世界のEC企業トップ5の流通総額を比較

楽天グループ

今回のテーマは、世界のEコマース企業の流通総額についてです。

現代経済において「Eコマース」というジャンルが重要のは間違いなく、今まさに人々の「買う」という行為がものすごい勢いでリアル店舗からオンライン上に移行していっています(参考)。

上の図は、まだ規模の大きいウォルマートを除いた、米国小売チェーンとアマゾンの売上推移の比較である。ここ10年くらいでAmazonが名だたる大手小売チェーンを一気にごぼう抜きしていったことがわかる。先日、Amazonはホールフーズ・マーケットの買収を発表したが、つい10年ちょっと前までは両社はそう変わらない規模だった。

ものすごい勢いで、消費はオンラインに移行している。なので、ECについてもっと知りたいなあと思った。

ECのトッププレイヤーはどこか

さて、今現在、世界で最も大きなEコマースの事業者はどこだろう。Amazonとアリババは間違いない。eBay、JD.comあたりもでかい。

比較対象として日本企業もチェックしたい。楽天、ヤフーショッピング、スタートトゥデイあたりが良いだろうか。

ググったら良い記事があった。

シェア伸ばすアマゾン、落とすアリババ。数字で見る1.7兆ドルのグローバルEC市場の今

この記事によれば、世界1兆7400億ドルのEコマースの市場規模のうち、26.6%がアリババ、13%がAmazon、4.5%がeBay、3.8%がJD.com、1.5%が楽天になっている。

その他、アップル、シャオミ、デル、Suning、ウォルマートを加えたトップテンだけで世界のほぼ半分のシェアを握っているという内容だ。

それでは今回は世界のトップ5であるアリババ、Amazon、eBay、JD.com、楽天を見ればよしとしておこう。まずは1社ずつ見てみる。

アリババグループ

まずはトップのアリババから。

アリババグループはタオバオ、Tmallという二つの巨大マーケットプレイスを有している。

全体の年間流通総額は3.7兆元(およそ62兆円)に達し、そのうち3兆元(およそ50兆円)がモバイル経由。全体の流通額は4年で3倍に増加し、モバイルの割合がすごい勢いで上昇していることがわかる。

Amazon

Amazonに関しては、直販+マーケットプレイスというビジネスモデルなので、直販売上高とマーケットプレイスの流通額を足し合わせれば良い。2016年のForm 10-Kを見たところ、それぞれの売上はわかったが、マーケットプレイスの流通額はわからなかった。検索すると、ナスダックのWebページ(Amazon Vs. Alibaba: GMV, Revenue & EBITDA)に、2012-2015年のAmazonのGMV(流通総額)が掲載されていたのでこれを利用しよう。

2014年の売上内訳と、上のナスダックのページから計算すると、Amazonマーケットプレイスのテイクレート(売上高/GMV)は2014年に12%、2015年は9%であった。そのため、2016年の流通額はテイクレート=10%として推計することとした。

2016年のAmazon流通総額は少なくとも3000億ドル(30兆円ほど)に達していると思われる。だいたいアリババの半分程度の規模ということで、冒頭記事の数字(世界ECの26.6%がアリババ、13%がAmazon)とも一致している。

eBay

続いて、Eコマースの最初の覇者であるeBayの流通総額の推移。

2013年まで伸びていたが、年間800億ドル(8兆円ほど)を上限に成長がストップしてしまったようだ。規模としてはAmazonの4分の1程度、アリババの8分の1ということになる。

JD.com

4つ目として、中国で2番目に大きな規模のECプラットフォームを展開するJD.comの流通総額の推移。

2012年には1000億元もなかったのが、2016年には6000億元(10兆円ほど)以上と急激な成長を見せている。しかし、アリババが3.7兆元なので規模としては6分の1程度。ということは、eBayの規模をもうすでに超えたことになる。

楽天

最後に、我らが(?)楽天。ホームページからはあまり昔のデータを集められなかったため、直近の2年だけ。

流通総額は2016年に3兆円を突破。だいたいAmazonの10分の1程度の規模ということか。

トップ5プレイヤーの比較

だいたい、トップ5社の規模感についてはつかめてきた。最後に5社の流通総額を円ベースで比較するグラフを作りたい。為替は1中華人民元=16.73円、1ドル=113.41円として換算。

こうしてみると、アリババの規模は圧巻だ。何と言ってもAmazon二つ分である。中国の2位がeBayを上回る規模になったというのも時代の流れを感じる。

日本最大のEコマースである楽天ですら世界とこれだけの差がある、というのはショッキングではある。ちなみに日本のAmazonは流通総額1.8兆円くらいだそう(参考)。

楽天を1として比較すると、eBayは2.7倍、JD.comは3.3倍、Amazonは10倍、アリババは20倍の規模ということになる。

日本のGDPは5兆ドル、中国は12兆ドル、米国は18兆ドルと言われていることを考えると、正直これはちょっと差がつきすぎではと思ってしまう。日本のEC化率が遅れているのだろうか?

日本、米国、中国のEC化率の比較

探していたらそれっぽいページがあった。

Retail Sales Worldwide Will Top $22 Trillion This Year

2014年の記事ということで若干古いデータだが、2018年までの予測が掲載されている。

eMarketerより引用)

こうしてみると、中国のEC化率が極めて高いことがわかる。日本は5%前後。米国は7%前後、中国は10%を大きく超えている計算。米国の2倍くらいか。

日・米・中だけをとってグラフにしてみよう。

グラフにすると一目瞭然である。日本と米国のEC化率はそれほど変わらないが、日本と中国の間には2倍以上の差が開いている。

現状、アリババやJD.comは中国国内の収益がほとんどであるが、ただでさえ人口とGDPに大きな差があるのに、EC化率でも倍以上の差が開いている。このことがアリババと楽天の差にそのままつながっていると言える。

一方で、AmazonやeBayと楽天の差は、「国内GDP x EC化率」の差だけとは言い難い。前述したように、Amazonは日本だけでも1.8兆円もの流通額を持っているのだ。これは「グローバル化」の差と言っていいと思う。

日本では、今後もEC化率が進んでいくだろうから、楽天やスタートトゥデイなどの企業はまだまだ伸びていくとは思うが、それだけではアリババやAmazonとの差を埋めることはできない(むしろ侵食される可能性も十分にある)。それを防いで、なおかつ勝っていくためには何が必要なんだろう。


とりあえず、次回は国内EC企業同士の比較を行ってみたい。