現場起点か、プラットフォームか。物流テック関連銘柄6選

豊田自動織機

人手不足の深刻化などを背景に、日本の物流は社会インフラとしての持続可能性が問われる大きな岐路に立っています。この巨大な課題を乗り越える鍵として、「物流テック」に熱い視線が注がれています。

最前線を走る企業のアプローチは、単なる無人フォークリフトや自動倉庫といったハードウェアの導入に留まりません。AIやIoT、データを活用し、物流現場のあらゆるプロセスを「見える化」し、全体最適を図る。そんなデジタルトランスフォーメーション(DX)の動きが本格化しています。

本記事では、こうした様々なアプローチで日本の物流の未来を支える、注目の上場企業たちの取り組みを紹介します。

「カイゼン」のDNAを武器に物流DXを推進「豊田自動織機」

フォークリフトなどの産業車両で世界トップクラスの事業基盤を持つ豊田自動織機。

同社は今、そのハードウェアの強みに加え、トヨタ生産方式に代表される「カイゼン」のDNAを武器に、物流業界のDXをリードするソリューション企業へと進化を遂げつつあります。

そのアプローチの核心は、徹底した「現場起点」にあります。単に自動化機器を導入するだけでなく、物流現場のあらゆる課題を洗い出し、プロセス全体を最適化する。

このTPSの思想が、同社の物流ソリューション事業の根幹を成しています。

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フォークリフト事業と物流ソリューション事業の両輪を持つこと、そして有力企業をM&Aで獲得してきたことにより、ハードとソフトを組み合わせた総合的な提案力を実現。

自動運転フォークリフト(AGF)から大規模な自動倉庫まで、顧客のニーズに合わせた最適なシステムの構築が可能です。

その技術開発も現場の課題解決に直結。例えば、AGF導入の障壁となるトラック荷物のわずかなズレを、LiDARと画像認識を組み合わせた独自技術で高精度に検知し、自動化の適用範囲を大きく広げるなど、実用的なイノベーションを創出しています。

>> 豊田自動織機の企業情報

クラウド在庫管理でトップシェア「ロジザード」

クラウド型の在庫管理システム(WMS)分野でトップシェアを誇り、企業の物流DXを支援するのが、ロジザード株式会社です。同社は「物流×在庫×IT」を掲げ、在庫情報の「見える化」を推進しています。

同社の強みは、インターネット黎明期から提供している月額制のSaaSというビジネスモデルにあります。

中小企業でも導入しやすい価格設定で市場を切り拓き、一度導入されると変更が難しい物流システムの特性から、継続的に利用される傾向があります。

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同社は「出荷絶対」を社是とし、創業以来365日対応の自社運営サポートを提供。これは、顧客の業務を止めないことを重視する姿勢の表れです。

システム自体も、BtoBとBtoCの両物流への標準対応や、オムニチャネル、物流ロボット連携といった最新のトレンドに柔軟に対応できる拡張性を有しています。

同社は、こうしたサービスを通じて、物流現場の業務効率化と在庫管理の情報活用を推進しています。

>> ロジザードの企業情報

デジタルとリアルの融合で“物流クライシス”に挑む「ハコベル」

ラクスルグループが、物流業界の構造的課題、通称“物流クライシス”の解決に挑む事業、それが「ハコベル」です。

同社は、ITの力で業界の非効率を解消するプラットフォーマーとしての役割を担います。

ハコベルの大きな特徴は、デジタル技術を持つラクスルと、全国にリアルな物流網を持つセイノーホールディングスのジョイントベンチャーである点にあります。このITと現場ノウハウの連携が、同社の事業の基盤となっています。

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その事業の核は、荷主とトラックドライバーを直接つなぐ「運送手配サービス」と、荷主企業の配車業務などを効率化する「物流DXシステム」の2つ。

これにより、トラックの非稼働時間を有効活用し、多重下請け構造といった業界の旧弊をテクノロジーで解決することを目指しています。

また、ネスレ日本など大手企業での導入では、すでに運送コスト削減や業務効率化といった具体的な成果も報告されています。

さらに同社が目指すのは、業界のあらゆる企業と連携する「オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)」の構築です。これは、自社のサービスに固執せず、業界全体のインフラとなることで社会課題の解決を目指す取り組みです。

>> セイノーホールディングスの企業情報

>> ラクスルの企業情報

パレット屋から物流ソリューション企業へ「UPR」

物流の血液とも言えるパレットのレンタル事業を基盤に、業界の課題解決に挑むのがUPR株式会社です。

同社は単なる「パレット屋」に留まらず、全国約200か所のデポ網というリアルアセットの上に、IoTやAIといったデジタル技術を掛け合わせ、物流全体のソリューションを提供する企業への進化を見せています。

デジタル技術を活用したソリューションの一例が、物流IoT事業です。GPSと温度センサーを搭載した追跡管理ソリューション「なんつい」は、医薬品などの厳格な品質管理が求められるコールドチェーン物流を支えます。

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また、スマートフォンのカメラでパレットを撮影するだけで瞬時に枚数をカウントできる画像認識AIアプリ「パレットファインダー」は、棚卸し業務の効率化に貢献します。

さらに、同社は「モノ」や「情報」だけでなく、「人」の課題にも向き合います。物流現場で働く人々の身体的負担、特に腰痛を軽減するアシストスーツ「サポートジャケット」を提供し、労働災害の防止や人材の定着といった課題にもアプローチしています。

「所有から共同利用へ」というシェアリングの思想を軸に、複合化する物流課題に多角的なソリューションで応える取り組みを進めています。

>> レンタルパレットで物流問題への対処を目指す「ユーピーアール」が面白い

様々な場面で“モノ”を動かす「ダイフク」

工場の生産ラインから巨大な物流センター、空港の手荷物システムまで、現代社会のあらゆる場面で“モノを動かす”技術、マテリアルハンドリング(マテハン)。この分野で9年連続世界売上高No.1を誇るのが、株式会社ダイフクです。

同社は単なる機器メーカーではなく、物流の全体最適を実現する総合ソリューションプロバイダーとしての地位を確立しています。

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その強さの核心は、コンサルティングから機器・ソフトウェアの開発・生産、保守までを一貫して自社で手掛ける「トータルサポート体制」にあります。

自動倉庫、無人搬送車、高速仕分けシステムといった多様なハードウェアと、それらを制御する情報システムを組み合わせ、顧客ごとに最適な物流の形をデザイン。

この総合力は、一般物流の現場に留まりません。半導体工場のクリーンルーム内搬送や、自動車工場の生産ライン、空港のバゲージハンドリングシステムなど、高い信頼性が求められる領域でも事業を展開しています。

労働力不足などを背景に世界中で物流・生産現場の自動化ニーズが高まる中、ダイフクが提供する「モノを動かす」ソリューションは、社会インフラの様々な場面で活用されています。

>> ダイフクの企業情報

他社製機器も“つなぐ”統合制御を目指す「三菱ロジスネクスト」

世界初の無人フォークリフトを開発したパイオニア、三菱ロジスネクスト。

同社は今、単なる産業車両メーカーの枠を超え、人手不足や生産性向上といった物流現場の課題を解決する、ソリューション事業の強化を進めています。

その取り組みを象徴するのが、独自の統合制御システム「ミクストフリートソリューション」です。

これは、自社の無人フォークリフト等と、顧客がすでに保有している“他社製”の機器をシステム連携させ、有人・無人機器の作業管理を統合し、現場リソースの効率化を支援するものです。

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同社は、レーザー誘導方式のAGFや、AIで人を高精度に検知する安全システム「グッドファインダー」といったハードウェアを開発。

並行して、車両の稼働状況を「見える化」するIoTシステム「LVS」や、三菱重工グループの技術を応用した「SynfoX」なども開発を手掛けています。

中期経営計画では「物流ソリューション事業の飛躍」を基本戦略の一つに掲げています。あらゆる機器を“つなぐ”技術で、お客様の物流課題を解決する力を強化することを目指しています。

>> 三菱ロジスネクストの企業情報