【下水道銘柄特集】インフラ老朽化とDXを担う企業の成長戦略とは

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高度経済成長期に集中的に整備された日本の上下水道は、施設の一斉更新時期を迎え、深刻な老朽化問題に直面しています。
加えて、現場を支える人材の不足も課題となっており、従来型のインフラ管理は限界を迎えつつあります。

このような状況を打開する鍵として、業界ではDXが急速に進展しています。
AIによる劣化予測やIoTセンサーでの遠隔監視、ドローン点検など、デジタル技術を駆使して維持管理を効率化・高度化する動きが活発です。
また、設計から運営までを一体で担う官民連携も広がりを見せています。

さらに、国内の課題だけでなく、世界的な水不足や脱炭素化といったメガトレンドも、日本の優れた水処理技術や省エネ性能の高いポンプを持つ企業にとって大きな事業機会となっています。

本記事では、こうした変革期にある「水」インフラ市場において、独自の技術やサービスモデルで社会課題の解決に挑む企業を紹介します。

“EPC×O&M”で包括的ソリューションを提供する「メタウォーター」

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メタウォーターは、2008年に日本碍子と富士電機それぞれの水環境事業を統合して誕生した、水・環境分野の総合エンジニアリング企業です。
機械と電気の両分野にルーツを持つ技術力を融合させ、独自のソリューションを展開しています。

同社は、EPC(設計・調達・建設)を担うプラントエンジニアリング事業と、O&M(運転・維持管理)などを担うサービスソリューション事業を主要なセグメントとして展開しています。
これにより、公共インフラである施設の建設、維持管理、運営などを通じてライフサイクルに貢献する技術・サービスを提供し、顧客である地方自治体などの課題解決を目指しています。

技術面では独自のセラミック膜ろ過システムを保有する一方、近年はデジタル技術の活用を加速しています。
その中核が、運転管理データや現場情報をクラウドで一元化する「WBC(ウォータービジネスクラウド)」です。
同社は、WBCなどを活用した情報の連鎖により、顧客と共に新たな価値創出を目指しており、PPP事業と合わせて、次世代の官民連携の形を追求しています。

今後、公共インフラの老朽化対策や運営効率化のニーズが高まる中、同社の包括的なサービス提供能力が事業機会の拡大につながる可能性があります。
一方で、事業基盤が公共投資に大きく依存するため、国の財政状況や政策の変更が事業環境に影響を及ぼす可能性があります。

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水処理に関する幅広い薬品類の製造およびメンテナンス「栗田工業 」

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1949年設立の栗田工業は、水処理薬品事業と水処理装置事業を日本、アジア、北南米、EMEA地域で展開しています。
産業の発展と環境保全の両立に貢献する、水と環境のソリューションを提供しています。

同社は、ボイラ薬品、冷却水薬品、排水処理薬品など、様々な水処理薬品を提供しています。
また、電子産業向けの超純水製造装置や超純水供給サービスを提供しており、国内外の幅広い産業の用水・排水処理を支えています。
電子産業は、新中期経営計画において同社が重点化する分野の一つです。

近年では、事業を通じて社会課題の解決を目指す「CSV事業」を成長戦略の核の一つに据えています。
これは、顧客の生産性向上のみならず、水資源の保全やCO2排出量の削減といった環境負荷低減に直接貢献するソリューションを提供するものです。

世界的な水資源の問題や環境課題への関心の高まりは、同社グループが提供する水と環境のソリューションへの需要を喚起する可能性があります。
ただし、事業の多くは電子産業をはじめとする特定産業の設備投資動向に左右されるため、市況の変動や為替リスクには注意が必要です。

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超純水技術を排水処理へ応用「オルガノ」

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1946年設立のオルガノは、水処理エンジニアリング事業と機能商品事業を両輪とする総合水処理エンジニアリング企業です。
産業の発展に不可欠な「水」に関する高度なソリューションを提供し、長年にわたり業界を牽引してきました。

とりわけ、同社の主要市場である半導体などの電子産業向けに、超純水製造設備を提供しており、グローバルに事業を展開しています。
最先端の製造プロセスを支える水処理技術は同社の事業の核であり、微細化や高純度化要求に対応する技術開発の強化が求められています。
こうした技術開発の強化は、顧客との関係を深め、継続的な取引に繋げるための重要な戦略と位置付けられています。

この競争優位性の源泉は、顧客の要求する極めて高い水準の清浄度を実現するプラント設計・施工能力にあります。
また、超純水製造設備などの装置に加え、RO膜処理剤などの水処理薬品も提供しており、装置と薬品の両面からソリューションを提供しています。

今後、半導体市場の持続的な成長を背景に、同社の技術への需要はさらに高まることが予想されます。
しかし、主力事業が電子産業の市況変動の影響を受けやすい点はリスク要因です。
また、親会社である東ソーとの連携も事業戦略上の重要な要素と考えられます。

>>オルガノについてもっと詳しく「水処理」エンジニアリングを手がけるオルガノが好調。半導体需要とともに収益性も急伸

上下水道コンサルティング事業で水道インフラに貢献「NJS」

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株式会社NJSは1951年に設立され、上下水道分野を核とする水と環境のコンサルタント事業を行っています。
長年にわたり、国内外の水道インフラの計画、設計、維持管理に関する専門的なサービスを提供し、社会基盤の整備に貢献してきました。

同社については、近年深刻化するインフラの老朽化問題に対し、豊富な知見と実績を活かしたソリューションの提供に特徴があります。
また、国内に留まらず、海外へも積極的に事業を展開しています。

近年では、DXへの取り組みを加速させています。
具体的には、独自に開発したインフラ管理システム や、3Dデータ化、AI活用、ドローン等の新技術を活用した点検・調査システムなどの技術開発と実用化を推進し、維持管理の効率化・高度化に取り組んでいます。
さらに、PPP事業への参画も進めており、事業領域を拡大しています。

今後、インフラDXの需要拡大を追い風に、その技術的リーダーシップを一層強化していくことが期待されます。
一方で、事業の多くが公共投資に依存するため、国内外の経済や政策の動向がリスク要因となり得ます。
加えて、専門性の高い事業であるため、継続的な人材の確保と育成も重要な経営課題の一つです。

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下水道インフラに不可欠な高効率ポンプに実績「酉島製作所」

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酉島製作所は、1919年に創業したポンプの専門メーカーです。
同社は、上下水道や発電所といった社会インフラから各種産業プラントまで、幅広い分野に不可欠なポンプをグローバルに供給し、社会の基盤を支えてきました。

同社は特に、海水淡水化プラントや大規模発電所などで使用される大型・高圧ポンプの分野で高い技術力を誇ります。
この技術力を背景に、中東をはじめとする海外市場で豊富な実績を積み重ねており、グローバルなインフラ整備において重要な役割を担っています。

近年では、省エネルギーに大きく貢献する「スーパーエコポンプ」の開発・市場投入準備を進めているほか、データやAIを活用した「スマートメンテナンス(TR-COM)」の展開にも注力しています。
さらに、脱炭素社会の実現を見据え、アンモニアや水素といった次世代エネルギー向けポンプや、気候変動に対応する防災・減災向けポンプの開発も進めています。

今後、世界的な水問題やエネルギー転換の潮流を背景に、同社の先進的なポンプ技術への需要が高まる可能性があります。
一方で、海外、特に中東でのプロジェクト比率が高いことから、地政学的リスクや為替変動が事業に与える影響には注意が必要と考えられます。

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プラスチック製管材で社会インフラを支える「前澤化成工業」

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前澤化成工業は、主に上下水道向けのプラスチック製資材を手がける専門メーカーです。
塩化ビニル製の管材や継手、ます、バルブなど、社会インフラに不可欠な製品を供給し、人々の暮らしを支えています。

上下水道向けプラスチック製品の製造・販売を主力としつつ、給排水衛生設備やポンププラントの設計・施工、維持管理も手掛けています。
製品の品質認証取得や新技術開発に取り組むほか、公共工事に強みを持つ子会社を通じて事業基盤の強化も図っています。

プラスチック成形技術をコアコンピタンスとし、戸建て住宅用の小型製品から公共下水道向けの大口径製品まで、多岐にわたる製品ラインナップを展開しています。
「お客様満足度の高い製品・サービスの提供」を経営基本方針としており、顧客の目線に立った製品開発・改良や、多様な水処理システムの提案・施工など、顧客ニーズに応える取り組みを行っています。

今後、国内インフラの老朽化対策が本格化する中、軽量で施工性に優れ、耐食性も高い同社のプラスチック製品は、維持・更新市場において採用機会が増加する可能性があります。
一方で、事業は公共投資や住宅着工件数の動向に大きく影響を受けます。
また、主原料である樹脂価格の変動は、事業運営上のリスク要因となり得るでしょう。

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