建築DX関連銘柄:プラットフォーム事業の可能性と技術動向

オプティム

人手不足の深刻化や働き方改革への対応など、日本の建設業界は今、大きな構造変革の岐路に立たされています。

従来の労働集約的なモデルが限界を迎える中、業界全体の生産性向上は喫緊の課題であり、その対策として「建築DX」への期待が高まっています。

こうした状況を背景に、独自のテクノロジーで業界課題に挑む企業が次々と頭角を現してきました。AIによる自動設計や施工管理、BIM/CIMを核としたデータの一元化、クラウド映像技術による遠隔臨場、さらにはスマートフォン一つで測量や現場管理を可能にするソリューションなど、そのアプローチは多岐にわたります。

本記事では、こうした建築DXを牽引する注目企業群をご紹介します。

低コストで展開する注文住宅事業「ロゴスホールディングス」

ロゴスホールディングスは、「日本の家づくりをつくる。」という経営理念のもと、注文住宅事業を主軸に北関東〜北海道を中心に展開している企業グループです。

人手不足や後継者不在といった課題を抱える住宅業界において、同社はデジタル技術を駆使した事業モデルで独自のポジションを築きつつあります。

事業の核心にあるのが、徹底したDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。

従来の住宅総合展示場には出展せず、デジタルマーケティングによって効率的に顧客との接点を創出。これにより集客コストを抑制し、高品質な住宅を適正価格で提供するビジネスモデルが確立されました。

また、顧客との打ち合わせのオンライン化や、施工管理のデジタル化による業務効率化も特徴です。その先進的な取り組みは、クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」の活用事例コンテストで全国一位を受賞するなど、外部からも評価されています。

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競争力を支える技術的基盤が、特許出願中である独自の「MCB工法」です。

あらかじめ工場で生産した箱型の木造モジュールを現場で組み上げるという手法により、工期は著しく短縮され、天候の影響を受けない安定した品質が確保されます。この工法は、建設業界の構造的課題である職人不足に対する有効なアプローチだと言えるでしょう。

他にも、「地域No.1工務店の集合体」となることを目指すユニークなアライアンス戦略は、同社の競争優位性を支える重要な要素です。

M&Aでグループ化した地域工務店のブランドや強みは維持しつつ、自社のDXノウハウを提供することで、グループ全体の事業基盤を強化する体制を構築しています。特定企業による寡占が進んでいない住宅市場において、この戦略を通じて事業領域の拡大を図っています。

>> ロゴスホールディングスの企業情報

BIMを活用して建築DXの支援を行う「コアコンセプト・テクノロジー」

コアコンセプト・テクノロジー(CCT)は、製造業や建設業といった日本の基幹産業を対象に、DX支援を軸としたソリューションを提供する企業です。

人手不足やベテラン技術の継承といった、それぞれの現場が抱える課題解決に取り組んでいます。

同社の強みは、業界への深い理解に基づいた専門性の高い支援体制が特徴です。特に建設業界では、設計から施工までの情報を3次元データで一元管理するBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用がDXの鍵となりますが、CCTは関連システムの開発で豊富な実績を有します。

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この専門性を支えるのが、独自のIoT/AIソリューション「Orizuru」。

同サービスは、3DモデリングやAIなどの技術を標準化することで、顧客ごとの多様な要求に対し、迅速かつコストを抑えたシステム開発を可能にします。製造業で培った知見を建設分野に応用するなど、業種を横断したユニークなアプローチも同社の強みの一つです。

CCTが事業を展開する建設テック市場は、いまだ成長の初期段階にあり、特定の企業による寡占は見られません。現場レベルでデジタル化の必要性が認識される一方、その本格的な活用は緒に就いたばかりです。

同社は、このギャップを埋めるべく、専門的なDX支援サービスを提供し、市場の発展に貢献。業界特化の知見と独自の技術基盤を両輪に、日本の「現場」が抱える課題解決に取り組んでいます。

>> IT人材調達『Ohgi』も拡大!DX支援の「コアコンセプト・テクノロジー」

市場シェアNo.1のクラウド録画サービスを展開「セーフィー」

セーフィーは、「映像データであらゆる産業の”現場”をDXする」というコンセプトを掲げ、クラウド録画サービス市場でトップシェアを誇る企業です。

同社は単なる防犯カメラの提供に留まらず、映像データを活用してあらゆる産業の「現場」を革新する映像プラットフォームへと進化を続けています。

特に注力するのが、人手不足や働き方改革といった喫緊の課題に直面する建設業界への支援です。同社のソリューションは、現場の状況をリアルタイムで遠隔地から確認できる「遠隔臨場」を可能にし、現場監督や発注者の移動時間の大幅な削減に貢献します。

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主力製品であるウェアラブルカメラ「Safie Pocketシリーズ」は、現場作業員が身につけて移動しながら撮影できる手軽さに加え、国土交通省の仕様にも適合している点などが、多くの建設現場で導入が進む要因となっています。

セーフィーの強みは、映像を「見る」だけの受動的な活用から、AIと連携させて「分析・活用」する能動的なDXへと顧客を導く点にあります。

例えば、AIを用いて危険エリアへの侵入を自動で検知したり、熟練工の技術を映像で記録して若手への技術伝承に役立てたりと、生産性向上や安全管理に直結する付加価値を提供します。

加えて、API連携などを通じたオープンプラットフォーム戦略の推進も、同社の重要な取り組みです。この戦略は、多様な企業がセーフィーの映像基盤上で新たなアプリケーションを開発・提供できるエコシステムの構築を目的とします。

高い市場シェアを基盤に、映像データを活用して社会課題解決に取り組んでいます。

>> セーフィー、ARR100億円を突破。アナログ規制の緩和・撤廃が更なる後押しへ

主要なICTサービスをパッケージで提供「シーティーエス」

シーティーエスは、従来のハードウェアレンタル事業から、データと情報を活用して現場を支援する「建設ICTの専門企業」へと、事業転換を推進しています。人手不足や働き方改革など、建設業界が直面する課題に対し、同社は独自のソリューションで応えます。

この変革の中核をなすのが、統合サービス「サイトアシストパッケージ」。これは、クラウドストレージ、映像サービス、通信環境といった、現場のDXに不可欠なICTサービスをパッケージで提供する点が特徴です。

個別のツール導入の手間を省き、シームレスな情報共有と遠隔支援の環境を構築することで、顧客に価値を提供します。

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同社の強みは、全国に広がる物理的な支店網と、建設現場のニーズを深く理解したサービス群にあります。

例えば、クラウドストレージは建設業特有のデータ検索に対応し、クラウド映像サービスは夜間でも鮮明な高画質映像を記録。他にも国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されるなど、高い専門性も有しています。

特定の巨大企業が存在しない建設テック市場において、同社は全国約2,600社の地場ゼネコンを主要な顧客層と定め、強固な事業基盤を構築しつつ、将来的にはより広範な顧客層への展開を視野に入れます。

「サイトアシストパッケージ」の認知度向上という課題に対し、同社は主力のDDS(デジタルデータサービス)事業を基軸とした事業転換を推進。ハードとソフト、そして全国規模のサポート体制を三位一体で融合させた独自のビジネスモデルをもって、建設業界全体の生産性向上を目指します。

>> シーティーエスの企業情報

スマホ測量アプリで建設現場の常識を変える「オプティム」

オプティムは、AI・IoT技術を核として、様々な産業のDXを推進する技術企業です。

建設業界が抱える労働力不足という深刻な課題に対し、同社は関連会社であるオプティム・デジタルコンストラクションを介し、革新的なソリューションの提供を開始しました。

その中核は、スマートフォンで高精度な3次元測量を可能にするアプリ「OPTiM Geo Scan」にあります。

これまで専門知識と高価な機材を要した3次元測量を、誰もが手軽に扱えるスマホアプリとして提供することで、建設現場の生産性向上に大きく貢献。同社の導入事例ではに、測量工程を半分以下に削減した事例も紹介されています

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この技術の信頼性は、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)において最高評価「VE」を獲得し、公共工事の出来形管理要領にも準拠していることからも、うかがい知ることが可能です。

また、オプティムの強みは、単一のアプリ提供に留まらず、拡張性のあるプラットフォームを構築した点にあります。測量データと連携する業務支援アプリを「ミニアプリ」として追加できるこの仕組みは、現場の多様な需要に柔軟に対応することを可能にします。

大手ゼネコン向けには、機材調達から技術支援までをワンストップで提供する「コーポレートライセンス」を展開するなど、顧客との連携を深める戦略を推進しています。また、農業分野のドローンサービスで国内シェアNo.1の実績を持つなど、他産業での事業展開も行っています。

>> オプティムの企業情報

大手ゼネコンの知見を継承した"BooT.one"でDXを推進「応用技術」

応用技術は、長年培ってきた情報技術と専門ノウハウを融合させ、建設業界のDXを推進する技術サービス企業です。

親会社であるトランス・コスモスとの連携を活かし、システム開発に加えて業務プロセスの代行(BPO)までを包括的に支援する、独自のポジションを構築しています。

同社の建設DX事業の中核を担うのが、「toBIM」(建築向け)および「toCIM」(土木向け)と名付けられたサービス群です。

中でも建築分野で注目されるのが、BIMソフトウェア「Revit」のアドインパッケージ「BooT.one」。これは大手ゼネコンのBIM規格を基に開発されており、標準化された部材テンプレートや作業効率化コマンドを提供することで、設計業務の生産性向上に大きく寄与します。

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土木分野においても、3次元モデルのデータ活用を効率化する「Navismaster」を提供。こちらは国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)に登録されており、公共工事における信頼性と導入メリットの高さに特徴があります。

応用技術の強みは、Autodesk社のゴールド認定パートナーとしての高い技術力と、顧客の声を反映しながらサービスを育てる開発姿勢も強みの一つです。

「BooT.one」の業界標準化という目標を掲げ、同社は建設業界全体の生産性向上への貢献に取り組んでいます。

>> 応用技術の企業情報

"暗黙知の民主化"を掲げる「Arent」

Arentは、「暗黙知を民主化する」という独自のミッションを掲げ、建設業界のDXを推進する技術開発企業です。熟練技術者が持つ属人的なノウハウを数学力とITでシステム化し、誰もが活用できる「知」へと転換することを目指しています。

同社の事業モデルの最大の特徴は、単なる受託開発に留まらない「プロダクト共創開発」にあります。クライアント企業と深く連携し、課題発見からシステム開発、事業化までをワンストップで伴走。

このプロセスを通じて現場の深いニーズを捉え、実用性の高いプロダクトが生まれます。建設業務統合プラットフォーム「PLANETS」などがその代表例です。

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技術面では、高度な3D自動設計技術が競争優位性の源泉となっています。共創開発から生まれた「PlantStream®」は、従来2時間を要したプラントの配管設計をわずか1分で1,000本処理するなど、圧倒的な効率化を実現。

また、自社プロダクト「Lightning BIM シリーズ」は、業界標準のBIMソフトウェアの機能を拡張し、手間のかかる配筋業務の自動化に貢献します。

Arentの戦略は、自社開発とM&Aによる外部技術の獲得という二つの軸で推進されます。グループ化した企業の技術に自社の開発力やマーケティングの知見を掛け合わせることで相乗効果を生み出し、BIM化の義務化や2024年問題といった業界動向に対応します。

同社は、深い業界知識と高い技術力を両輪に、建設業界全体の生産性向上に取り組んでいます。

>> 建設業界向けで急成長「Arent」大手企業との共創などで業界DXプラットフォーマーへ