「航空機開発」関連銘柄:世界の航空機サプライチェーンを支える技術力とは

三菱重工業

世界の航空旅客需要が回復基調を強め、再び成長フェーズへと移行する中、日本の航空機産業が新たな飛躍の時を迎えています。

この大きな潮流の中で、日本の主要メーカーは、グローバルな航空機開発・生産における不可欠なパートナーとしての地位を一層強固なものにしています。

そのアプローチは、機体の主翼からエンジンの心臓部まで手掛ける総合技術企業、防衛と民間の両輪で事業を展開するメーカー、特定の機内設備で世界シェアを独占するニッチトップ企業など、実に多様。

本記事では、そんな日本の航空機産業をリードする企業たちの、未来に向けた挑戦と戦略を紹介します。

主翼からエンジンの“心臓部”まで手掛ける総合企業「三菱重工業」

三菱重工業は、総合エンジニアリング企業として、世界の航空機産業に不可欠なテクノロジーパートナーとしての地位を確立。その事業領域は、機体の主要構造から、性能を左右するエンジンの核心部分にまで及びます。

ボーイング787などに採用される大型複合材主翼の設計・製造技術は、同社の強みの一つです。さらに、世界の航空機メーカーとの共同開発を通じて長年培われたノウハウが、高い信頼の源泉となります。

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航空エンジン事業における独自のポジションも特徴的です。同社は、数あるエンジン部品の中でも、特に技術的難易度の高い燃焼器やタービンといった「高温部分」の開発・製造を得意としています。

近年では、航空旅客需要の回復を受け、事業基盤の多様化を図るべく、機体の供給に留まらず、修理・整備(MRO)をはじめとするアフターマーケット事業の強化が推進。

ヤマハ発動機と共同で開発するハイブリッド無人機など、未来の空のモビリティを見据えた研究開発も進めています。

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防衛と民間の両分野を手掛ける「川崎重工業」

川崎重工業の航空宇宙システムカンパニーは、防衛と民間の両分野を手掛ける、日本有数の航空機メーカーの一つです。

航空宇宙システム事業では、防衛省向けの航空機を開発・製造を手掛けており、P-1固定翼哨戒機やC-2輸送機といった国の安全保障に関連する機体を開発・供給するなど、日本の防衛政策に関連する役割を担っています。

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民間航空機分野におけるグローバルパートナーとしての役割もまた事業の大きな柱のひとつ。世界的なベストセラー機ボーイング787などの国際共同開発・生産プロジェクトへの参画を通じて、世界の航空機生産の一翼を担います。

さらに、同社の強みは機体製造に留まりません。次世代エンジンの国際共同開発に参画する技術力や、ドクターヘリとしても活躍するベストセラー機「BK117」を有する国内トップのヘリコプターメーカーとしての顔も持ち合わせています。

民間航空市場の回復や防衛分野の動向を背景に、同社は機体からエンジンまで手掛ける総合力を活かした事業展開を進めています。

>> 川崎重工業の企業情報

航空機だけでなく宇宙関連にも展開する「IHI」

日本のジェットエンジン生産の約7割を担うリーディングカンパニー、IHI。

「推力」をコア技術とする同社は、民間航空機から防衛、宇宙に至るまで、空の移動と安全を支える総合重工業メーカーとしての地位を構築しました。

民間航空機用エンジンの国際共同開発が、その事業の大きな柱のひとつ。

GE(ゼネラルエレクトリック)やロールス・ロイスといった世界のトップメーカーと並び、ボーイング787やエアバスA320neoなど最新鋭旅客機のエンジン開発・製造に、主要パートナーとして参画しています。

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近年では、整備・修理を中心とするアフターマーケット事業にも力が注がれます。

世界的な旅客需要の回復に伴い、スペアパーツの販売やエンジン整備の需要も高まっており、製品ライフサイクル全体で価値を提供するビジネスモデルは、同社の収益基盤の一つとなっています。

他にも、将来の航空機に不可欠な「電動化」を見据え、メガワット級の大型発電機や電動ターボ機械といったコア技術の開発をしたり、次期戦闘機(GCAP)用エンジンの国際共同開発を担ったりと、エンジン技術を軸に電動化や防衛まで事業領域を広げています。

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航空機ラバトリーで世界シェア約50%「ジャムコ」

ジャムコは、航空機内装品の大手メーカー。航空機のラバトリー(化粧室)で世界シェア約50%を占め、ギャレー(厨房設備)と共に世界の航空機メーカーやエアラインから高い評価を得ています。

その事業における特徴的な点として、ボーイング社のワイドボディ機に搭載されるラバトリーの全てや、787型機向けギャレーを独占供給している事実が挙げられます。

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同社のモノづくりでは、製品の多くが手作業であることも特徴のひとつ。1,000点以上の部品で構成される複雑な内装品を、航空会社ごとの要望に応え、軽量かつ高強度、高機能に作り上げています。

内装品事業で培った技術力は、航空機シート事業でも活かされています。

他にも航空機器製造事業では、特許を取得した独自のADP(アドバンスドプルトリュージョン)製法による炭素繊維構造部材などを製造。これらは航空機に求められる軽量化・高品質といった課題に対応するものです。

世界的な航空旅客需要の回復を受け、同社が手掛ける内装品や航空機器などの需要にも回復傾向が見られます。長年培ってきた品質と技術力は、世界の航空産業を支える役割の一つとなっています。

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