高齢者住宅関連銘柄:専門特化やDXなど各社の成長戦略

超高齢社会の日本において、高齢者住宅は単なる介護施設ではなく、多様なライフスタイルに応える「終の棲家」として、その役割を大きく変えています。個人の尊厳を重視し、質の高い暮らしをいかに提供できるかが、事業者にとって重要なテーマとなりました。

その一方で、用地取得の難しさや建設費の高騰は新規開設のハードルを上げ、専門的なケアを提供できる人材の確保は、安定した運営のための共通課題となっています。

こうした状況下、各社の戦略は専門化・多様化が鮮明です。
都市部の富裕層をターゲットにした高級レジデンス、パーキンソン病や終末期ケアなど特定の医療ニーズに特化した専門施設、さらには安全性と快適性を高めたスマートハウスなど、特色ある住まいが次々と生まれています。

本記事では、こうした独自のコンセプトで高齢者住宅を展開し、新たな価値を創造する企業を紹介します。

”安心・安全・健康のテーマパーク”を追求「SOMPOホールディングス」

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2010年に設立されたSOMPOホールディングスは、国内損害保険や海外保険を主力としつつ、介護・シニア事業を重要な成長分野と位置付けています。
中核会社である「SOMPOケア株式会社」などを通じて全国で多様なサービスを展開し、保険事業で培ったリスクマネジメント能力を活かして「安心・安全・健康のテーマパーク」という独自のコンセプトを追求しています。

介護事業では、コンシェルジュが常駐し上質な住空間を提供するシニアレジデンス「ラヴィーレ レジデンス」を運営しています。
また、サービスの質の向上と効率化を目指し、介護現場のデータを活用するリアルデータプラットフォーム「egaku」の推進にも力を入れているのが特徴です。
このデータ駆動型のアプローチは、同社の事業における特徴の一つとなっています。

今後、保険と介護の連携による新たな顧客価値の創出を目指す一方、介護業界全体が直面する人材不足は同社にとっても重要な課題です。加えて、介護報酬制度の改定といった外部環境の変化や、介護事業特有のオペレーショナルリスクへの対応が、持続的な成長における重要な要素となります。

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教育事業の知見と介護のシナジー「ベネッセホールディングス」

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1955年に株式会社福武書店として創業し、後に持株会社体制へ移行して株式会社ベネッセホールディングスとなりました。
 同社は教育事業を中核としつつ、介護・保育事業を「コア介護事業」として成長の柱に位置付けています。
子会社のベネッセスタイルケアを通じ、高齢者向けホームを中心に多様な介護サービスを展開。
「Benesse=よく生きる」という社名のもと、利用者のQOL向上を重視した事業運営を行っています。

同社の介護事業は、利用者が自分らしい姿であり続けられることを目指し、質の高いサービスを提供しています。
特に、介護・保育事業におけるDX化の遅れが課題とされる中、同社は、介護の高い専門性と実践力を認定する社内資格制度「マジ神」の知見を取り入れた「マジ神AIソリューション」の開発を進めています。
 これは人とテクノロジーの融合を目指す取り組みの一環と考えられます。

高齢化社会の進展は事業の追い風であり、教育事業で培ったノウハウとのシナジーも期待されます。
しかし、介護業界全体の人材不足は同社にとっても深刻な課題であり、その対策が今後の成長に向けた重要なテーマとなっています。

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医療事務受託の基盤を活かして介護・保育分野へ「ソラスト」

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1965年創業のソラストは、医療関連受託事業を祖業としながら、介護事業やこども事業へと多角的に展開する企業です。
長年にわたる医療事務の受託で築き上げた全国の医療機関との強固なネットワークが、同社の大きな特徴であり、競争力の源泉となっています。

介護事業においては、訪問介護やデイサービスといった在宅系から、有料老人ホームなどの施設系まで、幅広いサービスラインナップを揃えています。
そして、「人とテクノロジーの融合」をテーマに掲げ、ICT技術を積極的に導入することで、業務効率化とサービス品質の向上を両立させることを目指しています。

今後、医療と介護の連携がますます重要となる地域包括ケアシステムの構築が進む中で、両分野にまたがる同社の事業基盤は、同社の特徴の一つとなっています。M&Aも活用しながら事業規模の拡大を図る一方 、介護業界全体が抱える人材不足という課題への対応が、今後の成長を左右する重要なポイントとなりそうです。

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都市部富裕層向けの介護付有料老人ホームを展開「チャーム・ケア・コーポレーション」

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チャーム・ケア・コーポレーションは、1984年に株式会社不二クリニックラボラトリーとして設立され、2007年に現在の商号に変更されました。
主に首都圏や近畿圏の都市部において、富裕層やアッパーミドル層を対象とした介護付有料老人ホームを運営しています。
同社は、「チャームプレミア」などの高価格帯ブランドを中心に展開し、上質な住空間と手厚い介護サービスを組み合わせることで、独自の市場を確立しています。

同社の競争優位性は、都市部の富裕層という明確なターゲット設定と、それに応える高品質なサービス提供力にあります。
立地の選定や介護サービスの質において一貫して高水準を追求することで、ブランド価値を高めてきました。
これにより、価格競争に陥ることなく、安定した事業運営を実現していると考えられます。

高齢者人口が増加し続ける中、質の高い介護サービスへの需要は今後も底堅いと予想されます。
そのため、同社のビジネスモデルは、このような底堅い市場の需要に応えるものとなっています。
一方で、建設コストの高騰や、都市部での用地取得競争の激化は、今後の新規開設におけるリスク要因となる可能性があります。
また、M&Aによって取得した施設の運営を早期に軌道に乗せられるかも、成長の鍵を握るでしょう。

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ホスピスケアで独自の地位を築く「アンビスホールディングス」

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アンビスホールディングスは、2013年に子会社である株式会社アンビスとして設立され、2016年に持株会社体制へ移行ました。
同社は、医療依存度の高い高齢者や障害者を対象としたホスピス施設「医心館」の運営を主力事業としています。
全国に施設を展開し、終末期ケアや難病ケアを必要とする人々に、看護師を含む職員が24時間体制で常駐する手厚い医療・看護サービスを提供しているのが特徴です。

同社の競争優位性は、この「医療施設型ホスピス」という独自のポジショニングにあると考えられます。
退院後の受け皿が少ない医療依存度の高い利用者に特化することで、一般的な介護施設との差別化に成功しました。
そして、医療機関や地域のケアマネジャーとの密な連携体制を構築し、利用者一人ひとりに最適なケアを提供できる点が強みとなっています。

高齢化の進展と在宅医療へのニーズの高まりを背景に、同社が事業を展開する市場は拡大が見込まれています。
一方で、専門性の高い看護師の確保・育成が、今後の事業拡大の成否を分ける重要な鍵となるでしょう。
加えて、事業所の収益性は介護報酬制度の動向に大きく左右されるため、制度改定は常に注視すべきリスク要因と言えます。

>>アンビスホールディングスについてもっと詳しく在宅ホスピス最大手「アンビスホールディングス」のビジネスモデル

“教育”と”医療福祉”の両輪で社会課題解決を目指す「学研ホールディングス」

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1947年創業の学研ホールディングスは、出版・教育事業を祖業としながら、「医療福祉分野」を経営のもう一つの柱として大きく成長させている企業です。
同分野では、子会社の学研ココファンが運営するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や、メディカル・ケア・サービスが展開する認知症グループホームなどを全国で運営しています。

同社はこれらの事業を通じて、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期まで続けられる社会の実現を目指しています。
また、祖業である教育事業の知見を活かし、一部の施設に子育て支援のための多世代交流の場を設けている点も、同社ならではのユニークな特徴と言えるでしょう。

高齢化の進展を背景に、同社が事業を展開する医療福祉分野は、市場の拡大が見込まれる領域です。
しかし、介護業界全体でみられる食材費や水道光熱費、人件費といった物価高騰が営業利益に影響を与える可能性があります。
また、新規施設開設を伴う事業モデルのため、昨今の建設費の高騰は今後の事業拡大ペースに影響を与える可能性があります。

>>学研ホールディングスについてもっと詳しく12年連続増収!M&Aで塾・介護事業を拡大「学研ホールディングス」

パーキンソン病専門施設”PDハウス”でニッチ市場を開拓「サンウェルズ」

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2006年設立のサンウェルズは、パーキンソン病患者に特化した介護施設「PDハウス」を全国に展開する企業です。
一般的な高齢者向け住宅とは一線を画し、特定の神経難病に焦点を当てることで、ニッチながらも確固たる市場を築いています。

同社の核心は、パーキンソン病の進行度に合わせた専門的なリハビリテーションと看護ケアを提供できる点にあります。
24時間体制の看護師常駐はもちろんのこと、専門的な知識を持つスタッフによる質の高いサービスが、他社にはない競争優位性の源泉となっているようです。

今後、パーキンソン病患者の増加が見込まれる中、専門施設への需要はさらに高まることが予想されます。
そのため、同社の「PDハウス」の全国展開は、今後の事業拡大に繋がる可能性があると考えられています。
ただし、特定の疾患に特化しているがゆえに、新たな治療法の開発などが市場環境を一変させる可能性も否定できません。
また、専門的な知識を持つ人材の継続的な確保と育成も、持続的な成長のためには不可欠な要素です。

>>サンウェルズについてもっと詳しく石川県の介護事業者「サンウェルズ」が上場へ:パーキンソン病専門ホームで急成長