空き家・高齢化に挑む不動産テック関連銘柄:社会課題解決を成長機会に

LIFULL

情報の非対称性や複雑な商慣習など、長らくアナログな体質が指摘されてきた不動産業界。

今、AIやビッグデータといったテクノロジーの力でその構造を変革しようとする「不動産テック」の動きが加速しています。取引の透明性を高め、業務プロセスを効率化する新たなサービスが次々と生まれています。

本記事では、不動産テック企業に焦点を当て、各社が持つ独自の戦略と競争優位性を紹介していきます。

AIとビッグデータで不動産市場に透明性を「LIFULL」

LIFULLは、不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME'S」を中核としながらも、その事業領域は介護、地方創生、金融など、人々の暮らし全般に及びます。

同社の不動産テック事業の強みは、AIとビッグデータの活用にあります。

独自のAI技術を用いてマンションの参考価格や市場ニーズを可視化するサービスは、情報の非対称性が大きい不動産市場において、ユーザーの不安を解消し、透明性の高い取引の実現に貢献しています。

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また、LIFULLの事業展開は、ビジネスと社会貢献を両立させるアプローチも特徴です。

高齢者や外国籍の人々など、住まい探しに困難を抱える「住宅弱者」を支援する「FRIENDLY DOOR」や、深刻化する空き家問題に再生という形で取り組む「LIFULL 地方創生」は、その代表例と言えるでしょう。

近年、同社は事業ポートフォリオの最適化を推進。その一環として、海外事業を非継続事業に分類するなど、戦略的な見直しを進めています。また、他社との協業を通じて業界全体のDXを推進するなど、オープンな姿勢も特徴の一つです。

単なる不動産情報の提供に留まらず、空き家、住宅弱者、介護といった、より複雑な社会課題にテクノロジーで挑むLIFULL。その多角的な事業展開は、不動産テックの枠を超えた、新たな価値創造を目指す挑戦と言えます。

>> LIFULLの企業情報

"リアル×テクノロジー"の循環で不動産業務をスマート化「SREホールディングス」

SREホールディングスは、自ら不動産事業という「リアルビジネス」を手掛けることで得た知見を、AIなどの先端技術と融合させる独自のビジネスモデルで成長する「ライフテックカンパニー」です。

現場の課題解決から生まれた実用性の高いソリューションは、不動産業界に留まらず、金融やヘルスケアといった領域にも展開されます。

同社の最大の強みは、「リアル×テクノロジー」の好循環を確立している点にあります。まず、自社の不動産事業で業務のスマート化を推進し、この過程で開発・実装されたテクノロジーやツールを、クラウドサービスとして外部の企業へ提供。

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これにより、質の高いビッグデータがさらに蓄積され、AIの精度向上や新たなソリューション開発に繋がるという、他社にはないエコシステムが構築されています。

その技術力は、高精度な不動産価格を算出する「SRE AI査定 CLOUD」や、契約書作成時間を大幅に削減する「SRE 契約重説 CLOUD」といった具体的なプロダクトに結実。

近年では、不動産領域で培った生成AIチャットボットの技術をヘルスケア領域に横展開するなど、開発した技術モジュールを効率的に他分野へ応用する能力の高さも示しています。

経済産業省と東証から「DXグランプリ」を受賞するなど、一定の外部評価を得ている同社は、現場起点のテクノロジー開発という確固たる軸足を武器に、不動産テック市場の枠を超えた事業展開を目指しています。

>> SREホールディングスの企業情報

RENOSYとITANDIの2つの柱をもつ「GAテクノロジーズ」

GAテクノロジーズは、テクノロジーの力でアナログな慣習が根強く残る不動産業界の構造変革に挑む不動産テック企業です。

個人向けのAI不動産投資サービス「RENOSY」と、法人向けの賃貸業務支援SaaS「ITANDI」を両輪に、独自のビジネスエコシステムを構築しています。

同社の最大の強みは、事業を通じて蓄積される独自性の高い「データ」とその活用戦略にあります。

投資用不動産販売で全国No.1の実績を持つ「RENOSY」と、国内賃貸申込の約4割を扱う「ITANDI」から得られる質の高い成約データは、他社にはない貴重な資産と言えるでしょう。

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データ活用を推進する体制のもと、さらに専門人材がそのデータを分析・活用することで、サービスの精度が継続的に高められています。

このデータ基盤は、具体的なサービスに結実。「RENOSY」では、AIが顧客との面談内容を要約したり、精度の高い不動産価格を査定したりと、業務の効率化と顧客体験の向上を実現しています。一方、「ITANDI」は、物件確認から入居申込、契約まで、一連の賃貸業務をオンラインで完結させるワンストップソリューションを提供します。

単にサービスを提供するだけでなく、不動産取引のインフラそのものを構築しようとする同社。そのデータ戦略と事業展開は、不動産テック市場において独自の競争優位性を確立しています。

>> 2020年大きく伸びた不動産ベンチャー「GAテクノロジーズ」の事業モデルを考える

"コンパクトCRE"というニッチ市場を開拓する「ククレブ・アドバイザーズ」

ククレブ・アドバイザーズは、企業が保有する不動産(CRE)に関するソリューション提供に特化した不動産テック企業です。

同社は、大手が進出しにくい「コンパクトCRE」と呼ばれるニッチな市場に照準を合わせ、独自のテクノロジーと専門知識を融合させたサービスで、日本の産業への貢献を目指しています。

同社の競争優位性の源泉は、自社開発した一連の不動産テックシステム群にあります。中でも、特許技術である「CCReB AI」は、企業のIR資料などの公開情報をAIが自動で分析し、潜在的な不動産ニーズをスコアリングするというユニークな機能が特徴。これにより、営業活動の効率を飛躍的に高めることを可能にします。

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また、事業用不動産に特化したマッチングプラットフォーム「CCReB CREMa」は、これまで情報が流通しにくかった市場の透明性を高め、流動化を促進する役割を担います。このシステムは地方銀行など金融機関への導入も進めており、同社はこれをサブスクリプション収益の柱の一つとして位置づけています。

さらに、生成AIを活用した社内向け提案サポートシステムを開発し、提案の質の均質化と属人化の排除に取り組むなど、組織全体の生産性向上への注力も特徴的です。

ククレブ・アドバイザーズは、外部のシステムエンジニアやWEBデザイナーなどの専門家を積極的に活用する「ファブレス経営」により、経営の効率化を図っている点も特徴です。

>> 企業不動産に特化するククレブ・アドバイザーズが新規上場へ。野心的な業績予想も

賃貸管理システムの導入実績No1「日本情報クリエイト」

日本情報クリエイトは、不動産業界に特化して27年以上のノウハウを蓄積し、賃貸管理から不動産仲介まで、業務フロー全体をカバーする一気通貫のソリューションを提供。

同社の事業は、賃貸管理会社向けの「管理ソリューション」と、不動産仲介会社向けの「仲介ソリューション」が両輪です。

管理ソリューションの中核を担うのは、基幹システム「賃貸革命」で、賃貸管理システムの導入実績No1を誇ります

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技術面では、AIの活用が際立ちます。業界最多「累計100億件」のビッグデータに基づく「オーナー提案AIロボII」は、AIによる賃料査定と空室対策の提案を行います。また、AI-OCR技術で物件情報の登録作業を大幅に効率化するなど、現場の具体的な課題解決に貢献しています。

また、同社は全国30拠点に及ぶ地域密着型のサポート体制を構築し、導入後の手厚い支援で顧客の信頼を獲得していることも特徴です。

近年では、業者間物件流通サービスを統合し、国内最大級の空室データベース構築を目指すなど、仲介ソリューション事業にも注力。不動産業界の生産性向上が急務とされる中、日本情報クリエイトは、その一気通貫のソリューションと全国30拠点に及ぶサポート体制で、業界のDX化を支え続けています。

>> 宮崎県発の不動産テクノロジー企業「日本情報クリエイト」の成長戦略

"富裕層×城南エリア"に特化する「ランディックス」

ランディックスは、東京都23区内の城南エリアに住む富裕層を主要ターゲットとし、オーダーメイド住宅向けの土地売買を中心に事業を展開する不動産会社です。

同社の強みは、特定の顧客層とエリアに特化することで培われた深い知見と、それを最大化するテクノロジーの活用にあります。例えば、建築会社と顧客を繋ぐマッチングサイト「sumuzu Matching」は、顧客が匿名で複数の提案を比較検討できる利便性を提供しています。

また、更地の販売現場でAR(拡張現実)技術を用いて完成後の建物を可視化するなど、革新的な手法で購入希望者の不安を解消し、スピーディーな意思決定を支援します。

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近年では、不動産テックベンチャーの子会社化を通じて独自の顧客管理システムを強化。リアルタイムでの情報共有や顧客対応レベルの標準化を進め、営業組織全体の生産性向上が図られています。


同社は、創業以来蓄積してきた豊富な顧客データと不動産テックを融合させ、従来の「フロー型」ビジネスから、顧客との長期的な関係性を軸とする「ストック型」ビジネスへの転換を推進。全成約顧客の約3割がリピートや紹介経由となっています。

また、戸建住宅用地の販売に加え、デザイン性の高い自社開発の収益用不動産も手掛けるなど、富裕層の多様なニーズに応える多角的な事業ポートフォリオも特徴の一つです。

競争の激しい不動産業界において、ニッチ市場への特化とテクノロジー活用、そして顧客基盤という「資産」を軸にした戦略は、ランディックスの事業における独自性となっています。

>> 富裕層向けの不動産テック?「ランディックス」が東証マザーズに新規上場

"不動産コンビニ"構想を推進する「And Doホールディングス」

And Doホールディングスは、全国に広がる「HOUSEDO」ブランドのフランチャイズ(FC)チェーンネットワークを基盤に、住まいのワンストップサービスを展開する不動産テック企業です。

同社は「不動産コンビニ」構想を掲げ、不動産とテクノロジー、そして金融を融合させることで、不動産取引の新たなあり方を追求しています。

同社の事業ポートフォリオにおいて、特徴的なサービスの一つが「ハウス・リースバック事業」です。

これは、自宅を同社に売却した後も、賃貸契約を結ぶことでそのまま住み続けられるサービスです。高齢化が進む日本において、老後の資金確保と住み慣れた家での生活を両立したいというニーズに応えるものです。

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この不動産事業と高いシナジーを生んでいるのが、リバースモーゲージ保証などを手掛ける「金融事業」です。不動産の査定力や売却力という自社の強みを活かすことで、他社との差別化を図りつつ、収益源の多角化を目指しています。

これらの独自サービスを支えるのが、全国約700店舗に及ぶFCネットワーク。この広範なネットワークを通じて収集される不動産情報や顧客ニーズは、ビッグデータとしてマーケティングに活用されています。

また、FC加盟店にはWeb集客やITシステムといった不動産テックのノウハウが提供され、チェーン全体の競争力向上が図られています。

>> And Doホールディングスの企業情報