ラクスル 事業内容・ビジネスモデル

フォロー
時価総額 1241億600万 円
銘柄コード 4384(市場第一部(内国株))

2009年9月、印刷の新しい発注の仕組みづくりを目的に設立。
2010年4月には印刷通販の価格比較サービスサイト『印刷比較.com』を開始。
同年9月には『印刷比較.com』を『ラクスル』にリニューアル。
2011年6月には印刷一括見積もり事業、2013年3月には印刷ECサービスを開始。
2015年12月には物流マッチングサービス『ハコベル』を開始。
2017年7月にはヤマトHDと資本提携。

事業概要

ラクスルは「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」という企業ビジョンのもと、デジタル化が進んでいない伝統的な業界にインターネットを用いて新しい仕組みを作り、既存のビジネル慣習を変えていくことで、当社の主な顧客である国内の企業・個人事業主の経営をより良くすることを目指し、事業を展開している。

主な事業内容は、印刷事業と運送事業である。

印刷事業とは印刷・集客支援(広告)のシェアリングプラットフォームである「ラクスル」であり、運送事業とは物流のシェアリングプラットフォームである「ハコベル」である。

インターネットの普及と技術革新により、既存産業におけるサプライヤー(ラクスルの場合、印刷事業における提携印刷会社や配布会社および運送事業における提携運送会社)を統合するコストが大幅に低下している。ラクスルは、産業ごとにプラットフォームを創出することで、1社がすべての製造と販売機能を持つのではなく、サプライヤーと顧客の需給を効率よく結びつける産業形態のあり方を提示したいとしている。

印刷事業「ラクスル」

ラクスルの主な事業である印刷事業において、印刷業界全体の市場規模は5.5兆円(経済産業省大臣官房調査統計グループ「工業統計調査 2014年確報 産業編」※2014年計測)となっており、市場には約2万5,000社(同調査結果における「印刷・同関連業」の事業所数)もの中小印刷会社が存在し、供給過多になっている。

ラクスルは印刷業界において、印刷機の実際の稼働率は低い水準にあると推測する。また、印刷機によって印刷できる印刷物が異なるため、自社で刷れないものは他の印刷会社に依頼するという“まわし仕事”が発生している。

ラクスルはそのような、現状非効率な印刷業界にとってより良いビジネス環境をつくりたいと考え、インターネットを使って全国の顧客から印刷の注文を集め、その注文をラクスルがネットワークとして築いている印刷会社に発注し、印刷機の非稼働時間を使って印刷をする仕組みを開発、提供している。

具体的には、まず、顧客が「ラクスル」のウェブサイト上で印刷物の部数や納期等を選び、印刷データをアップロードする。その後、ラクスルは印刷データを印刷に適したデータに加工し、提携印刷会社へ印刷を委託。印刷会社はラクスルから受領した印刷データを印刷後、直接顧客へ品物をお届けする。

なお、現状国内の印刷EC市場は約920億円程度(株式会社矢野経済研究所「印刷通販市場に関する調査結果2013」2013年11月7日発表における印刷通販市場の2018年度見通し)の規模であると言われている。

また、ラクスルはネット印刷の事業を基軸に、印刷物のデザインサービスや、印刷したチラシの新聞折込・ポスティングと いった、狭商圏内での「集客支援(広告)のワンストップサービス」を提供している。

新聞折込やポスティングは、 ラクスルのウェブサイト上で、オンラインの地図上からチラシを配布したい地域と配布希望日を選択すると、自動的に配布枚 数と料金が算出され注文することが可能となっている。

既存の広告代理店では数百枚程度の小ロットのチラシの配布 の場合、単価が低すぎるために営業のコストを回収できず、対応は難しいとされてきた。

ラクスルはほとんどのプロセスをEC化することで人件費を中心とした営業費用をなくし、小ロットでも低単価で配布できる体制を築いている。

結果として、これまで予算が足りず新聞折込やポスティングを使えなかった中小企業・個人事業主のマーケティング活動を可能にし、さらなる顧客の利便性を目的としてTVCMの制作・放映サービスの提供を始めている。

商品の仕入販売に関しては、店舗・営業所・印刷工場を保有せず、顧客からの受注機能、受注商品の提携印刷 会社への発注機能、及びコールセンターにおける顧客サポート機能のみを保有しており、受発注管理のほぼ全てをインタ ーネットを通じて行っている。

商品・仕様・納期に応じてラクスルが設定した価格で顧客に印刷物や配布サービスを販売し、印刷会社・配布会社へは事前に合意した仕入価格で委託を行っている。

なお、仕入価格は随時見直しを行っており、販売価格と仕入価格は直接的な連動はしていない。 また、自社ホームページを通じて商品を購買する顧客の情報をデー タベース化し、顧客ごとの購買特性を販売活動に反映させることを可能にする仕組みを構築している。

顧客に対するアプローチは、電子メールによるダイレクトメールの送信、インターネットを通じた広告の掲載及びテレ ビ等のマス媒体広告を利用しており、各手法を組み合わせることにより新規獲得、追加販売並びに離脱防止に努めている。

取扱商品は、チラシ、冊子といった商業印刷の各種商品、名刺、封筒といった事務用印刷の各種商品を中心としており、印刷物は、各商品において紙のサイズや紙種、加工の有無等仕様が多岐にわたる。集客支援(広告)サービスにおいては、新聞折込、ポスティングやダイレクトメールのほか、TVCM等を取り扱っている。

運送事業「ハコベル」

運送事業は、荷物を送りたい顧客と運送会社のドライバーをマッチングして、インターネット上で荷物の配送予約から 支払までを行うことができる物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を運営している。

顧客がパソコンや スマートフォンから「ハコベル」のウェブサイトを通じて依頼すると、その情報が「ハコベル」に登録したドライバーの パソコンやスマートフォンに届くというものだ。

その中で条件が合うドライバーが受注し、依頼時間にトラックで向かい、荷物を積んで、配送先に届ける。

「ハコベル」は2015年12月にサービスを開始し、特に都市内輸送とラストマイル配送で活用されている。

本サービスでは、インターネットを使って各運送会社の非稼動時間を有効活用し、低価格な配送サービスの仕組みの実 現を目指している。サービス利用後には顧客がドライバーを評価する仕組みを設け、優良ドライバーのみをネットワ ーク化することで、高品質のサービスを提供していく方針である。

「ハコベル」がターゲットとする国内の運送業界は、14兆円(国土交通省「物流を取り巻く現状について」2017年2月 ※2014年計測)という巨大な市場だ。しかし、ラクスルはその市場は、上位数社が売上の大部分を占める状況にあると推測する。一方で、実際の運送は大手運送会社ではなく、40,000社以上の 中小運送会社(車両数20台以下)(国土交通省「貨物自動車運送事業者数(規模別)」2016年3月31日 ※2015年)が下支えしているという、多重下請け構造となっている。

また、車両の手配は電話・FAX等が主流で、1社1社運送会社へ連絡をして車両の空き状況を確認するという人力に頼 った運用が一般的となっている。

このような業界をインターネットの力で効率化・フラット化することで、新たな価 値を顧客・運送会社双方に提供することを目指して、運送業界に参入している。

「ハコベル」では、荷主とドライバー間のやり取りをウェブサイトやスマートフォンのアプリで行っている。

トラックの手配、案件の伝達・管理、納品書や請 求書のやり取り等、これまで電話やFAXを使い紙や表計算ソフトで管理していたものをデジタル化し、手間を大幅に削減 できることで運送会社やドライバーの生産性が向上し、またコミュニケーションミスによる誤配送も減少する。

料金については、まず顧客からラクスルへ利用代金が支払われ、当社から運送会社へは事前に合意した配送委託代金を支払う。原則として車種と配送距離によって決まる明瞭な料金体系としており、カーゴ便や軽トラックに積載できる範囲であればどれだけ荷物を積んでも一律の料金となっている。さらに、24時間365日いつでも簡単に予約申し込みができ、また、配送状況をリアルタイムで確認することができるようになっている。

ラクスルの経営方針

ラクスルは、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を企業ビジョンとし、デジタル化が進んでいない既存の産業を インターネットにより効率化し、最終顧客に対して一層の便益を提供していくことを通して、社会へ貢献していく方針だ。

事業展開の方針

今後の中長期的な方向性としては、全国の顧客に対して印刷や物流をはじめとするBtoBの各種サービスをEC等の形式で 提供していくことにより、国内におけるBtoBプラットフォームの主力企業に成長し、また国内の事業で培ったノウハウを もとに、海外への事業展開を図っていくとしている。

ラクスルは、提供するサービスの意義を「産業にもたらす変革」であるとし、次のような考えを示している。

印刷や物流をはじめとする20世紀に築かれた産業は、資本を持つ大企業が莫大な費用を投じて製造設備を購入し、その製造キャパシティを営業が販売し、過剰に販売した部分を繋がりのある下請けに回すといった、大企業を頂点とする多重下請けのピラミッド型の産業構造を作り上げた。しかし、インターネットの普及およびび技術革新により、既存産業におけるサプライヤーを統合するコストが大幅に低下した。

ラクスルは、この多重下請け構造下にある中小印刷会社や中小運送会社をインターネットで結びつけ、仮想的に巨大な供給キャパシティを持ち、ECサイトを通じて直接発注者と繋げるシェアリングプラットフォームを創出することで、1社が製造から販売まで全ての機能を持つ産業形態ではなく、サプライヤーと顧客の需給を効率良く結び付ける21世紀型 の産業形態の在り方を提示したいと考えている。

ラクスルが産業にもたらす変革の例として、「垂直統合から水平統合への変革」、「自社グループ1社での設備投資から、水平統合による巨大なキャパシティへの変革」、「ピラミッド型の多重下請け構造からネットワーク型のプラットフォームへの変革」などを挙げ、印刷業界における変革としては、自社グループ内で、営業部門、印刷工場、研究開発部門等を保有する垂直統合の形態から、プラットフォームにより各社が保有する印刷工場を水平統合する形態への変革、運送業界では顧客から受注を行う大手運送会社が中小運送会社に実際の運送を委託する多重下請け構造からの変革などをあげている。

事業展開の方針として、「BtoBのプラットフォームとしてのユニークなポジショニング」も目指している。

プラットフォーム価値を拡大するためには、テクノロジー(インターネット関連技術、プラットフォームの構築技術)、マーケティング(顧客の集客力)及びオペレーション(プラットフォームの運営力)の各要素を高い次元で有機的に連携することが必要である。

ラクスルは、各要素の高度化と連携に向けた施策に継続的に取り組んで行く方針だ。

企業価値の源泉

ラクスルの企業価値の源泉は、「顧客数×ARPU」であるとしている。

顧客からの信頼の総和であり、プラットフォームとしての価値でもある売上高と、顧客及びサプライ ヤーへの付加価値の総和である売上総利益(当社は、売上高からサプライヤーに仕入代金を支払った残りを売上 総利益として計上)の最大化を重視した経営を行っている。

売上高を構成する顧客数×ARPUの最大化と、提 供するサービスの高付加価値化及びサプライヤーの生産性向上による売上原価の低減により実現される売上総利益率の最大化を目指す方針だ。

加えて、高い定着性を有する顧客基盤がもたらす安定的な収益基盤も重視する。

ラクスルの顧客の特徴は、1回の利用で終わるのではなく、複数回の注文を行っている点にあるとし、リピート率又は注文回数を「年間購入者数(年間合計)」「1人あたり注文回数(年平均)」「1件あたりの注文単価(年平均)」の指標で管理している。

プラットフォーム『ラクスル』の戦略

ラスクルは、プラットフォーム『ラクスル』の戦略として、5つを示している。

1つ目に「需要・供給双方にWin-Winな自律的成長モデル」である。ユーザー(顧客)とサプライヤーをエンパワメントすることで、サプライヤーの増加、当社プラットフォームのキャパシティの拡大、ユーザーの増加、取引量の増加、さらなるサプライヤーの増加という、自律的な成長モデルの実現を目指している。

2つ目に「供給サイド:ファブレス(製造設備、製造工程を保有せずに製造業としての活動を行うこと)モデルによる柔軟な供給と資本効率の高い生産体制の実現」をあげている。ラクスルのプラットフォームのサプライヤーに対する付加価値は、余剰キャパシティの活用による稼働率、生産性の向上にある。シェアリングによる仮想印刷工場を作ることで、設備投資を行わずにスケール可能な資本効率の高いビジネス展開を実現している。

工場 投資が不要なため、生産キャパシティの拡張をスピーディーに行うことができ、売上の急成長にも耐えられる生 産体制を構築している。規模の拡大に対応可能な印刷キャパシティを確保し、アセットライトモデルとして、高い資本効率性の実現が可能となっている。

3つ目が「需要サイド:ファブレスモデルによる固定費削減で潜在市場を開拓」だ。ラクスルのプラットフォームのユーザーに対する付加価値は、小ロットから低コストで発注が可能なため、中小企業・個人事業主等の顧客が裾野広く利用できる点にある。ラクスルは、一般の印刷会社に比べ、小ロットの印刷を低価格で提供している。それは、「ギャンギング」(多面付け印刷)を行うことで一般的な印刷会社に比べて大幅なコストダウンを実現しているためだ。

ラクスルは、インターネットで全国から毎日数千の注文を受注し、同じ紙質、同じ部数の注文を多く抱えており、1つの印刷用版で複数の顧客の印刷物をまとめて印刷 することが可能になることで、製版コストを複数社で按分し、1社あたりのコストを大幅に下げることが可能となっている。

特に固定費の比率が高い小ロットの印刷物は既存の印刷会社に比べ競争力の高い価格で提供できるようになり、小ロット・低価格という新しい印刷市場を生み出している。

これが、特定顧客への依存度 が低く、高い定着性を有する顧客基盤の獲得に繋がっている

4つ目の「集客支援(広告)サービス」も重要戦略の1つとしてあげている。ラクスルの大きな特長は、印刷に限らず、中小企業・個人事業主が多い『ラクスル』の顧客の集客活動(マーケティング活動)を支援する点にある。

印刷物のデザインから、新聞折込、ポスティング、ダイレクトメール等 の配布手配までをオンライン上で手軽に行うことができる。例えば、新聞折込やポスティングは、当社のウェ ブサイト上で、オンラインの地図上からチラシを配布したい地域と配布希望日を選択すると、自動的に配布枚数 と料金が算出されるようになっており、パソコンの操作が苦手な人でも直感的な操作で注文することができる。新聞折込は、新聞の銘柄を指定することも可能となっている。

従来、既存の広告代理店では数百枚程度の小ロットのチラシの配布の場合、単価が低すぎるために営業のコストを回 収できず、対応は難しいとされてきた。ラクスルは、ほとんどのプロセスをEC化することで人件費を中心とした 営業費用をなくし、小ロットでも低単価で配布できるようにした。

これにより、これまで予算が足りず新聞 折込やポスティングを使えなかった、中小企業・個人事業主のマーケティング活動を可能にした。

ラクスルは、この集客支援(広告)サービスを展開することにより、ARPUの最大化を図っている。

当該サービスを展開するメリットは、印刷物の販売だけではなく販売促進目的の配布サービスを提供することによる顧客単価の上昇、 注文件数の増加、ユーザーとの関係性強化、リピート率の上昇等であるとしている。

最後に「継続的な業務改善を可能にするリアル・オペレーション・ノウハウ」をあげている。ラクスルは、プラットフォームの運営者でありながら、生産オペレーション面での学習と研究開発を目的として、 提携印刷会社と顧客の間のサプライチェーンに直接関与することで、売上原価の低減による売上総利益率の継続 的な改善を図っている。

具体的な施策は、「自社保有印刷機の活用」、「資材の共同購買」、「新資材の積極開発」、「物流網の最適構築」をあげ、「自社保有印刷機の活用」においては、最新設備を提携印刷会社へ試験導入(3台を貸与)を行ったり、ギャンギング(多面付け印刷)による小ロット印刷の効率化、実機運用を通じて最適な運用プロセスを設計し、他の提携印刷会社へも展開するなどしている。