
大企業・中堅企業向けグループウェア「Garoon(ガルーン)」は、詳細な権限設定、国際化、システム連携にも対応する総合ビジネスパッケージ。300名から数万人規模の組織に最適。クラウド版は1ユーザー月額800円から。最低10ユーザーから契約できる。
「Garoon」は、エンタープライズ向け製品としての認知が広まり、多くの案件を創出している。2019年にはパッケージ製品とクラウドサービスを合わせて累計導入社数5,400社を突破した。クラウドサービスの売上高が順調に増加しており、中堅・大規模組織でもクラウドサービスが主力になりつつある。
クラウドサービスの需要が増えつつある一方で、パッケージ版の利用ユーザー数も堅調に増加しているため、2019年10月にはパッケージ版最新バージョン「Garoon5」をリリースした。スケジュールやワークフロー、メッセージなどAPIを強化し、より柔軟にカスタマイズができるようにするなど、幅広いニーズに対応できるようになった。
Mailwise(メールワイズ)
メール共有システム「Mailwise(メールワイズ)」は、届いたメールを複数人で共有できるツール。顧客からの問い合わせなどへの対応漏れ、二重対応を防ぎ、メール対応効率を高めることができる。クラウド版は1ユーザー月額500円から。最低2ユーザーから契約できる。
デヂエ
専門知識がなくても、様々な部門の業務に合わせたツールを手軽に作成、自由にカスタマイズできるWebデータベース。
リモートサービス
社内LANのセキュリティ環境を変えずに社内LAN内にあるサイボウズ製品やその他のWebシステムへアクセスできるネットワーク環境を提供するサービス。
KUNAI(クナイ)
グループウェアで管理されている一日の予定・連絡事項や重要な決裁に、場所を問わずアクセスできるスマートフォン向け無料アプリケーション。
グローバル展開
米国子会社「Kintone Corporation」では、2019年12月末時点における契約中のサブドメイン数は360サブドメイン(前期比33.3%増)となった。2019年9月から米国向けに提供している「kintone」については、アマゾンウェブサービス(以下、AWS)上で構築した環境にて提供を開始した。米国内のAWSデータセンターからサービス提供することにより、現地顧客の製品セキュリティへのニーズを満たしつつ、より高いパフォーマンスを実現することが可能となった。
中華圏においては、2019年12月末時点の導入社数が1,030社に拡大した。東南アジア市場においては、「kintone」を中心とした製品・サービスの導入が進み、導入社数が590社(前期比39.5%増)に達している。東南アジアでは主に現地の日系企業とパートナー契約を結び、各地域に特化した販売・サポート体制を強化しております。各国におけるパートナーの活動としては、タイが依然として高い成果をあげているほか、2019年はインドネシアやシンガポール等でのビジネス拡大が顕著となった。今後は新たにインドやマレーシアなどへの販路拡大を予定している。
メソッド事業
サイボウズは社会の様々なチームのチームワーク向上のため、製品・サービスの普及だけでなく、チームワークに関するグループ・ノウハウを活かした取り組みとして2017年に「チームワーク総研」を設立した。サイボウズは、2019年12月末時点で講演152件、研修60件を実施した。
また、2019年11月には新たな取り組みとして、チームワークを題材にした絵本『こまったこまった。チームワークがなくなった。』を出版した。今後もサイボウズ流のチームワークや働き方改革のメソッドを、講演、企業研修、組織コンサルティングサービスとして提供していくことを計画している。
経営方針
サイボウズグループは、「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念のもと、情報共有の基盤となるソフトウェアを提供することを主な事業領域としている。また、あわせて組織やチームの制度や風土を生み出すためのメソッドをセミナーや研修等として提供している。
サイボウズ株式会社のクラウド基盤「cybozu.com」上で提供するクラウドサービスの売上が堅調に増加している中、将来の収益力を一層高めるため、引き続き、クラウドサービス成長のための投資やグローバル体制強化に努めて行く方針である。
対処すべき課題
サイボウズ株式会社は、対処すべき課題として5つを挙げている。
グローバル展開
2019年度までに重点的に注力してきた米国市場や中国、東南アジア、オーストラリア、台湾などに加え、世界各地にエコシステムを広げるため、グローバルに横展開できるモデルを作りながら、現地パートナーの開拓や拠点開拓を進める。
新規顧客の獲得およびカスタマーサクセスへの注力
「cybozu.com」の安定運用を継続して信頼度をさらに高めるとともに、未導入層・地方向けプロモーション強化に努め、新規顧客の開拓を推進していく。また、大企業への導入拡大に向けて基本機能や連携サービスを強化し、大企業の個別ニーズにも対応できるよう、製品やサービスの適合性をさらに高めていくとしている。さらに、2018年4月より提供を開始した特定非営利活動法人(NPO法人)及び特定の条件を満たす任意団体向けの「チーム応援ライセンス」の認知度向上に努め、法人以外の様々なチームへの導入拡大を目指す。加えて、今後は弊社サービスをご利用いただいているカスタマーの満足度向上に向け、様々なサポートをより強化していく方針である。
メソッド事業の拡大
働き方改革に対する社会的関心は引き続き高く、当社グループのビジョンや事業活動にも多くの共感が集まっている。2017年に設立したチームワーク総研で提供するセミナーや研修メニューを通じ、日本のさらなるチームワーク向上に貢献していくとしている。
組織・体制の強化
グローバル規模で事業拡大していくにあたり、国外拠点における事業ノウハウを既存の各本部に効率よく吸収し、社内外の連携を一層推進していくため、2020年1月より「組織戦略室」「事業戦略室」を新設している。
クラウドサービス事業者として信頼される内部統制体制の整備
クラウドサービス事業を推進するにあたり、情報セキュリティを含む内部統制体制への信頼性確保の重要性が高まっている。
そのような中で、サイボウズグループは、海外拠点を含め、「公明正大」の考え方のもと、統制の仕組み化(ルール化、見える化、効率化)をより一層強化し、引き続き株主、ユーザー、パートナー、その他ステークホルダーの皆様からの信頼を確保すべく、内部統制体制の整備に注力していく方針である。