暗号資産(仮想通貨)関連銘柄:多様化する事業戦略と各社のポジショニング

メタプラネット

暗号資産(仮想通貨)は、単なる投機対象から、企業の事業戦略を左右する重要な要素へと進化しています。
この潮流を受け、日本の上場企業もWeb3時代を見据えた多様な戦略を展開し始めました。

単に暗号資産交換所を運営するだけでなく、巨大なポイント経済圏と融合させて独自の生態系を目指す企業も現れています。
また、インターネットインフラという自社の強みを活かし総合力で市場に挑む企業や、企業資産そのものをビットコインに置き換えるという先進的なモデルを追求する企業も見られます。

本記事では、それぞれ異なるアプローチで暗号資産市場に挑む企業を分析し、その独自の戦略と今後の可能性を探ります。

ビットコインを企業の価値中核に据える「メタプラネット」

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1999年設立のメタプラネットは2024年、企業の主要な準備資産としてビットコインを積極的に購入・保有する「ビットコイントレジャリー企業」への事業転換を発表しました。
この「21ミリオン計画」は、希少なデジタル資産であるBTCを価値保存の手段と位置づけ、中長期的な企業価値の向上を図る戦略です。

同社の事業モデルの核心は、新株予約権の発行などを通じて機動的に資金調達を行い、それを原資にBTCを継続的に購入するサイクルにあります。
この戦略の成果を測る重要指標として「完全希薄化後1株当たりBTC保有量」を掲げ、企業価値との連動性を図っている点が特徴です。
さらに、単なる長期保有だけでなく、保有BTCを活用したデリバティブ取引で収益確保を目指す取り組みも見られます。

このユニークな戦略は、同社が日本におけるビットコイントレジャリーの先駆者となる可能性を示唆しています。
革新的な資金調達手法を用いて大規模なBTC取得を迅速に実行する機動力は、同社の事業運営における特徴の一つと言えるでしょう。
また、米国OTC市場での取引活性化や海外カンファレンスへの参加など、国際的な投資家層への情報発信も行っています。

同社の将来性はBTC価格の長期的な動向に大きく左右されると考えられます。企業価値が単一資産に連動するため価格の急落は経営上のリスクとなり得ます。
会計上の評価損益の変動や、継続的な資金調達に伴う株式の希薄化にいかに対応していくかが、持続的成長への課題となるでしょう。

>>メタプラネットについてもっと詳しくインディーズCDからホテル事業、暗号資産へ!変わり続ける謎企業「メタプラネット」

インフラからマイニングまで手掛ける「GMOインターネットグループ」

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1991年に設立されたGMOインターネットグループは、ドメインやクラウドサーバーといったインターネットインフラ事業を基盤に、広告、金融、暗号資産事業などを幅広く展開する総合インターネット企業です。
同グループの事業運営における特徴は、この多角的な構造から生まれるシナジーにあると考えられます。
長年培ってきたインフラ技術やセキュリティの知見が、金融や暗号資産といった新しい事業領域の信頼性と安定性を支えています。

同グループの暗号資産事業は、子会社のGMOコインが運営する「暗号資産交換事業」と、グループ本体が手掛ける「暗号資産マイニング事業」、そして「暗号資産決済事業」で構成されています。
自らマイニングセンターを運営し、暗号資産を生成する能力を持つ点は、単なる取引の場を提供する交換業者とは異なる点です。
ただし、市況に応じて事業ポートフォリオを柔軟に調整しており、マイニングセンターは現在稼働を停止しています。

このようにインフラ、セキュリティ、金融、そして暗号資産の生成と交換までをグループ内で一貫して手掛ける体制は、同社の事業上の特徴の一つです。
インターネット関連事業の幅広い領域で得た知見を相互に活用することで、新たな事業機会の創出につながる可能性があります。

一方で、事業領域が広範にわたるからこそ、各市場の環境変化や規制動向への迅速な対応が求められます。
特に暗号資産マイニング事業は、暗号資産の保有、取引、またはマイニングに関する法的・政治的なリスクにさらされており、法令や政策の変更がグループ全体の経営成績や事業展開に影響を与える可能性があります。

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Coincheckを核にグローバル展開を加速「マネックスグループ」

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2004年に設立されたマネックスグループは、オンライン証券事業を主軸にグローバル展開を進めてきた金融グループです。
近年、NTTドコモとの資本業務提携により国内証券事業を持分法適用へと移行させ、経営資源を暗号資産やグローバルなアセットマネジメントといった領域へ集中させる戦略的転換を図っています。

その暗号資産戦略の主要な役割を担うのが、子会社のコインチェックです。
同社はIEOの促進や取扱暗号資産数の拡大に努め、暗号資産交換サービスに加え、NFTマーケットプレイスなどWeb3領域へも事業を拡大しています。
2018年の不正送金事件を教訓に、顧客資産の大部分をオフラインで管理するコールドウォレットの導入など、包括的なセキュリティ体制の強化に努めている点も特徴です。

同社の事業上の特徴は、コインチェックの高いブランド認知度と、グループ全体で培ってきた金融サービスの運営ノウハウを融合させている点にあると考えられます。
そして、その国内基盤を足掛かりに、子会社のCoincheck Group N.V.がNASDAQへ上場するなど、グローバル市場での事業展開を目指す戦略を掲げています。

今後の事業展開は、このグローバル戦略の進捗に大きく影響されると見られます。NASDAQ上場による事業展開の加速が期待される一方、収益は暗号資産市場のボラティリティに左右されます。
市況変動やサイバー攻撃といった業界特有のリスクに加え、海外事業の資産評価など、国際化に伴う複雑な課題への対応が持続的な事業運営の鍵となるでしょう。

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ポイント経済圏とWeb3の融合を目指す「セレス」

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2005年に設立された株式会社セレスは、日本最大級のポイントサイト「モッピー」を運営するモバイルサービス事業を中核としています。
その一方で、フィナンシャルサービス事業を通じて暗号資産分野へも展開しており、既存事業とのシナジーを活かした事業構築を進めています。

同社の暗号資産分野への関与は、直接運営と出資の二本柱で構成されます。
子会社の株式会社マーキュリーが、交換所「CoinTrade」やステーキング、レンディングサービスを直接手掛けています。
それに加え、有力な暗号資産交換業者であるビットバンク株式会社の持分法適用関連会社として間接的に取引所事業に関わる、独自のハイブリッド戦略が特徴です。

セレスの事業運営における大きな特徴は、580万人を超える「モッピー」の会員基盤です。
このユーザーベースと暗号資産サービスとの連携は、同社が中期的な目標として掲げる「トークンエコノミー」構築の根幹をなしており、ポイントと暗号資産を組み合わせた独自の経済圏創出を目指しています。

将来的には、このポイント経済圏とWeb3の融合による、新たなユーザー体験の提供が期待されるでしょう。
しかし、同社の業績は、持分法適用関連会社であるビットバンクの業績や、自己勘定で保有する暗号資産の価格変動に大きく影響を受けます。
したがって、暗号資産市場全体の市況と、関連会社の事業リスクが今後の事業展開における重要な要素となります。

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