2008年「サブプライム・ショック」で何が起こったのか(前編)

2008年「サブプライム・ショック」で何が起こったのか(前編)

投資銀行の歴史シリーズの最後は、2008年に世界経済を揺るがせた「サブプライム・ショック」です。

中でも大きな衝撃を与えたのが、大手投資銀行の一角、リーマン・ブラザーズの破綻です。これをきっかけとして、まさにドミノ倒しのように金融危機が広がりました。

今回の3本では、10年以上が経過したサブプライム・ショックで、世の中に一体何が起こったのかについて整理したいと思います。

近年の出来事のよいところは、当時のニュース記事が今でもアクセス可能な状態で残っていることです。ニューヨーク・タイムズやウォールストリート・ジャーナルで取り上げられた記事を適宜参照しながら、チェックしていきます。

デビッド・リーのガウシアン・コピュラ

一つのきっかけは、2000年にJPモルガン・チェース系の調査会社にいたデビッド・リー氏が開発した「Gaussian Copula(ガウシアン・コピュラ)」と呼ばれる数式モデルにさかのぼります。

同僚に勧められてリー氏が研究成果を論文にまとめると、各方面から電話が殺到し、すぐに話題になったと言います。

数式の内容は、「老夫婦の1人が亡くなると、もう1人も亡くなる確率が高まる」といった統計学的な概念を数式化したもので、金融機関や格付け会社、規制当局までが採用。

やがて、アメリカの低所得者向け住宅ローン「サブプライム・ローン」にもこの数式が適用されることになります。デビッド・リー氏自身は、「住宅ローン債券にこの数式モデルを適用するのは適切ではない」と警告しましたが、聞き入れられませんでした。

発表して数年は「この数式が何であるか」を説明していたデビッド・リー氏は、その後は「この数式は何ではないか」を説明し続けることになったと言います。

住宅価格の上昇と、サブプライムローン残高の急増 

さらにさかのぼると、原因の萌芽は20世紀の後半からありました。

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連載シリーズ (全15回)

投資銀行の歴史