日本のエンタメ開発力は武器になるか?世界に挑むカジノ機器関連銘柄
世界中の人々を魅了するゲーミング・カジノ市場は、エンターテインメント産業の中でも大規模な市場の一つです。
その一方で、各国の厳格な法規制とライセンス制度に守られており、新規参入が極めて難しいという側面も併せ持っています。この参入障壁の高い市場において、日本の企業群がそれぞれの強みを活かし、独自のポジションを築きつつあります。
アジアで巨大な統合型リゾート(IR)を自ら運営する企業、長年のゲーム開発で培った企画力でプレイヤーを熱中させるスロットマシンを開発する企業もあれば、運営に不可欠な管理システムや高精度の通貨処理技術で市場の根幹を支える企業もあり、そのアプローチは多様です。
本記事では、こうした個性豊かなプレイヤーたちの戦略を紹介していきます。
セガサミーホールディングスは、エンタテインメントと遊技機事業で培った強みを活かし、新たに「ゲーミング事業」を新設しました。
これを事業の「第3の柱」と位置づけ、グローバル市場での成長を目指す構えです。その戦略は、カジノ機器開発、IR運営、そしてオンラインゲーミングという3つの領域を連携させる、多角的なアプローチに特徴があります。
同社の取り組みの一つとして、韓国で運営する統合型リゾート「パラダイスシティ」が挙げられます。同施設は単なるカジノに留まらず、多数の現代アートを展示する「アートテインメントリゾート」という独自のコンセプトを掲げています。施設は多くの来場者を集めており、特に日本人VIP客も多く訪れている点が特徴です。
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カジノに設置されるゲーミング機器の開発・販売も事業の重要な要素です。長年のアーケードゲーム開発で培った企画力を活かしたビデオスロットマシンなどを、主に北米市場で展開。販売台数、リース稼働台数ともに増加傾向にあります。
さらに、同社はM&Aを通じてオンラインゲーミング市場へも本格的に進出しています。特に米国市場をターゲットとしたB2Bプラットフォーム事業などを傘下に収め、新たな収益源とすることを目指しています。
現在はM&A関連費用などの先行投資が続くフェーズにありますが、IR運営で事業基盤を維持しつつ、機器開発とオンライン領域へ投資を進める方針です。同社はこれら3つの事業の連携による相乗効果を目指しています。
コナミグループは、長年培ってきたエンタテインメント事業のノウハウを活かし、「ゲーミング&システム事業」をグローバルに展開しています。
同事業は、スロットマシンなどの「ゲーミング機器」と、カジノ運営を支える「カジノマネジメントシステム」で構成され、世界各地の市場で事業を展開しています。
事業の基盤の一つが、全世界で400を超えるゲーミングライセンスの取得です。参入には厳格な審査が求められる許認可ビジネスにおいて、この実績は同社が各国の規制に対応していることを示しています。
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ハードウェア面では、4K大型ディスプレイなどを搭載したスロットマシン筐体「DIMENSION」シリーズが販売の中心です。ソフトウェア面でも、「Fortune Bags™」シリーズなどのコンテンツを継続的に開発・提供しています。
もう一つの柱が、カジノマネジメントシステム「SYNKROS®」です。これは、顧客管理からセキュリティまでをリアルタイムで一元管理するカジノの基幹システムであり、全世界400以上の施設への導入実績があります。
稼働率99.9%という信頼性に加え、スロットマシンからドリンクを注文できる機能や、世界で唯一のスロットマシン向け顔認証システム「SYNK Vision™」など、顧客体験の向上を目的とした独自の機能開発にも注力しています。
機器とシステムの両面からカジノ運営の包括的なソリューションを提供する同社の戦略は、グローバルなゲーミング市場における独自のポジションを構築しています。
>> コナミグループの企業情報
ユニバーサルエンターテインメントは、その事業ポートフォリオの中核として、フィリピンの首都マニラでIR事業を展開。アジア最大級の規模を誇る「オカダ・マニラ」の運営を通じて、世界中の人々に最高のエンターテインメントを提供することを目指す企業です。
「オカダ・マニラ」は、大規模なスケールとカジノに留まらない多様性を特徴としています。フィリピン最大級のカジノフロアに加え、993室のホテル、約70店舗のレストラン、プレミアムブランドが並ぶショッピングエリアを完備。
また、世界最大級のマルチカラー噴水「ザ・ファウンテン」や、全天候型の巨大ドーム施設「Cove Manila」といったエンターテインメント施設も備えています。
同施設は、世界的な格付け「フォーブス・トラベルガイド」で6年連続5つ星を獲得しています。
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近年、同社は事業領域の拡大にも着手しています。2024年にはフィリピン国内向けのオンラインゲーミングプラットフォームを新たに稼働させ、実店舗とオンラインを融合させた新たな顧客体験の提供を開始。既存の顧客基盤を活用し、新たな収益機会を創出することを目指しています。
一方で、事業環境には変化も見られます。インバウンド観光客、特にVIP顧客層の減少は、短期的な収益への影響要因となっています。これに対し同社は、マス市場向けのマーケティング機能の強化や、日本・韓国をはじめとする近隣諸国からの観光客誘致に力を入れることで対応を進めています。
アジアのゲーミング市場において、同社は大規模なIR施設を基盤に、オンラインへの展開やインバウンド需要の取り込みといった課題への対応を進めています。
日本金銭機械(JCM)は、カジノで用いられる通貨の鑑別・識別技術に特化した、「グローバルゲーミング」事業を展開する技術企業です。
同社の紙幣識別機ユニットは、世界の市場で約60%のシェアを占めており、カジノ運営において重要な役割を担っています。
同社の事業には二つの特徴があります。一つは、参入に際して各国の法規制やライセンス制度への対応が求められる点です。JCMは北米だけでも190を超えるなど、世界中で多数のライセンスを取得しています。
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もう一つの特徴は、部品供給に留まらないソリューションの提供。同社は、不正防止や作業効率化を目的とした「運用システム」を開発・提供しています。
例えば、テーブルゲームの現金管理を自動化する「トライデントシステム」は、カジノフロアのオペレーションを改善するソリューションとして導入されています。また、同社には業界大手のゲーム機メーカーとの共同開発実績もあります。
近年では、これまでの現金処理技術を基盤に、モバイル決済ソリューションの開発にも注力しています。カジノ内のキャッシュレス化という新たな動向にも対応し、事業領域の拡大を進めています。
高い市場シェアと各国の法規制への対応を特徴とするビジネスモデルで、グローバルなゲーミング市場において事業を展開しています。
>> 日本金銭機械の企業情報