小売りや外食業で、カーボンニュートラルを実現した店舗を構築する動きが広がる。ホームセンター大手のカインズは100%の電気を再生可能エネルギーで調達する新店を開く計画で、ステーキ店「いきなり!ステーキ」運営のペッパーフードサービスも21店舗を切り替える。
またセブン&アイ・ホールディングスは再生可能エネを安定調達できる体制の整備を進める。消費者に身近な店舗でも、CO2排出量の実質ゼロに向けた取り組みが加速している。
Value(なぜ重要?)
小売り・外食業界では、店内照明や冷暖房、調理機械を稼働させるなど店舗運営のためにたくさんの電力が必要になる。小売り最大手のイオンだけで、電気使用量は日本全体の1%弱に上る。
電力消費によるCO2排出量が、各社の事業全体の排出量の大半を占めるケースが多い。セブン&アイはグループ全体の排出量の9割以上が電気の利用によるものだ。
Detail(詳しい内容)
カインズが栃木県壬生町で18日に開店する店舗は、森林の間伐材を使うバイオマス燃料や、太陽光による発電で全ての電力をまかなう。再生可能エネを供給する地元の電力小売りと契約し、年間消費電力の22%は店舗屋上に設置する400枚の太陽光パネルから調達する計画だ。
ペッパーフードサービスも「いきなり!ステーキ」の
国内21店舗で利用する電力について、再生可能エネ由来の電気に変更する方針だ。2021年12月期末時点の同チェーン店舗数は227店で、全体の9%にあたる。この取り組みによって、CO2排出量を年400トン削減できる見通しだ。
セブン&アイはNTTのエネルギー子会社と連携し、専用の太陽光発電所から、一部店舗が長期的に電力供給を受ける仕組みを2021年に構築した。電力需要の大きいセブン&アイが長期契約することで、供給側は新たな再生可能エネの電源設備への投資がしやすくなる。
その上で両社は2日、この電力供給体制の全国拡大を視野に、協業を進める意向を表明している。セブン&アイはグループ全体で、2050年までのカーボンユートラル達成を目指す。
Trend(市場動向)
環境に配慮した取り組みを実施する企業の商品やサービスを優先的に利用する消費者が欧米を中心に増えており、世界の小売業なども再生可能エネ活用などを積極化している。
スウェーデンの家具大手IKEAは2030年までに、自社や取引先を含むサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成する目標を掲げる。グループで2009年から25億ユーロ(約3500億円)を太陽光や風力エネルギー領域に投じており、今後も40億ユーロを追加で投資する。
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