"再配達問題"に挑む「宅配ボックス関連銘柄」

大和ハウス工業

EC市場の拡大と、物流の2024年問題。これらを背景に深刻化する「再配達」は、今や社会全体で解決すべき課題となっています。

その最も有効な解決策の一つとして、宅配ボックスへの注目がかつてなく高まっており、市場は新たな成長期を迎えています。

本記事では、宅配ボックス業界における個性豊かな主要プレイヤーたちの戦略と、それを支える技術やビジネスモデルを紹介していきます。

特徴的な宅配ソリューションで再配達問題に挑む「大和ハウス工業」

大和ハウス工業は、Eコマースの拡大に伴い深刻化する「再配達問題」や物流業界の人手不足といった社会課題の解決に、DXを活用した独自の宅配ソリューションで挑戦。

その取り組みは、単なる宅配ボックスの設置に留まりません。宅配ボックスメーカーや主要な配送業者と連携し、ハードとソフトを融合させた新たなサービスが創出されています。

代表例が、スマートキーを搭載した戸建住宅向けの宅配ボックス「Next-Dbox」シリーズ。スマートフォンアプリと連動し、荷物の到着通知や遠隔操作を可能にすることで、利用者の利便性が飛躍的に高められています。

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さらに新しいモデルでは、業界で初めて24時間録画対応の防犯カメラ付きインターホンを宅配ボックスに統合。荷物の受け取りという機能に加え、玄関周りの「安全・安心」という新たな価値を提供しています。

マンション向けには、より踏み込んだサービスも展開。

グループの管理会社が荷物を一括で受け取り、各住戸へ直接届ける「マンション内配送サービス」の実証実験を開始し、「再配達ゼロ」の実現が目指されています。オートロック付き賃貸住宅向けの「スマート置き配」の導入も推進しています。

大和ハウス工業は、戸建住宅から賃貸、分譲マンションまで、多様な住宅事業を手掛ける総合デベロッパーとしての強みを活かし、物流インフラの課題解決と暮らしの利便性向上に貢献しています。

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発送もできる暮らしのプラットフォームへ「パナソニック」

パナソニックは、住宅設備・建材を手掛けるグループの総合力を活かし、宅配ボックス事業を通じて「再配達問題」という社会課題の解決に取り組んでいます。

同社は、単なる「箱」の提供に留まらない、次世代の宅配ソリューションが推進されています。

その戦略を象徴するのが、戸建住宅用宅配ボックス「COMBO」シリーズの進化です。

最新モデルの「e-COMBO LIGHT」は電子錠を搭載し、EC商品の返品だけでなく、フリマアプリ「メルカリ」の発送サービスにも対応。これにより、宅配ボックスは荷物を「受け取る」だけの場所から、荷物を「発送する」拠点へと、その役割が大きく広げられています。

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集合住宅向けには、「スマート宅配ロッカー」は、荷物の受け取り・発送機能に加え、クリーニングの受け渡しや食品宅配といった生活サービスとの多様な連携を実現。宅配ボックスをハブとした、新たなライフスタイルを提案しています。

これらの製品開発は、住宅メーカーや主要な配送業者との連携がこれ支えます。また、パナソニック ハウジングソリューションズが持つ全国の販売・施工パートナー網は、製品の普及を力強く後押しします。

物流業界の構造的な課題と、非対面という新たな生活様式。二つの大きなトレンドを捉え、パナソニックは宅配ボックスという「点」のソリューションを、暮らし全体を支える「面」のプラットフォームへと進化させようとしています。

>> 「創業者の意志、現代に取り戻す」パナソニック流デザイン経営

ロック技術を活かした堅牢性の高い宅配ボックス「アルファ」

アルファ株式会社は、1923年の創業以来、自動車、住宅、ロッカーという「アクセス」の三大要所を支えてきた総合ロックメーカーです。

同社は今、長年培ってきたロック技術と独自のノウハウを武器に、宅配ボックスという新たな市場で存在感を高めています。

同社の競争優位性の源泉は、自らが「イレギュラー経験量」と呼ぶ、膨大な知見にあります。

自動車の厳しい品質基準、住宅の多様なセキュリティニーズ、公共の場で不特定多数が利用するロッカーの堅牢性。これらの異なる分野で培った経験が、他社にはない信頼性と安全性を持つ製品開発を可能にしています。

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その技術力は宅配ボックス製品にも活かされています。ICカードや暗証番号で施解錠する電子錠により、高いセキュリティ性と利便性を実現。また、マンション向けの製品では、カラーユニバーサルデザインや音声ガイダンスを取り入れるなど、多様な利用者に配慮した設計が特徴です。

この宅配ボックス事業は、同社の強固な既存事業基盤に支えられています。

住宅用電気錠では国内外でトップシェアを誇り、これらの事業で築いた顧客基盤や販売チャネルが、宅配ボックスの普及を後押ししています。

ロックメーカーとしての100年の歴史と信頼を背景に、アルファは、その技術力で再配達問題という社会課題の解決に貢献し、人々の暮らしにおける「アクセス」の未来を創造し続けています。

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マンション向けに導入負担の少ない製品を提供「神栄」

1887年創業の神栄グループは、商社機能とメーカー機能を持つハイブリッド型企業として、多岐にわたる事業を展開しています。

同社の宅配ボックス事業は、主に集合住宅(マンション)向けに特化している点が特徴です。

建築金物の総合メーカーとして培ったノウハウを活かし、設置スペースや必要数、サイズといった集合住宅ならではの多様なニーズに柔軟に対応できる、組み合わせ可能な製品ラインナップが強みです。

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技術面では、利用者の利便性と管理の容易さを両立させる工夫が見られます。また、従来のダイヤル錠に加え、新たに「機械式テンキー錠」を搭載した新モデルが投入される予定です。

この製品は、配線工事が不要で電池交換の手間もなく、軒下などの半屋外にも設置できるため、導入の自由度を大きく高めます。

神栄グループは、中期経営計画において事業ポートフォリオの最適化を推進。宅配ボックスが含まれる建築金物・資材分野は、暮らしに不可欠な製品を提供する領域として、社会のニーズに対応しています。

長い歴史の中で、時代の変化に対応し事業を変革してきた神栄グループ。その取り組みの一つである宅配ボックス事業は、人々の豊かで快適な暮らしづくりに貢献しています。

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100年の技術で宅配ボックス市場に挑む「ダイケン」

ダイケンは、1924年の創業以来、100年にわたり建築金物やエクステリア製品を手掛けてきた総合メーカーです。

自転車ラックなどで国内トップメーカーとしての地位を築く同社は今、長年培ってきたものづくりのノウハウを活かし、社会問題化する「再配達問題」の解決に、宅配ボックス事業を通じて貢献しています。

同社の宅配ボックスの特徴は、設置の容易さと運用コストの低さにあります。

主力製品の多くは、電気配線工事が不要な「機械式ダイヤル錠」や「電池式プッシュボタン錠」を採用。これにより、新築だけでなく、既存の集合住宅や戸建てにも、低コストかつ容易な後付け設置が可能です。

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一方で、時代のニーズに応え、デジタル技術を活用した製品も展開。戸建て向けの「スマート宅配ボックス」では、スマートフォンアプリとBluetoothで連携し、解錠操作や利用履歴の確認ができるなど、利便性を高めたソリューションを提供しています。

また、子供の閉じ込め事故を防ぐため、一部のボックスには内部から解錠できる「非常脱出装置」を採用するなど、安全性にも配慮しています。

他にもAR技術で設置後のイメージを確認できるシミュレーションサービスを提供するなど、顧客の導入検討を支援する取り組みも特徴です。

再配達問題などを背景に、宅配ボックスの需要はますます高まっています。100年の歴史を持つ建築金物の雄、ダイケンは、その信頼性と技術力で、持続可能な物流と快適な暮らしの実現を支えています。

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