リチウムイオンの次へ。次世代技術を扱う蓄電池関連銘柄

日本碍子

カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入とモビリティの電動化が世界の大きな潮流となっています。

この二つの変革に不可欠なのが、エネルギーを効率的に「貯め、使う」ためのキーデバイスである「蓄電池」です。今や蓄電池は、社会を支える重要なインフラとしての役割を担い始めています。

本記事では、蓄電池市場の個性豊かな蓄電池関連プレイヤーに焦点を当て、各社の戦略と独自技術を紹介していきます。

次世代電池"4680セル"の量産を進める「パナソニック」

パナソニック ホールディングスは、グループの中核事業の一つである「エナジー」事業において、車載用電池を重点投資領域と定め、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する技術開発を加速させています。

同社は、30年にわたる円筒形リチウムイオン電池の生産で培った技術とノウハウを武器に、次世代電池の量産化で業界をリードする構えです。

その戦略の核となるのが、次世代の車載用円筒形電池「4680セル」。従来品に比べ約5倍の大容量化を実現したこの電池は、電気自動車(EV)の航続距離伸長や車両コスト低減への貢献が可能な技術として位置付けられています。

パナソニックは、この4680セルの量産技術確立を進めており、国内外への展開を目指しています。

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同社の蓄電池事業は、EV向けに留まりません。近年需要が急拡大しているデータセンター向けの蓄電システムや、公共・産業用の大規模システム、持ち運び可能なポータブルバッテリーまで、幅広いラインナップが展開されています。

また、純水素型燃料電池や太陽電池と蓄電池を連携させた統合的なエネルギーマネジメントシステムの構築も進めており、総合エネルギーソリューションプロバイダーへの進化が志向されています。

パナソニックは「Panasonic GREEN IMPACT」という長期環境ビジョンのもと、独自の電池技術でモビリティと社会インフラの電化・脱炭素化を力強く推進しています。

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独自技術"FORTELION"と再エネソリューション「村田製作所」

電子部品メーカーとして知られる村田製作所は、バッテリー事業を次なる成長の柱と位置づけ、大きな事業変革を推進。

ソニーから買収したリチウムイオン電池事業の技術力と、自社が培ってきた電源技術を融合させ、IoT社会や脱炭素化という大きな潮流に応える、新たな価値創造を目指しています。

同社の電池事業は従来のスマートフォン向けから、より高い成長が見込まれるパワーツールやESS(エネルギー貯蔵システム)市場へと軸足を移行。マイクロ一次電池事業をマクセル株式会社へ譲渡する一方、円筒形リチウムイオン二次電池事業に経営資源が重点的に配分されています。

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この戦略を技術面で支えるのが、独自のオリビン型リン酸鉄リチウムイオン二次電池「FORTELION」。高い安全性、15年以上の期待寿命、優れた入出力特性を誇り、コバルトフリーで環境に配慮している点も特徴です。

この技術は、特に長期信頼性が求められる産業機器やESS市場において、同社の競争優位性の一つとなっています。

さらに村田製作所は、単に電池を供給するだけでなく、その活用を最適化するソリューション事業にも乗り出しています。

自社工場での運用実績を基に開発された統合型再エネ制御ソリューション「efinnos」は、AIが太陽光発電と蓄電池を最適制御し、企業の再エネ自給率向上とコスト削減に貢献します。

事業ポートフォリオを再編し、独自技術を核とした高付加価値領域へと注力する村田製作所は、電子部品で培ったものづくりの力と技術的資産を融合させ、バッテリー事業で新たな成長フェーズを目指します。

>> 改めて知りたい「村田製作所」

半固体リチウムイオン蓄電池で高い安全性を実現「京セラ」

京セラは、エネルギーソリューション事業において、従来の製品販売(モノ売り)から、電力販売ビジネスなどのサービス(コト)を組み合わせた「モノ×コト売り」への事業変革を加速させています。

その戦略の中核を担うのが、独自開発した半固体(クレイ型)リチウムイオン蓄電池「Enerezza®」。独自の構造により、発火などのリスクが低く、高い安全性を実現しています。

さらに、業界最長クラスの15年という長期保証が可能な長寿命性も兼ね備え、信頼性の高い国内工場で生産されています。

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京セラは、この「Enerezza®」を武器に、新たなビジネスモデルの構築に挑みます。それが、太陽光などで発電された電力を、蓄電池を活用して効率的に需給調整し、環境意識の高い企業などへ販売する「再生可能エネルギー電力販売ビジネス」です。

将来的には、スマートエナジー事業の売上のうち、太陽電池の割合を下げて、蓄電池および電力販売ビジネスが占める割合を高めていく方針です。

京セラは、独自の蓄電池技術と、エネルギーをサービスとして提供する新たなビジネスモデルを両輪に、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

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家庭用蓄電池システムで国内シェアNo.1「ニチコン」

ニチコンは、コンデンサなどの電子部品で培った高度な電源技術を応用し、エネルギー・環境分野で存在感を高めています。特に、家庭用蓄電システムにおいては国内シェアNo.1を誇り、同社の成長を牽引するNECST事業の中核を担います。

その競争力の源泉となっているのが、独自の「トライブリッド蓄電システム®」。

これは、「太陽光発電」「蓄電池」「EV(電気自動車)」という家庭における3つのエネルギーを統合的に制御し、電気を最も効率的に使えるようにする革新的なシステムです。単に電気を貯めるだけでなく、「電気を賢く使う」という新たな価値の提供を可能にしています。

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トライブリッド蓄電システム®「ESS-T5/T6シリーズ」は、業界最大級のパワフルな出力で利用可能です。また太陽光で発電した電気から、家庭の蓄電池とEVへの同時充電も実現しています。

さらに、災害などによる停電時には、家全体の家電をバックアップできる「全負荷」かつ「200V」対応であり、エアコンやIH機器にも対応。在宅避難を可能にするなど、災害時のレジリエンスの高さも大きな特徴です。

こうした技術力と製品力により、ニチコンの家庭用蓄電システムは累計販売台数で20万台を突破し、市場のリーダーとしての地位を確固たるものにしています。

コンデンサ事業で培ったものづくりのDNAと、エネルギーの未来を見据えたソリューション開発力。この両輪で、ニチコンはカーボンニュートラル社会の実現に貢献しています。

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大容量・長寿命の"NAS電池"の量産化を進める「日本ガイシ」

日本ガイシは、祖業であるセラミックスの高度な技術を核として、カーボンニュートラル社会の実現に不可欠なエネルギー分野で独自のポジションを築いています。

同社が注力するのが、再生可能エネルギーの安定供給に欠かせない、大容量の「長時間蓄電(LDES)」です。

その中核技術が、世界で初めて量産化に成功した「NAS®電池」。リチウムイオン電池とは異なり、大容量・長寿命で、長時間の充放電を得意とするNAS電池は、天候によって出力が変動する再生可能エネルギー電力の安定化に最適な特性を有します。

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日本ガイシは、このNAS電池という「モノ」の提供に留まらず、IoT技術でエネルギーリソースを統合制御するVPP(仮想発電所)サービスといった「コト」の提供も視野に入れ、付加価値の向上が目指されています。

また、安全性が高く小型化が容易な「亜鉛二次電池」の開発も手掛けるなど、多様なニーズに応える技術ポートフォリオの構築も進めています。

同社は長時間蓄電市場の将来性に着目しており、市場の変化に対応すべく、他社との連携による供給体制の強化やコスト低減に取り組んでいます。

独自の技術を活かし、カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みを進めています。

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鉛蓄電池とリチウムイオンの両輪「ジーエス・ユアサ」

ジーエス・ユアサ コーポレーションは、長年にわたり蓄電池事業を手掛けてきた専門メーカーです。

同社は今、培ってきた技術と信頼を基盤に、単なるバッテリー供給者から、エネルギー社会が抱える多様なニーズに応えるソリューションの提供へと、事業の変革を進めています。

その事業ポートフォリオは、自動車の電動化が進む「モビリティ分野」と、再生可能エネルギーの導入に不可欠な「社会インフラ分野」という2つの市場で事業を展開しています。

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同社は、伝統的な鉛蓄電池とリチウムイオン電池の両方を手掛けています。

また、同社は再生可能エネルギーの普及を支えるESS(エネルギー貯蔵システム)市場での事業にも注力。カーボンニュートラルの実現への貢献を目指しています。

ジーエス・ユアサは、歴史あるバッテリーメーカーとして培った技術と経験を基盤に、未来のエネルギー社会における新たな役割を模索し続けています。

>> ジーエス・ユアサ コーポレーションの企業情報

3種の電池で宇宙用途まで手掛ける「古河電池」

古河電池は、自動車用から産業用、さらには宇宙用まで、幅広い分野に蓄電池を供給してきた専門メーカーです。

同社の事業の大きな特徴は、「鉛蓄電池」「アルカリ蓄電池」「リチウムイオン電池」という3種類の蓄電池をすべて手掛ける総合力にあります。これにより、顧客の多様なニーズに最適なソリューションの提供が可能です。

同社のリチウムイオン電池は、小惑星探査機「はやぶさ2」や小型月着陸実証機「SLIM」に搭載されるなど、数々の国家プロジェクトを支えてきました。この実績は、同社製品の高い信頼性を象徴するものです。

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近年では、この技術力を成長市場へと展開。マクセル株式会社からリチウムイオン電池事業を承継し、ドローンやロボットといった新しい市場の開拓を推進しています。

一方で、安全性やリサイクル性に優れる鉛蓄電池の価値も見直し、太陽光発電と組み合わせたESS(エネルギー貯蔵システム)として、企業のBCP対策やCO₂削減に貢献するソリューションビジネスが立ち上げられています。

古河電池は、歴史に裏打ちされた信頼性と、未来を見据えた技術開発を両輪に、エネルギー社会の変革に挑み続けています。

>> 古河電池の企業情報