【顔認証 銘柄】単なるセキュリティから社会インフラへ

日立製作所

顔認証技術は、単なるセキュリティツールとしての役割を超え、その応用範囲を急速に拡大させています。
AI技術の進化や社会全体のDXを背景に、顔認証技術はオフィスの入退室管理、金融機関のオンライン本人確認(eKYC)、店舗の無人決済、さらにはスマートシティの実現に至るまで、その応用範囲を急速に広げています。
こうした技術は今や、私たちの生活やビジネスを支える重要な社会インフラとして位置づけられつつあります。

本記事では、この成長著しい市場において、独自の技術と戦略で事業を展開する関連企業5社について解説します。

物理セキュリティのDXを推進する気鋭のソリューションプロバイダー「セキュア」

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2002年設立のセキュアは、物理セキュリティシステムに特化した事業展開で急成長を遂げている企業です。
同社の強みは、入退室管理システム「SECURE AC」と監視カメラシステム「SECURE VS」を主軸に、ハードウェアとソフトウェア、AI技術を統合したワンストップソリューションを提供できる点にあります。
1,000種類以上のデバイスから最適な機器を選定し、顔認証や行動分析といったAI画像認識技術を組み合わせることで、顧客の多様なニーズに応える付加価値の高いセキュリティシステムを構築しています。

特に近年注力しているのが、AIを活用した店舗の無人化・省人化ソリューション「SECURE AI STORE LAB」です。
このソリューションは、店内のカメラ映像から来店客が手に取った商品をAIが自動で認識し、レジを通さずに決済が完了するウォークスルー型の無人店舗を可能にします。
単に利便性を高めるだけでなく、どの商品を手に取り、最終的に何を購入したかといった購買行動のデータ化も実現するため、店舗運営の最適化にも貢献します。

同社は、中小規模のオフィスや店舗から、大規模な商業施設や工場まで、幅広い顧客層に対応できる柔軟なシステム構築力を強みとしています。
今後は、これまでの導入実績で培ったノウハウを活かし、スマートシティや公共インフラといった、より大規模で高レベルなセキュリティが求められる領域への展開が期待されるでしょう。
事業運営上のリスクとしては、大手企業との競合激化や、最先端のAI技術を維持・発展させていくための継続的な投資の必要性が挙げられます。

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eKYC市場のトップランナーから総合認証プラットフォーマーへ「ELEMENTS」

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2013年設立のELEMENTSは、「ヒト」に関するビッグデータを活用し、個人認証と個人最適化のソリューションを提供するテクノロジーカンパニーです。
主力サービスであるオンライン本人確認サービス「LIQUID eKYC」は、国内eKYC市場において6年連続で市場シェアNo.1を獲得しており、金融機関の口座開設や携帯電話の契約、CtoCサービスでの本人確認など、幅広い業界で導入が進んでいます。

同社の強みは、高水準の顔認証精度とAIによる判定自動化を両立させ、安全かつスピーディーな本人確認を実現している点です。
実際に、導入企業では最短即日でのサービス利用開始を可能にするなど、大幅な時間短縮に貢献しています。
また、2022年から提供を開始したオンライン当人認証サービス「LIQUID Auth」との連携により、利便性とセキュリティを両立させつつ事業領域を拡大しています。
eKYCサービスで培った累計約1.3億件に及ぶ本人確認データは、同社の競争優位性を支える重要な基盤と考えられます。

将来的には、eKYC市場での高いシェアを基盤に、認証プラットフォーム事業のさらなる拡大を図っています。
例えば、事業者横断での不正利用検知サービスの提供や、個人の属性・行動履歴に基づくパーソナライズサービスの展開など、保有するビッグデータを活用した新たなビジネスモデルの創出を目指しています。

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世界No.1の精度を誇る顔認証技術で社会を支える「日本電気(NEC)」

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総合電機メーカーNECは生体認証のパイオニアです。
顔認証技術はNISTのテストで複数回世界No.1を獲得する最高水準の精度を誇ります。
この技術はUSJの入場ゲートで15年以上活用されるなど実績も豊富。
さらに、多人数を認証し混雑を緩和する「ゲートレス生体認証システム」を開発、鉄道改札などへの応用を進めています。

NECの強みは、この世界最高水準の認証精度にあります。
さらに、同社は顔認証技術を単体で提供するだけでなく、映像監視や入退管理システムといった他のセキュリティソリューションと組み合わせ、トータルで安全・安心な社会基盤を構築できる点も大きな特徴です。
今後は、デジタルガバメントやスマートシティといった大規模プロジェクトでの中核技術としての活用を推進しており、グローバル市場におけるプレゼンスの一層の向上を目指しています。

その一方で、GAFAMをはじめとする海外の巨大IT企業との技術開発競争は熾烈を極めており、トップランナーであり続けるためには継続的な研究開発投資が不可欠です。
加えて、世界各国で強化される個人情報保護規制への的確な対応も、今後の事業展開における重要な鍵を握ると考えられます。

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社会インフラとの融合で新たな価値を創出する「日立製作所」

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1910年創業の総合電機メーカー、日立製作所。
同社はITからエネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフと幅広い事業領域を持つ強みを活かし、顔認証技術を社会インフラに組み込むことで、新たな価値創造を推進しています。
特に、同社の顔認証技術は、利便性と高レベルのセキュリティを両立させるソリューションとして注目されており、本人認証や非対面運用を通じて社会の安全・安心に貢献しています。

同社の顔認証技術は、独自のエンジン「FaceViTAL」により、マスクやヘルメットを着用したままでも高精度な認証を実現しています。
この技術は、オフィスや工場での入退管理やPCログインといった、フィジカル・サイバー両面でのセキュリティ確保に貢献しています。
さらに、公共施設等での不審行動を検知する「AI映像解析ソリューション」にも活用されるなど、その応用範囲は広がり続けています。
こうした技術は、同社が強みを持つ社会インフラ事業の運用保守を高度化させる上でも重要な役割を担っています。
日立製作所の持つ膨大な顧客基盤と豊富な実績は、顔認証事業を展開する上での大きな強みとなっています。

今後の展望としては、同社が推進する社会イノベーション事業の中核として、顔認証を含む生体認証技術がスマートシティやMaaSといった次世代の社会システムに組み込まれていくことが期待されます。
しかしながら、技術革新のスピードが速いこの分野では、常に最先端の技術を取り込み続ける必要があります。
また、社会インフラを担う企業として、システム障害やサイバー攻撃に対する高いレベルでのリスク管理体制の構築が不可欠です。

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画像センシング技術”OKAO Vision”で機器の進化を支える「オムロン」

制御機器やヘルスケア製品で世界的な存在感を示すオムロンは、「センシング&コントロール+Think」をコア技術としています。
同社の電子部品事業では、画像センシング技術「OKAO Vision」をソフトウェアコンポーネントとして開発・提供しており、顔の検出・認証だけでなく、性別や年齢、表情の推定まで可能です。
この技術は、家電や産業機器、ロボットといった多種多様な製品に組み込まれています。

オムロンの顔認識関連事業は、様々な製品に知能を付加する「技術の黒子」としての役割を担っている点が特徴です。
完成品ではなく、中核となるソフトウェアや部品を提供することで、幅広い業界のメーカーを顧客とし、安定した事業基盤を構築しています。
特に、業界随一の幅広い制御機器を擁するFA分野では、「人を超える自働化」や「人と機械の高度協調」といったコンセプトのもと、生産性の最大化と安全確保を目指しており、顔認識ソフトウェアを含むセンシング技術がその貢献をさらに進めることが期待されます。

今後の事業展開においては、FA分野に加え、ヘルスケア分野でのさらなる応用が注目されます。
例えば、強みであるヘルスケア事業と電子部品事業の技術を融合させ、家庭用血圧計に顔認識機能を搭載し、個人の健康データを自動で記録・管理するようなサービスの創出が考えられるでしょう。
一方で、同社の事業は特定の業界の設備投資動向に影響を受けやすい側面もあります。
また、進化の速いAI技術の分野で優位性を保ち続けるためには、継続的な研究開発が不可欠です。

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