AIが需要を牽引する「光半導体」:世界で戦う日本の関連銘柄

デクセリアルズ

生成AIの普及や脱炭素社会への移行は、世界の産業構造を根底から変えつつあります。

この巨大な変革を陰で支える基盤技術こそ、光と電子を操り、情報を超高速で伝達する「光半導体」です。
その役割は、データセンターの進化や次世代通信網の構築に留まりません。
自動運転やXR、最先端医療といった未来を形作る多様な領域で、今や不可欠な存在となっています。

本記事では、この成長市場で独自の技術を武器に世界で戦う、国内企業5社をリストとしてご紹介します。
個々の企業の詳細な戦略分析や最新の動向については、Strainerの特集記事開示検索機能をご活用ください。

光技術のパイオニアが未知未踏を探求「浜松ホトニクス」

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1953年の創業以来、光技術のパイオニアとして業界をリードする浜松ホトニクスは、光電子増倍管や光半導体素子を主力製品としています。
同社は、光の可能性を追求し、科学技術の進歩と人類の幸福に貢献することを経営理念に掲げています。

同社の最大の強みは、「光の未知未踏領域の追求」という理念の下 、基礎研究から製品開発、製造、販売までを一貫して手掛ける体制にあります。
この体制により、医療、産業、学術といった多岐にわたる分野で、顧客の高度なニーズに応えるカスタム製品を供給し、高い競争優位性を確立してきました。

今後は、光技術を通じた社会・環境問題の解決への貢献が、同社の新たな事業機会となる可能性があります。
特に、EV向けバッテリーの品質検査や、環境計測・分析分野での需要拡大が見込まれるでしょう。
一方で、同社の事業は世界経済や半導体市況の変動から影響を受けやすい側面があります。
事実、近年のEV市場の停滞は、関連製品の売上に影響を及ぼしました。
そのため、国際的なサプライチェーンの維持や、事業を展開する各国の政治・経済情勢といった外部環境のリスクを適切に管理していくことが、今後の持続的な成長に向けた重要な課題と言えるでしょう。

>>浜松ホトニクスの企業情報を見る

量子ドット技術で未来を照らす「QDレーザ」

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2006年に富士通研究所のスピンオフベンチャーとして設立されたQDレーザは、半導体レーザの一種である量子ドットレーザの量産化に成功している、世界でも他に類を見ない企業です。
同社はレーザデバイス事業と視覚情報デバイス事業を両輪とし、独自の半導体技術を基盤に、医療から産業、コンシューマー領域まで幅広い分野に革新的なソリューションを提供しています。

同社の競争優位性の源泉は、ナノサイズの半導体結晶である量子ドットを活性層に用いた独自のレーザ技術にあります。
この技術は、従来の半導体レーザと比較して、温度変化に強く、安定した性能を維持できる点が大きな特徴です。
この強みを活かし、シリコンフォトニクスなどの精密機器向けレーザや、同社独自の網膜走査型ディスプレイ「RETISSA」を開発。
このディスプレイは、視力に依存せず網膜に直接映像を投影するVISIRIUM®テクノロジーを搭載しており 、新たな視覚支援の可能性を拓いています。

将来的には、自動運転に不可欠なLiDAR(光による検知と測距) や、次世代のインターフェースとして期待されるXR(クロスリアリティ)デバイス など、成長市場への技術応用が期待されます。
一方で、主要顧客への依存度の高さは課題と言えます。
特に、網膜投影製品のような新規市場の製品は前例がないため、需要を正確に予測することが難しく、販売が計画通りに進まない可能性といった不確実性が、事業運営上のリスク要因として認識されています。

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高機能材料でエレクトロニクスを進化させる「デクセリアルズ」

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2012年、旧ソニーケミカル株式会社の事業を基盤として設立されたデクセリアルズは、光学材料や電子材料の製造・販売を主要事業としています。
同社の主力製品である異方性導電膜(ACF)は1977年に開発されて以来、スマートフォンなどの中小型フレキシブルOLEDパネルで広く採用され、世界市場で高いシェアを誇ります。
また、2007年から製造を開始した光学弾性樹脂(SVR)も、同社の重要な製品の一つとして事業を支えています。

同社の競争優位性は、外部からの分析や模倣が難しい高機能材料と、その性能を最大限引き出すプロセスを一体化したソリューション提供力にあります。
光半導体関連では、連結子会社のデクセリアルズフォトニクスソリューションズ株式会社がマイクロデバイスなどを手掛けています。
近年、スマートフォンや車載ディスプレイの進化に伴い、精密な接続材料や反射防止機能への需要が高まっており、これらの技術トレンドは同社の事業機会を広げています。

今後は、生成AIの普及を背景に需要が伸びるフォトニクス領域や、成長著しい自動車分野が事業成長を牽引すると見込まれます。
一方で、売上高はコンシューマーIT関連製品への依存度が高い側面があり、主要顧客の戦略変更や市場の需要変動に影響を受けやすい点はリスクとして認識されています。
そのため、事業ポートフォリオの変革を通じ、変化の激しい事業環境に左右されない経営基盤を構築していくことが今後の課題です。

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光半導体の能力を解き放つ通信インフラのパイオニア「フジクラ」

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1910年に設立されたフジクラ(当時の社名は藤倉電線株式会社)は、情報通信、エレクトロニクス、自動車、エネルギー、不動産の5分野で事業を展開する総合メーカーです。
特に、光半導体が生み出す光信号を伝送する光通信システムにおいて、基幹部品となる光ファイバや光ケーブル、光部品を供給し、世界の通信インフラ構築に貢献しています。

同社の競争優位性の核は、光半導体から放たれた膨大な光信号を、低損失かつ高密度で伝送する最先端の光ファイバ技術です。
AIやクラウドの普及を背景に、データセンターの需要が急拡大しています。
その中で、同社の超高密度・細径光ファイバケーブル「SWR®/WTC®」は、限られたスペースでの高効率なデータ伝送を可能にし、光半導体の性能を最大限に引き出す上で不可欠な役割を担っています。

今後、次世代通信規格の導入やデータセンターの進化に伴い、光通信関連技術はさらなる高度化が見込まれます。
この技術革新は、より高性能な伝送路への需要を高めるため、フジクラにとって事業機会の拡大につながる可能性があります。
一方で、巨大なインフラ投資は世界経済の動向に左右されやすく、原材料価格の変動や特定地域(中国など)の市場動向は、事業運営上のリスクとして注視が必要です。

▼フジクラの歴史と成長の背景を詳しく知る
今年最も騰がった銘柄「フジクラ」高度情報化社会でさらなる成長なるか?

光半導体システムを支える測定技術の雄「santec Holdings」

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1979年に設立されたsantec Holdingsは、光通信ネットワークを支える光部品や光測定器を主力事業としています。
同社の製品群は、最先端の光半導体デバイスを用いたシステムの開発・評価に不可欠な役割を担っています。
2022年から持株会社体制への移行を進め、2023年には現社名へ変更。
近年はM&Aも積極的に活用し、事業領域の多角化と成長を加速させています。

同社は「Photonics Pioneer(光の先駆者)」として独創的な光技術の革新を掲げており、その高度な光技術力は同社の競争力の一因です。
特に、光半導体レーザの性能評価に用いられる波長可変光源は、世界でもトップクラスの技術を誇ります。
また、JGR Optics社(現Santec Canada Corporation)やOptoTest社(現Santec California Corporation)の子会社化を通じて、光測定器関連事業における評価ソリューションを拡充し、市場における競争力強化を図っています。

将来的には、AIの普及に伴うデータセンターの高性能化が、より高度な光半導体と、それを評価する同社の測定器需要を押し上げるでしょう。
また、医療分野では、光半導体技術を応用した眼科向けOCT(光干渉断層計)用の光源開発も進めており、新たな成長エンジンとして期待されます。
このように事業の多角化を進める一方で、主要事業が光通信業界向け製品販売に大きく依存しているため、通信設備投資の急激な変動が業績に悪影響を及ぼす可能性がある点は、引き続き注視すべきリスクと考えられます。

>>santec Holdingsの企業情報を見る

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本記事では、光半導体に関連する企業をリストアップしてご紹介しました。
しかし、個々の企業の真の価値や将来性を見抜くためには、表面的な情報だけでは不十分です。

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