【介護テック銘柄】見守り、リハビリ、DX支援領域に取り組む企業たち

カナミックネットワーク

世界でも類を見ないスピードで進む、日本の超高齢社会。介護サービスの需要が増大し続ける一方で、現場を支える人材の不足は深刻化の一途をたどっています。

この構造的な課題を解決する鍵として、テクノロジーの力で介護の質と効率を高める「介護テック」への期待が、今まさに高まっています。

この潮流の中で、介護ベッドなどのハードウェア自体の革新で応える企業。AIやセンサーで利用者の状態を「見える化」し、予測する企業。地域全体の情報を繋ぐクラウドプラットフォームを構築する企業。そして、人とロボットの融合で身体機能に働きかける、最先端技術で挑む企業も登場しています。

本記事では、こうした多様なアプローチで超高齢社会の課題に挑む企業群に焦点を当て、各社の戦略と強みを紹介していきます。

寝具メーカーの老舗から介護テックへ「フランスベッドホールディングス」

フランスベッドホールディングスは、長年の歴史を持つ寝具メーカーとしての顔を持つ一方、その事業の核を「メディカルサービス事業」、特にシルバービジネスへと大きくシフトさせています。

同社の強みは、1983年に日本で初めて療養ベッドのレンタルサービスを開始したパイオニアとしての実績と信頼性にあります。製品の開発・製造からレンタル、アフターフォローまでを一貫して手掛けることで、現場のニーズを捉えた製品開発を行っています。

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深刻化する介護人材不足と高齢化の進展という社会課題に対し、近年では、ものづくりの力と介護現場の知見を活かし、介護テック製品の開発に注力しています。

利用者の体動を検知する「見守りセンサー搭載ベッド」や、介護者の負担を大幅に軽減する「自動寝返り支援ベッド」など、IoTやAIを活用した製品群は、介護現場の生産性向上に直接貢献。その技術力は、アジアの高齢者ケアに関するアワードで最優秀賞を受賞するなど、外部からも高く評価されています。

同社は、介護保険制度以外のサービスとして、家具・家電レンタルなどを強化しており、収益源の多角化と、製品の再利用を促す循環型経済への貢献を目指しています。

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コストパフォーマンスに優れる医療・介護用ベッド「プラッツ」

プラッツは、「高品質」「高機能」「低価格」をテーマに、医療・介護用ベッドの製造・販売を手掛ける専門メーカーです。創業以来、コストパフォーマンスに優れた製品を提供し、より良い介護環境の実現への貢献を目指しています。

同社の強みは、利用者と介護者、双方の視点に立った製品開発力にあります。例えば、誤嚥リスクの低減をサポートする機能など、医学的知見を取り入れて利用者の安全と快適性を追求。同時に、「ニーパロ+」のような周辺機器は、介護者の身体的負担の軽減に繋がります。

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これらの製品は、ベトナムの自社工場における徹底した品質管理と、低コストな生産体制がこれを支えます。これにより、「高品質」と「低価格」の両立を目指しており、在宅介護向けの福祉用具流通市場において、同社は約25%の市場シェアを有しています。

国内では、安定した在宅介護市場を基盤としつつ、医療・高齢者施設市場への展開を強化。さらに、急速な高齢化が進む中国を中心とした海外市場への展開にも注力しています。

日本の高齢化社会を支えてきた実績とノウハウを武器に、プラッツは国内の新たな市場、そして世界の介護ニーズに応える挑戦を続けています。

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ものづくり起点で介護の現場に貢献する「幸和製作所」

幸和製作所は、シルバーカーや歩行車といった歩行補助製品を主力とする、介護・福祉用具の専門メーカーです。同社は、AIやIoTといったデジタル技術とは一線を画し、ものづくりの現場から生まれる独自の技術革新とデザインの力で、高齢者の暮らしの質向上に取り組んでいます。

同社の姿勢を象徴するのは、新型歩行車「ジスタ/Zista」です。この製品は、駐車ブレーキの操作を不要にするという独自の機構を搭載。利用者の操作ミスによる事故のリスクを低減し、安全性と簡便な操作性を両立させています。

これは、ハードウェアの工夫によって、介護現場の課題を解決するアプローチと言えるでしょう。

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また、デザイン面からの革新にも注力。2024年に立ち上げた新ブランド「AURULA(アウルラ)」は、従来の福祉用具が持つ「医療機器的」なイメージを払拭し、日常生活に自然に溶け込む「生活道具」としての価値を提案。

利用者が前向きな気持ちで製品を使えるよう、デザインや質感、直感的な操作性が追求されています。

介護テック市場が注目される中で、幸和製作所は最先端のデジタル技術とは異なる、ものづくり起点の技術とデザイン思想を事業の特色としています。

>> 幸和製作所の企業情報

介護・医療機関向けのインフラを目指す「カナミックネットワーク」

カナミックネットワークは、医療・介護・健康・子育てといったライフステージ全体を支えるヘルスケアプラットフォームを構築する企業です。

超高齢社会という日本の大きな課題に対し、同社は独自のクラウドサービスでソリューションを提供しています。

事業の中核をなすのが、多職種間連携を可能にする「カナミッククラウドサービス」。これは、単なる介護事業所向けの業務支援ツールに留まらず、地方自治体や医療機関、介護事業者が情報を共有し連携するための社会インフラとしての役割を担います。

国の政策と密接に連携したシステム開発が特徴で、厚生労働省の特定の算定要件に対応する唯一の民間システムとして採択されるなど、公的な信頼性の高さが大きな強みです。

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同社の介護テックは、現場の業務効率化への大きな貢献が特徴です。

例えば、訪問介護員がスマートフォンで記録を完結できるアプリは、ペーパーレス化を推進し、大幅な業務時間削減に繋がったという報告もあります。また、多様なIoTセンサーとの連携により、介護現場のDXをさらに加速させます。

さらに、同社はフィットネスジムの運営も手掛け、そこで得られるヘルスケアデータとITサービスを融合させるというユニークな取り組みも開始しました。M&Aを通じてシンガポールにも拠点を築き、ASEAN市場への展開を本格化するなど、その事業領域は国内に留まりません。

日本の約3分の1の地域に導入されている顧客基盤を基に、カナミックネットワークは「地域包括ケア」で重要とされる仕組みをテクノロジーで支えています。

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"サイバニクス技術"で介護の未来を創る「CYBERDYNE」

CYBERDYNEは、「人」とAIやロボットを融合させる独自の「サイバニクス技術」を核として、医療、介護、生活分野に革新をもたらすことを目指す研究開発型企業です。

同社は、新たな産業領域として「サイバニクス産業」の創出を掲げ、人とテクノロジーが共生する社会の実現を追求しています。

その技術を象徴するのが、世界初の装着型サイボーグとして知られる「HAL®」。HAL®は、人が身体を動かそうとする際に脳から送られる生体電位信号を読み取り、装着者の意図に合わせた動作のアシストが可能です。

これにより、単なる動作補助に留まらず、脳・神経系の機能改善や再生を促す「サイバニクス治療」という新たなアプローチを確立しました。その有効性と安全性は、米国FDAや欧州の医療機器認証など、国際的な規制当局からも認められています。

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介護分野においては、「HAL®腰タイプ」が介護者の身体的負担を軽減し、労働災害リスクの低減に貢献します。また、マレーシアの国立リハビリセンターへの大規模導入や、ウクライナの復興支援に活用されるなど、その技術はグローバルに展開されています。

また、CYBERDYNEの事業はHAL®に留まりません。

医療機器認証を取得した超小型バイタルセンサー「Cyvis®」や、X線不要で血管を高精細に可視化する光音響イメージング装置「Acoustic X」など、予防・診断領域にも技術を拡大。ライフステージ全体を支える包括的なヘルスケア・イノベーションを志向しています。

>> 【注目決算】CYBERDYNE 海外収益が過半に 上半期2年ぶり最終黒字、投資が貢献

睡眠解析や複数センサーで高齢者を見守る「エコナビスタ」

エコナビスタは、「今と未来を見える化し 次世代の安心を創造する」という理念のもと、睡眠データ解析技術を核とした介護テックソリューションを提供する企業です。同社は、超高齢社会が抱える課題に対し、独自のAI技術で「予測する介護」という新たな価値を提案します。

事業の中核をなすのは、高齢者施設向けの見守りシステム「ライフリズムナビ®+Dr.」。このサービスは、ベッドや室内に設置したセンサーで利用者の心拍・呼吸・睡眠深度といった詳細な生体データを24時間収集します。

同システムは単なる見守りに留まらず、蓄積されたビッグデータを独自のAIが解析し、健康状態の変化の予兆を捉えることを可能にします。

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エコナビスタの強みは、高度なデータ解析技術にあります。認知症の予兆検知や、特許を取得した「お看取りアラート」機能、および環境の変化を検知して熱中症予防を支援する機能など、科学的根拠に基づいたケアを支援するユニークな機能を開発。

同社は、これらに必要なハードウェアとソフトウェアを一体で自社開発することで、迅速な機能改善と柔軟なサービス提供を行っています。

このSaaS型サービスは、手厚いカスタマーサクセスにも支えられ、低い解約率(0.003%)を維持しています。また、多様なセンサーや介護記録システムと連携できるオープンな設計も、導入施設にとって大きなメリットです。

同社は、独自のAI技術、蓄積されたデータ、そして複数の特許を基に、介護現場の生産性向上と、利用者の「次世代の安心」の創造に貢献することを目指しています。

>> ICTを活用した高齢者見守りサービスで高収益「エコナビスタ」が新規上場へ