「学び」から「キャリア形成」まで。個人・企業向けリスキリング関連銘柄

パーソルホールディングス

デジタルトランスフォーメーションの加速と、深刻化する労働力不足。

こうした大きな変化の波の中で、個人のスキルを再開発する「リスキリング」は、今や企業と個人の成長戦略に不可欠なテーマとなっています。しかし、多くの企業がその効果的な進め方や、学習者のモチベーション維持といった課題に直面しているのが現状です。

こうした課題に対し、独自のテクノロジーとアプローチで応える企業群が登場しています。数千に及ぶ豊富な学習コンテンツで多様なニーズに応える企業、AI技術で一人ひとりに最適な学びを届ける企業、生放送などの「双方向性」で学習の継続を支える企業、専門コーチが「できる」まで伴走する企業など、その戦略は多様化しています。

本記事では、こうした個性豊かなリスキリング支援企業に焦点を当て、各社の戦略と強みを紹介していきます。

4,500超のコンテンツで"できる"まで支援する「インソース」

インソースは、「働くを楽しくする」というビジョンのもと、社会人のための能力開発・リスキリング支援事業を展開する企業です。

政府がDX推進を掲げ、個人のキャリア自律への関心が高まる中、同社は独自の強みを活かし、リスキリング市場で事業を展開しています。

同社の特徴は、自社で開発・保有する4,500種類を超える日本最大級の研修コンテンツにあります。DX・ITスキルからキャリアデザインまで多岐にわたるラインナップで、多様化する個人・企業のニーズへのきめ細かな対応を可能にしています。

年間300本以上というペースで新たなコンテンツを開発し、常に最新の技術トレンドを反映させている点も強みです。

finboard

インソースのリスキリング支援は、単なる知識提供に留まらない点が特徴。「insource Reskilling」シリーズに代表されるように、講義と演習に加え、受講者の成果物に対する個別のフィードバックを重視。

「わかる」だけでなく、実務で「できる」レベルまで到達することを目標とした、徹底した実践主義を貫いています。

また、多様な学習スタイルへの対応力も強みの一つです。従来の講師派遣型研修や公開講座に加え、夜間に受講できる「ナイトセミナー」や動画教材など、多忙な社会人が学びやすい環境が整備されています。

豊富なコンテンツと実践的な支援体制を両輪に、同社は社会人教育市場において、個人と組織の成長を支援するサービスを提供しています。

>> リスキリング市場を攻略――インソースに学ぶ「教育サービス」の新戦略

「双方向の学び」でモチベーションの壁を破る「Schoo」

Schooは、「世の中から卒業をなくす」というミッションを掲げ、社会人のためのオンライン学習サービスを展開する企業です。

同社は、リスキリングが企業の成長に不可欠となる中で、多くの企業が直面する「学習者のモチベーション維持」という根深い課題に対し、独自のソリューションで応えています。

その事業の核心は、法人向け研修サービス「Schoo for Business」です。8,000本を超える豊富な動画コンテンツを自社で内製し、現代のビジネスパーソンに必要な学びを幅広く提供。リカーリング収益を基盤とするビジネスモデルを特徴とします。

finboard

Schooの特徴は、単なるeラーニングに留まらない「双方向性」にあります。毎日開催される生放送授業では、受講者がリアルタイムで講師に質問したり、他の受講者とコメントを交わすことが可能。

このコミュニティとしての機能が、孤独になりがちなオンライン学習におけるモチベーションの維持を助け、学びの継続を後押しする仕組みとなっています。

また、専門チームによるカスタマーサクセスにも力を入れています。顧客の課題に応じた提案や伴走支援を行うことで、サービスの利用継続や活用促進を目指しています。

日本のリスキリング市場はまだ黎明期にあり、多くの企業がその進め方に課題を抱えているのが現状です。Schooは、「双方向の学び」という特徴を持つサービスを通じて、リスキリング市場における企業の課題解決を目指しています。

>> オンライン学習サービスでMRR2億円突破、「Schoo」が新規上場へ

AIで"学習の個別最適化"を支援「KIYOラーニング」

KIYOラーニングは、オンライン学習プラットフォームを展開する企業。同社は、DXの進展や働き方の多様化を背景に高まるリスキリング需要に対し、独自の「ラーニングテクノロジー」で応えています。

事業の両輪は、個人向けのオンライン資格講座「スタディング」と、法人向けの社員教育クラウドサービス「エアコース」です。

スタディングは、ITを活用したローコスト運営により、従来の通学・通信講座と比較して大幅に低い価格設定を実現。資格取得を通じたキャリアアップを目指す多くの社会人の支持を集めます。

finboard

KIYOラーニングの最大の強みは、AI技術を全面的に活用した「学習の個別最適化」にあります。特許も取得している「AI学習プラン機能」は、一人ひとりの理解度に合わせて最適な学習計画を自動で作成します。

さらに「AIマスター先生」が質問応答や記述式問題の添削まで行うことで、学習者はまるで専属のコーチがついているかのような、きめ細かなサポートを受けることが可能です。

法人向けの「エアコース」においても、1,150以上の豊富なコースを提供し、企業のDX人材育成などを支援しています。

他にも学習後のキャリアを支援する転職サービス「スタディングキャリア」も展開し、「学び」から「キャリア形成」までを一気通貫でサポートするエコシステムの構築を進めています。

>> オンライン教育「KIYOラーニング」が新規上場へ:有料登録は累計7万人超

AI開発市場へ戦略シフトを進める「アイデミー」

アイデミーは、AI/DX分野における人材育成からプロダクト開発、実装までを手掛ける企業です。事業は「リスキリング」「プロダクト」「ソリューション」という三つの柱で構成されます。

e-learning市場の競争環境などを背景に、同社はAI開発市場へも事業領域を広げるなど、戦略の転換期を迎えています。

法人向けのオンライン学習プラットフォーム『Aidemy Business』でDX人材の土台を築き、さらに顧客に伴走してAIシステムを共同開発する『Aidemy Solutions』で具体的な成功体験を創出。

このプロセスで得られた実践的な知見を、再びリスキリングのコンテンツに還元するという、独自の循環モデルを強みとしています。

finboard

また同社は「内製化支援」という思想をもとに、同社のサービスの随所に反映されています。例えば、スキルアセスメントと学習プラットフォームを連携させ、データに基づいた効果的な人材育成を支援します。

しかし、足元の事業環境は平坦ではありません。企業のAI教育に対する初期需要が一巡したことなどが影響し、リスキリング関連事業は踊り場を迎えています。

これに対し、アイデミーはM&Aによる技術力強化や、AIを活用した自社の開発生産性の向上といった具体的な手を打っています。

>> DX/AI人材育成支援サービスの「アイデミー」が新規上場へ

法人向けの伴走型でリスキリングを支援「パーソルホールディングス」

パーソルホールディングス、深刻化するIT人材不足といった社会課題に対し、リスキリング支援事業を多角的に展開しています。

同グループのリスキリング支援の特徴は、法人向けサービスと社内での実践が密接に連携している点にあります。

法人向けには、企業のニーズに合わせたカリキュラム設計と専門コーチによる学習伴走を強みとする『Reskilling Camp(旧 学びのコーチ)』を提供。そして、このサービスで培ったノウハウは、グループ内でIT未経験者をテクノロジー人材へと育成する社内プログラムにも活用されています。

finboard

さらに、エンジニアやDX人材の育成に特化した『TECH PLAY Academy』では、企業の事業課題に沿ったカリキュラムを作成し、研修を実施。さらに学習効果を可視化するアセスメントサービスも提供しています。

これにより、投資対効果が見えにくいとされがちな人材育成において、客観的な指標に基づいた評価を可能にします。

日本の8割以上の企業がIT人材の不足を課題とする中、同社の「伴走型」かつ「実践的」なリスキリング支援は、企業のDX推進と個人のキャリア形成を両面から支えることを目指しています。

>> パーソルホールディングスの企業情報