Web3.0時代のデジタル通貨銘柄:国内企業の戦略と将来性

セレス

ビットコインをはじめとするデジタル通貨は、今や単なる投機の対象に留まりません。
その基盤技術であるブロックチェーンは、決済システムやNFT(非代替性トークン)、さらには次世代のインターネットとされる「Web3.0」を支える中核として、社会実装のフェーズへと移行しつつあります。

このような技術革新と市場拡大を背景に、国内でも多様な企業が独自の戦略でこの分野に参入し、新たな価値創出を目指しています。
金融、ITインフラ、ポイント経済圏など、各社が持つ異なる強みを活かしたアプローチは、デジタル通貨市場の未来を占う上で重要な指針となるでしょう。

本記事では、独自のポジショニングを築く国内企業をピックアップし、それぞれのデジタル通貨事業における戦略と将来性を分析します。

Web3.0時代の総合金融を志向する「SBIホールディングス」

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SBIホールディングスは、証券や銀行、保険といった伝統的な金融サービスに加え、Web3を中核に据えたデジタルアセット関連事業を積極的に推進しています。
幅広い金融エコシステムを構築しており、その総合力がデジタル通貨分野での大きな強みとなっています。

具体的な事業としては、子会社のSBI VCトレードが暗号資産の現物取引からステーキング、NFTマーケットプレイスまで多岐にわたるサービスを展開しています。
加えて、英国の大手暗号資産マーケットメイカーB2C2社を買収し、機関投資家向けの流動性供給能力を強化している点も特徴です。

同社は、このような広範なエコシステム形成を通じ、既存の金融サービスとデジタルアセットを融合させた、新たなサービスの創出を目指しています。
ただし、デジタル通貨を取り巻く国内外の法規制は常に変化しており、規制動向が事業展開のスピードを左右するリスク要因となり得るでしょう。
市場全体の価格変動も注視すべき点です。

>>SBIホールディングスについてもっと詳しく銀行事業に本腰を入れたSBIグループ「ゼロ革命」でグループ全体の顧客増が加速

総合力で市場を切り拓く「GMOインターネットグループ」

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GMOインターネットグループは、1995年の創業以来、インターネットインフラ事業を核に成長を遂げてきました。
近年ではその技術力と顧客基盤を活かし、暗号資産事業にも注力しています。具体的には、暗号資産の「交換」「決済」「マイニング」の3領域でサービスを展開しており、特に暗号資産交換事業ではインターネット金融事業で培った技術力とノウハウを活用し国内No.1を目指しています。

中核サービスとしては、子会社のGMOコインが提供する暗号資産交換事業が挙げられます。
同社では現物取引に加え、レバレッジ取引も提供しており、顧客口座数は拡大を続けています。
さらに、決済分野では、日本円に連動するステーブルコイン『GYEN』の発行を手掛けるなど、デジタル通貨の実用化に向けた革新的な取り組みも進めています。

今後の展望として、同社は決済分野でのステーブルコイン活用と、グループ全体のサービスとの連携による新たな価値創出を目指しています。
しかし、暗号資産事業は市場の価格変動の影響を大きく受けるため、事業環境の変化がリスク要因となり得ます。
また、マイニング事業は現在、マイニングセンターの稼働が停止している点も事業上の留意点です。

>>GMOインターネットグループの企業情報を見る

グローバル展開を加速する「マネックスグループ」

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オンライン証券事業を主力とするマネックスグループは、クリプトアセット事業を重要な成長戦略の柱に据えています。
その中核を担うのは、暗号資産交換業を営む子会社「Coincheck」です。
同社は、国内トップクラスのブランド認知度を活かし、盤石な事業基盤の構築とさらなる顧客層の拡大を目指しています。

Coincheckの事業は、多様な暗号資産の取引サービス提供に留まりません。
新たなプロジェクトの資金調達を支援するIEO(Initial Exchange Offering)や、デジタルアートなどの所有権を記録するNFTのマーケットプレイスを運営するなど、Web3.0時代を見据えた先進的な取り組みが特徴です。

2024年12月には、その親会社であるCoincheck Group N.V.がNasdaq市場への上場を果たしました。
同社はこれにより、グローバルな資金調達力とブランド価値の向上を図り、今後の事業展開を加速させる方針です。
一方で、暗号資産市場は価格変動が激しく、過去の不正送金事案を踏まえた強固なセキュリティ体制の維持も、持続的成長にとって重要な要素となります。

>>マネックスグループについてもっと詳しくコインチェックがNASDAQ上場企業へ そのスキームと上場後の方策をひもとく

ポイント経済圏と暗号資産の連携を深化させる「セレス」

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ポイントサイト「モッピー」の運営を主軸とするセレスは、モバイルサービス事業で培ったノウハウを活かし、フィナンシャルサービス事業領域へと事業を拡大しています。
特に、国内有数の暗号資産交換業者「ビットバンク」を持分法適用関連会社に持つことで、暗号資産市場におけるプレゼンスを高めています。

同社のデジタル通貨関連事業は、子会社のマーキュリーを通じて展開されています。
暗号資産を保有することで収益を得るステーキングサービス「CoinTradeStake」や、暗号資産を貸し出して収益を得るレンディングサービスを提供し、投資家へ取引以外の選択肢を提示している点が特徴です。

両社の連携は、モッピーのポイントをビットコインに交換できるサービスなどに具体化されており、ポイント経済圏と暗号資産事業のシナジー創出が進められています。
一方で、自己で暗号資産を保有するため、その価格変動が事業の収益性に直接影響を及ぼす点はリスク要因と言えるでしょう。

>>セレスについてもっと詳しく仮想通貨関連!ブロックチェーン領域への投資とともに注目が高まる「セレス」とはどんな会社なのか

ブロックチェーン技術への投資で未来を拓く「アステリア」

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1998年創業のアステリアは、データ連携ツール「ASTERIA Warp」などを提供するソフトウェア事業を主力としています。
同社は「D4G(Data, Device, Decentralized, Design)」を事業の柱に掲げ、特に「Decentralized(分散)」領域、すなわちブロックチェーン技術の活用と関連企業への投資に注力しています。

同社のブロックチェーン分野へのアプローチは、直接的な取引所の運営ではなく、非暗号資産分野での展開を図っている点が特徴です。
データ連携基盤や株主総会での議決権行使といったソリューションなど、基盤技術の提供と活用に注力しています。
実際に、投資先の一つであるGorilla Technology Group社は、NASDAQ市場への上場も果たしました。

今後、ブロックチェーン技術の社会実装が進むことは、同社の技術や投資先企業の価値向上につながる可能性があります。
しかし、投資事業の性質上、投資先の企業価値の変動が経営成績に直接影響を及ぼすことも考えられます。
技術革新による成長機会と、投資事業に伴う市場の変動リスクの両面をどう管理していくかが、同社の経営における重要な要素となります。

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