未来の学びを創る学習塾銘柄:AI・EdTech導入で進化する業界

明光ネットワークジャパン

学習塾業界は現在、少子化という構造的な課題に直面しつつも、教育制度改革とテクノロジーの進化を背景に大きな変革期を迎えています。
大学入試における多様な選抜方式の導入や、GIGAスクール構想に代表されるデジタル化の加速は、学習のあり方を根本から変えつつあるでしょう。

このような環境下で、各学習塾銘柄は独自の戦略を打ち出し、競争優位性の確立に努めています。
AIを活用した個別最適化された学習コンテンツの提供や、オンライン指導体制の強化、EdTechの積極的な導入は、もはや業界の標準となりつつあります。また、M&Aや提携を通じて事業領域を拡大し、幼児教育から大学受験、さらには社会人の生涯学習までを視野に入れた「囲い込み戦略」を展開する企業も増えているようです。

本記事では、このような業界動向を踏まえ、学習塾関連の国内企業について解説していきます。

次世代教育への適応と市場拡大を狙う「ナガセ」

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株式会社ナガセは、東進ハイスクールや四谷大塚といった学習塾事業を主軸とし、スポーツ、ビジネススクール、出版などの多角的な教育サービスを展開しています。
1976年の創業以来、高校生から小・中学生、さらには成人まで幅広い層を対象に「心・知・体」を総合的に育む教育理念を掲げ、事業を拡大してきました。

学習塾市場では少子化が進行していますが、ナガセはデジタル化の進展や教育制度改革を成長機会と捉えています。
AIを活用した個別最適化された学習コンテンツやIT・DX研修など、時代のニーズに応じた多様なプログラムを提供し、競争優位性を確立しています。
また、M&A戦略によってイトマンスポーツウェルネスなどをグループに加えることで、スポーツ事業の強化と顧客層の拡大も図り、民間最大の教育機関としての地位の確立を目指しています。

同社は、継続的な技術革新とM&Aによる事業ポートフォリオの最適化を通じて、市場シェアの拡大と技術的リーダーシップの維持を目指すでしょう。
しかし、経済情勢の変動による消費活動への影響や、競合他社の新規参入による企業間競争の激化は、事業運営上のリスクになり得ます。
このような状況下でも、ナガセは「人間力(志)」の育成と「技術革新(AI)」を軸に、質の高い教育サービスを提供し続けることで、持続的な成長を実現する考えです。

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革新的な学習システムと多角化で成長を追求する「早稲田アカデミー」

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株式会社早稲田アカデミーは、中学・高校・大学受験指導を主軸とした学習塾事業を展開しています。
グループ会社として、小中学生向け学習塾の「水戸アカデミー」や「株式会社集学舎」、個別指導の「個別進学館」があります。
さらに、海外展開として「WASEDA ACADEMY UK CO.,LTD.」や「WASEDA ACADEMY USA CO.,LTD.」など、多様な教育サービスを提供しています。

同社は、高い目標を掲げ、成績向上と志望校合格にコミットする進学塾として、その競争優位性を構築していると考えられます。
特に、御三家中学合格者数の過去最高更新や、高校入試・大学入試における難関校への合格実績を大きく伸長させています。
また、DX推進の一環として、「早稲田アカデミーOnline」の機能拡充が進められています。
さらに、基幹システム「WICS」に蓄積されたビッグデータに基づき成績管理システムも拡充され、これらの先進技術導入によりサービス品質の向上と生徒の退塾防止が図られています。

今後の見通しとして、同社は引き続き高品質な学習指導とDX推進による新たな教育サービスの創出に注力し、「Life Time Value」の最大化を目指していくでしょう。
一方で、物価上昇による原材料費の高騰や、ベースアップに伴う労務費の増加、50周年記念事業関連費用、そして新規開校や既存校のリニューアルに伴う設備投資、システム投資などがリスク要因として挙げられます。

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学習塾業界の進化を牽引する「リソー教育」

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株式会社リソー教育は、1985年に設立された総合教育サービス企業です。完全1対1の進学個別指導塾「TOMAS(トーマス)」を主軸に、家庭教師派遣の「名門会」、幼児教育の「伸芽会」など多岐にわたる教育サービスを提供しています。
同社は、1歳からの幼児教育から大学受験までを対象とした「囲い込み戦略」を展開し、生徒の成長段階に応じた一貫した教育を提供しています。

少子化が進む市場環境において、同社は生徒数の堅調な推移を維持しているようです。
TOMASは進学実績にこだわり、伸芽会は名門幼稚園・名門小学校受験でトップクラスの合格実績を誇っており、高品質な指導と徹底した差別化戦略により競争優位性を確立しています。
ヒューリック株式会社やコナミスポーツ株式会社との連携による教育特化型ビル「こどもでばーと」の開発や、多様なニーズに応える「囲い込み戦略」も強みです。

リソー教育は、ICT化推進などの教育制度改革に対応するため、ソフトウェアへの投資を進めています。
高品質な「本物」の教育サービス提供を掲げ、顧客の成長に合わせたサービス提供でグループ内定着を図り、持続的成長と企業価値向上を目指しています。しかし、物価変動や原材料費高騰などの国内景気変動、労務コストの高さは収益拡大の課題です。
さらに、新規開校・リニューアルにおける物件・人材確保・育成も事業リスク要因となり得ます。

>>リソー教育の企業情報を見る

個別指導とAI教育・成績保証で成長を牽引する「スプリックス」

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株式会社スプリックスは、個別指導の「森塾」、集団指導の「湘南ゼミナール」、大学受験指導の「河合塾マナビス」を主力としています。
さらに、「自立学習RED」などのサービスや、AIを活用した学習プログラムといった新規事業も展開しています。
森塾では成績保証制度を導入しており、これは生徒の学習成果にコミットする同社の強い自信と競争優位性を示すものです。

学習塾市場では少子化が進む中、同社は特に個別指導塾森塾の教室数を拡大し、生徒数を堅調に伸ばしています。
また、湘南ゼミナールでは小学生コンテンツの拡充とマーケティング強化を図っているようです。
同社は、教育におけるIT化の必要性の高まりに対応し、IT技術を積極的に導入することで、高品質かつ高付加価値な教育コンテンツの低コストでの提供を目指し研究開発に取り組んでいます。

同社はAI・IT技術を駆使した新サービス開発に力を入れています。
具体的には、AIタブレットを活用した「SPRIX LEARNING」や「DOJO」、そしてサイバーエージェントグループと協業した「キュレオプログラミング教室」などがあります。
これらの技術革新は、「自立学習RED」のように生徒個々の進度に応じた学習プログラム提供を目指します。
教育IT化が進む中、今後の学習塾市場に影響を与える可能性があります。
しかし、少子化や競争激化、新規事業投資の収益化に時間を要する点、想定通りに進まない場合は業績に影響するリスクがあります。

>>スプリックスについてもっと詳しく学習塾向けのITシステムまで提供!新潟発の個別指導塾「森塾」を展開する「スプリックス」が新規上場

教育DXと多角化で成長を追求する「京進」

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株式会社京進は、1975年に創業された総合教育サービス企業です。同社は、学習塾、語学関連、保育・介護の三つの主要事業を柱とし、教育分野では「京進スクール・ワン」などの学習塾を展開しています。
特に、独自の目標達成のための習慣化ツール「リーチング」を導入し、自ら計画を立てて実行する力など見えない学力”を育むことで学力向上を目指しています。
また、学習塾事業だけでなく、人の一生を支援する幅広い事業を展開しているのが特徴です。ドイツ、米国、オーストラリアなどを拠点に海外でも事業を広げています。

学習塾業界では少子化が進む中、同社は多様な教育ニーズに対応するため、EdTechやICT教育を積極的に導入しています。
これにより、グループ全体で「ステキな大人が増える未来をつくる」というビジョンの実現を目指し、収益性の向上を図っています。
同社は、質の高い指導を提供することで競争力を高めることを目指しています。

京進は、保育事業における園児数の確保や、介護事業での入居率・サービス利用率の向上にも取り組んでいます。
しかし、人材確保と定着率向上のための人件費増加や、オーストラリア政府による学生ビザ要件厳格化の影響といったリスクも抱えています。
これらの課題に対し、同社は効率的な費用削減や多角的な事業展開によって、持続的な成長と企業価値向上に努めていくでしょう。

>>京進についてもっと詳しく恐るべし”アメーバ経営”!6年で売上約2倍の「京進」

個別指導のパイオニアが教育プラットフォームを目指す「明光ネットワークジャパン」

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株式会社明光ネットワークジャパンは、個別指導塾「明光義塾」を主軸に、日本語学校やキャリア支援、児童発達支援・放課後等デイサービス事業など、多角的な教育・人材支援サービスを提供する企業です。
1984年の創業以来、個別指導のパイオニアとして全国に教室を展開し、個別指導塾業界で確固たる地位を築いてきました。

少子化が進む学習塾市場で、明光ネットワークジャパンは多様な教育ニーズに対応しています。
ICTを活用した個別学習塾「自立学習RED」やオールイングリッシュ学童保育「明光キッズe」など、新たな学習サービスを展開しています。
オンライン個別指導体制を強化し、ICTを活用した個別最適なサービス開発を通じて、質の向上を図ります。
FC展開で全国の生徒数確保と個別指導塾業界での優位性維持を目指しています。

同社は学習塾事業で培ったノウハウを活かし、日本語学校事業やキャリアパートナーズ事業、教育機関向け人材サービスなどを展開しています。
これにより、幼児からシニアまであらゆる人々の可能性をひらく「総合的な人材支援グループ」への進化を目指しています。
しかし、FC教室の生徒数減少や日本語学校事業の生徒数減少、さらに海外政府による学生ビザ要件の厳格化は、今後の事業展開におけるリスク要因となり得ます。
同社はこれらの課題に対し、事業構造改革や教育DXの推進、そして新たな成長領域への投資を通じて、持続的な成長を追求していく考えです。

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EdTechとM&Aで成長を加速させる「ウィザス」

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株式会社ウィザスは、1976年に設立された総合教育サービス企業です。
幼児から高校生向けの学習塾事業(例: 「第一ゼミナール」)と、通信制高校「第一学院高等学校」を運営する高校・大学事業が主要な柱です。
これに加え、グローバル事業、能力開発・キャリア支援事業、ヘルスケア事業など、多岐にわたる教育サービスを展開しています。

学習塾業界では少子化が進んでいますが、ウィザスは独自の教育メソッド「プラスサイクル学習法」に基づいた意欲喚起指導と個別最適化された学習システム「PLS」を提供することで、競争力を高めています。
さらに、M&Aや提携を積極的に活用し、東大生起業家による教育出版・講演事業やオンライン個別指導事業をグループに取り込むなど、事業領域の拡大と相乗効果の追求に努めています。

同社は、GIGAスクール構想や生成AIの普及といったデジタル化の波を捉え、EdTechを積極的に導入し「学びの多様化」に対応しています。
特に、通信制高校「第一学院高等学校」ではICT教育や成長実感型教育を推進し、新たなブランド「第一学院managara BASE」を全国展開することで、多様化する生徒のニーズに応える計画です。
しかし、教員増強に伴う人件費やスクーリング費用の増加、固定資産の減損損失計上など、事業運営上の費用増加や課題に直面している側面もあります。

>>ウィザスの企業情報を見る

地域密着と個別最適化で高シェアを誇る「ステップ」

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株式会社ステップは、1975年の創業以来、神奈川県を中心に小中学生、高校生、幼児を対象とした学習塾事業を展開しています。
同社は、神奈川県内にスクールを集中して展開する戦略を重視しており、集団指導の「高校受験ステップ」や難関校受験を目指す「Hi-STEP」、そして個別指導部門といった多様な学習形態を提供しています。

同社は、神奈川県の学力向上進学重点校や国立高校への高い合格実績を強みとしています。
特に、横浜翠嵐高校や多摩高校といった公立進学校の合格者数で高いシェアを誇り 、これは地域に密着した質の高い指導の成果といえるでしょう。
少子化が進む学習塾市場において、同社は多様なニーズに対応できる指導形態と、地域での確固たるブランド力で競争優位性を維持しています。

今後の展望として、ステップは神奈川県内の主要都市である川崎市や横浜市東部・南部地区でのネットワーク強化を重点課題としています。
質の高い教務力の強化、特に教師育成への継続的な注力は、生徒数増加と地域シェア拡大に寄与すると考えられます。
一方、プロジェクターなどの授業用機器の導入やIT環境の整備といった学習環境の充実への投資は継続しており、また感染症の流行時にはZoomを活用したオンライン授業に切り替えるなど、事業運営における技術への適応は重要な側面となります。

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