【防災DX銘柄】衛星・AIが鍵?"国土強靭化"を追い風に成長する企業たち

ミライト・ワン

激甚化・頻発化する自然災害。国土強靭化が国家的な課題となる日本において、従来の防災対策に加え、デジタル技術で災害に備え、被害を最小化する「防災DX」の重要性が急速に高まっています。

防災DX市場では、インフラ構築の知見を持つ総合建設・コンサル企業、特定の防災分野で深い専門性を持つメーカー、そして気象や衛星などの独自データをAIで解析する情報サービス企業など、そのアプローチは多岐にわたります。

本記事では、こうした個性豊かな防災DXプレイヤーに焦点を当て、各社の戦略と強みを紹介していきます。

防災のワンストップサービスを展開する「ミライト・ワン」

ミライト・ワンは、祖業である通信建設事業の枠を超え、多様な社会インフラ領域の課題解決に挑む企業グループへと進化を遂げています。

特に、激甚化する自然災害への対応として、デジタル技術を駆使した「防災DX」を重点分野と位置づけ、「ICT分野」「環境・社会イノベーション事業」など、グループの総合力を結集した独自のソリューションを展開しています。

同社の強みは、M&Aを通じて一体化したグループ企業それぞれの専門性を融合させる「三位一体アプローチ」にあります。

ミライト・ワン本体の「実装力」、西武建設の「施工力」、そして国際航業の「企画・コンサル力」。この3つの力を組み合わせることで、企画から保守運用までを一貫して手掛ける「フルバリュー型モデル」を構築。防災DXの領域では、この総合力が活かされています。

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災害の事前準備から発生時の対応、事後の復旧までを網羅するワンストップサービスを展開。

例えば、ドローンを活用したインフラ点検や被災状況調査、IoTセンサーによって道路冠水をリアルタイムで検知するシステム「MaBeeeML冠水センサシステム」など、ハードとソフトの両面から実用的なソリューションを提供しています。

MaBeeeML冠水センサシステムは、デジタル庁の「防災DXサービスマップ」に掲載されたり、ドローンによる捜索活動支援システムがジャパンレジリエンスアワード(強靭化大賞)で最優秀賞を受賞したりと、公的な評価も得ています。

同社は、過去には大型案件のマネジメントに課題を残したものの、これを教訓にリスク管理体制が強化されています。

通信建設で培った現場力、国際航業が持つ高度な空間情報技術、そして西武建設の総合的な施工力。これらのアセットを組み合わせ、同社は防災・減災、国土強靭化という巨大な市場で、独自のポジションを目指しています。

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火災分野のリーディングカンパニーから災害全般へ「能美防災」

能美防災株式会社は、1924年の創業以来、100年以上にわたり日本の安全を支えてきた総合防災設備のリーディングカンパニーです。

同社は今、従来の「火災」に限定されない、地震や水害といった「災害全般」に対応するため、デジタル技術を駆使した「防災DX」を推進し、新たな事業領域の開拓を加速させています。

その象徴的な取り組みが、クラウドやAI、VRといった先進技術を活用した新サービス開発にあります。

例えば、クラウドサービス「TASKis(タスキス)」は、施設内で発生するトラブル情報を一元管理し、緊急時の迅速な初動対応を支援します。

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また、住民が主体となって避難所を開設・運営するためのWebアプリ「N-HOPS」や、リアルな災害を体験できる「火災臨場体験VR」など、ソフト・サービス面でのソリューションが拡充されています。

これらの新しい挑戦を支えるのが、研究開発から製造、施工、メンテナンスまでを自社で完結させる一貫体制と、国内No.1防災メーカーとしての長年の信頼です。

火災報知設備や消火設備といった既存の主力事業が安定した基盤を形成する一方、AIによる煙検知システムや、環境に配慮したPFASフリーの泡消火薬剤など、社会の要請に応える技術開発にも注力しています。

100年の歴史で培った防災の知見と、最新のデジタル技術を融合させる同社。「防災事業のパイオニア」は、未来の安心・安全をかたちにするための変革を続けています。

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SAR衛星を活用した観測ソリューション「オリエンタルコンサルタンツ」

オリエンタルコンサルタンツホールディングスは、長年国内外の社会インフラ整備を支えてきた総合建設コンサルタントです。

近年、激甚化する自然災害という社会課題に対し、同社はこれまで培ってきた知見と、AIや衛星技術といった最先端のテクノロジーを融合させた「防災DX」事業を強力に推進しています。

同社の防災DXソリューションは、災害の予防から発生時の対応、復旧まで、あらゆるフェーズを網羅している点が特徴。

例えば、安価なセンサーでリアルタイムに浸水状況を把握するシステムや、SAR衛星のデータを活用して広範囲の土砂移動量をモニタリングする技術が開発されています。これにより、災害の兆候を早期に捉え、「予防保全」への貢献が期待されます。

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また、AIを用いた交通事故リスクのオンライン予測や、住民が水害を「自分ごと」として捉えるための「動くハザードマップ」など、ソフト面でのユニークな取り組みも推進。これらの技術は、NECやエクサウィザーズといった異業種のパートナーとの連携から生まれています。

こうした取り組みは、ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)で7年連続の受賞(グランプリや最優秀賞を含む)や、国土交通省のインフラDX大賞受賞など、外部からの客観的な評価にも繋がっています。

新たな社会価値の創造を目指す同社は、社会インフラに関する深い知見と、オープンイノベーションによる先進的な技術開発力を両輪に、安全・安心な社会の実現に貢献し続けています。

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地盤情報の3次元化とAI活用による自動化「応用地質」

応用地質株式会社は、地質・地盤に関する高度な専門知識を核とする、地球科学のエキスパート企業です。

同社は今、長年培ってきた現場技術とコンサルティング力に、AIやICTといったデジタル技術を掛け合わせることで、防災・インフラ分野におけるDXを強力に推進。その取り組みは外部からも高く評価され、「経済産業省が選ぶ「DX銘柄」にも選定されています

同社の防災DX戦略の重要な要素の一つが、「地盤情報の3次元化」技術です。

同技術によって、従来は専門家の経験に頼ることが多かった地中の状況を、立体的に可視化。建設業界で標準となりつつあるBIM/CIMの地盤分野に対応するもので、同社は国内外で事業を展開しています。

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同社では、AIを用いて土砂災害の危険箇所を自動で抽出するハザードマッピングや、身近な道路インフラに組み込んだIoTセンサーで冠水をリアルタイムに検知するシステムなどが開発されています。災害の予測から監視、被害軽減まで、多角的なアプローチで社会の安全・安心に貢献します。

また、こうしたソリューション(ソフト)だけでなく、地震計や各種センサーといったモニタリング機器(ハード)を自社で開発・製造できる点も、応用地質の強みです。

自然災害が激甚化・頻発化する現代において、応用地質は、地球科学の深い知見とデジタル技術を融合させた独自の防災DXソリューションを通じて、レジリエントな社会基盤の構築に貢献することを目指しています。

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世界最大規模の気象データベースをもつ「ウェザーニューズ」

ウェザーニューズは、気候変動という大きな社会課題に挑む気象情報会社です。

同社は、独自の観測インフラとテクノロジーを駆使したWxTech™(ウェザーテック)サービスを通じて、企業や自治体の防災対策や事業継続計画(BCP)を支援する「防災DX」を推進しています。

同社の競争優位性の源泉は、世界最大規模を誇る独自の気象データベースにあります。公的データに加え、全国に張り巡らせた独自の観測インフラ、そして日々寄せられる一般サポーターからの膨大なリアルタイム情報が統合されています。

このビッグデータを、AIや機械学習を駆使して解析することで、「天気予報精度No.1」と評価される高精度な予測が実現されています。

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この予測技術は、具体的な防災DXソリューションとして結実。「ウェザーニュース for business」では、災害時の拠点ごとの被害状況をリアルタイムで可視化し、企業の迅速な意思決定を支援します。

日本で初めて病院防災に気象データを活用するなど、専門性の高い領域へのサービス展開も特徴です。さらに、SNSを活用した対話型の災害情報基盤「防災チャットボット」は、自治体の住民避難支援などにも貢献しています

独自のデータ収集力と高精度な予測技術を両輪に、ウェザーニューズは単なる天気予報会社から、気象データを活用して社会の安全と企業の経済活動を支える、総合ソリューションプロバイダーへの進化を続けています。

>> 航路支援ではじまった気象テック企業「ウェザーニューズ」SaaS化で中小事業者向けにも拡大中

メディア運営から衛星データ活用への事業変革に挑む「INCLUSIVE」

INCLUSIVEは、従来のメディア事業から、地域創生・事業再生コンサルティングなどを含むブランドコンサルティング事業や、衛星データを活用した宇宙関連事業への変革に挑んでいます。

特に地方自治体が抱える防災や農業などの課題解決を支援するGovTech(行政DX)領域に注力。その取り組みを牽引するのが、子会社が持つ地球観測衛星データの解析ノウハウです。

その取り組みを牽引するのが、子会社が持つ地球観測衛星データの解析ノウハウです。

例えば、農業行政のDXを支援する「圃場DXサービス」は、従来は職員が目視で行っていた農地の作付け確認を、衛星データとAIによって自動化。

人的負担を大幅に削減できる点が評価され、導入自治体数は昨対比500%を超えるなど、驚異的なスピードでの拡大を記録しています

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防災分野においても、三菱電機などと連携し、災害発生時の被災状況を衛星データで迅速に把握するサービスの開発が進められています。また、デジタル庁が主導する「防災DX官民共創協議会」に参画するなど、国の防災政策と連携した事業展開が図られています。

会社全体としては、既存事業の不振などにより厳しい経営状況に直面しますが、同社は純粋持株会社体制への移行など、抜本的な経営改革を断行。将来の成長ドライバーとして「宇宙関連事業」を位置づけ、注力していく方針です。

>> 元ライブドアの営業部長が創業!「INCLUSIVE」東証マザーズに新規上場