株式市場の主役がAIや半導体に移って久しいなか、創業70年を超えるスプレー潤滑剤の会社が成長株のような決算を発表しました。WD-40が発表した2026年3〜5月期決算は、売上高が前年比24%増、営業利益が同47%増。派手な新技術も新市場もない「1本の缶」が、なぜいまも伸び続けるのでしょうか。
決算説明会でスティーブ・ブラスCEOが口にしたのは、「より速く学び、より速く成長する」という社内の合言葉でした。世界中の販売チームが成功事例を交換し、売れた型をすぐ別の市場へ横展開する。70年物の製品を、いまも新製品のように売り続ける仕組みが背後にあります。
その象徴が、錆取りや電子機器の洗浄など用途ごとに特化した派生ブランド「WD-40 Specialist」です。売上の9割はわずか10カ国で生まれており、裏を返せば、看板製品で築いた販売網に載せて広げられる余地が世界中に残っている計算になります。同社が次の成長の柱と位置づける製品群です。

もっとも、原材料の多くを石油に頼る同社にとって、足元の環境は追い風ばかりではありません。この缶は何によって売れ、その利益はどう守られているのか。そして経営陣が今回、株主と新たに交わした「約束」とは何なのでしょうか。