社会課題解決から地方創生まで!進化するベンチャーキャピタル銘柄を解説
政府が推進する「新しい資本主義」の中核として、イノベーション創出を担うベンチャーキャピタル(VC)の役割はますます重要性を増しています。
かつてのスタートアップ投資という枠組みを超え、近年ではVCの戦略も大きく進化を遂げました。
社会課題の解決を目指すインパクト投資や、不動産・インフラといった多様な資産を組み入れたオルタナティブ投資、そして地域経済の活性化を促す地方創生ファンドなど、そのアプローチは多岐にわたります。
こうした潮流は、投資家にとっても新たな選択肢と可能性を提示していると言えるでしょう。
本記事では、このように多様化するVC業界において、それぞれ特色ある戦略で独自のポジションを築く上場企業をピックアップ。
各社の事業モデルと今後の展望を掘り下げていきます。
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1973年設立のジャフコ グループは、国内ベンチャーキャピタル業界の草分け的な存在です。
長年の歴史で培った豊富な投資経験と広範なネットワークを基盤に、ファンド運用事業を展開しています。
その投資対象は国内のみならず、米国やアジアなど海外の有望な未上場企業にも及び、グローバルな視点での投資活動が特徴と言えるでしょう。
同社は「厳選集中投資」を基本方針に掲げ、将来性のある企業を見極め、集中的にリソースを投下しています。
また、IPOだけでなくM&Aなども活用することでEXIT戦略を多様化し、特定の市場環境に依存しない収益機会を追求しています。
さらに、ベンチャー投資とバイアウト投資の連携によるシナジー創出も目指しており、投資後の積極的な経営関与を通じて投資先の企業価値向上を図る体制を構築しています。
これまでの実績とブランド力は、今後の安定的なファンドサイズ拡大に向けた同社の強みと考えられます。
しかしその一方で、事業は国内外の株式市場や新規上場市場の動向に大きく左右されるため、市況の変動が収益の振れ幅を大きくするリスク要因として存在します。
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2016年に上場した旧マーキュリアインベストメントを前身とし、2021年に持株会社体制へと移行しました。
マーキュリアホールディングスは事業投資と資産投資、2つの領域でファンドを運用するビジネスモデルを展開しています。
事業投資ではバイアウト投資や成長投資を、資産投資では不動産や航空機、再生可能エネルギー分野への投資を手掛けており、多様なアセットクラスへの分散投資が特徴です。
同社は、国や地域、既存のビジネスの枠組みにとらわれずに挑戦する「クロスボーダー」をコンセプトとした投資運用を強みとしています。
香港上場の不動産投資信託(REIT)である「Spring REIT」の運営実績や、ベトナムでの不動産開発プロジェクトへの参画など、海外での事業展開を推進しています。
近年では、従来の投資戦略に加え、新たにマイノリティ投資を行う「ストラクチャード・エクイティ投資戦略」を立ち上げるなど、事業領域の拡大を図っています。
同社はマルチストラテジーのファンド運用会社として、プライベート・エクイティ、インフラストラクチャー、不動産など多様なオルタナティブ資産を投資対象としています。
こうした分散投資は、特定の市場環境に依存しない収益基盤の構築に資すると考えられます。
ただし、グローバルに事業を展開しているため、世界経済の動向や地政学リスク、為替相場の変動などが経営に影響を及ぼす可能性があります。
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1981年設立の日本アジア投資は、国内外の有望企業への投資に加え、再生可能エネルギーやスマートアグリ、ヘルスケアといった多様なプロジェクトへの投資を事業の柱としています。
特に、メガソーラー発電や障がい者グループホーム、植物工場など、社会課題の解決に貢献するプロジェクト投資に注力している点が大きな特徴です。
同社は、ベンチャー企業へのエクイティ投資に加え、自社グループでプロジェクトを運営することで、投資収益の最大化を図っています。
このプロジェクト投資は、社会的な意義と経済的なリターンの両立を目指すものであり、同社の競争優位性の源泉となっています。
長年にわたるアジア地域での投資実績も、同社の強みの一つです。
社会課題解決型の事業領域は、今後の大きな成長が期待される分野です。
しかし、植物工場事業のように、営業活動から生じる損益が継続してマイナスとなっており、黒字化に時間を要するケースも見られます。
また、プライベートエクイティ投資事業は、株式市場の変動から影響を受けやすいという特性も持っています。
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1998年に設立されたフューチャーベンチャーキャピタルは、「地方創生」をテーマにしたファンド運営に特化している独立系のベンチャーキャピタルです。全国各地の地方自治体や地域金融機関と連携し、地域経済の活性化に貢献する「地方創生ファンド」を数多く組成・運営しているのが最大の特徴です。
同社のビジネスモデルは、地域に根差したベンチャー企業を発掘・育成し、地域経済の活性化や産業基盤の強化を目指すものです。
例えば、盛岡市や岩手県の金融機関などと共同で「Tohokuライフサイエンス・インパクト投資事業有限責任組合」を設立しました。
このファンドは、その名称からも、地域の課題解決と経済的リターンの両立を目指すインパクト投資の一例であると考えられます。
地方創生という社会貢献性の高いテーマに特化した事業モデルは、一般的な投資会社とは一線を画す独自のポジショニングを可能にしています。
一方で、同社の収益はファンドからの管理報酬が主体であり、投資先企業の売却益や減損などが業績に与える影響が大きくなる傾向にあります。
そのため、既存ファンドの償還が進む中、継続的な新規ファンドの設立が今後の成長の鍵となるでしょう。