今回は、アメリカのオンライン・フードデリバリー企業「Grubhub」の2018年Q2決算をチェックしていきます。
「Grubhub」はこれまでも何度かノートでまとめており、継続して注目している成長企業です。
・高い成長率と利益率を両立するフードデリバリー企業「Grubhub」、その高いポテンシャルとは
・Yelp傘下の「Eat24」と統合!ユーザー数77%増加も利用頻度は低下する「Grubhub」の決算数値を追う
フードデリバリー市場は急拡大しており、日本でもUber Eatsのバッグを背負う自転車を見かけることが増えました。
アメリカでは日本以上の激しい競争が繰り広げられていますが、「Grubhub」の成長スピードは現在どうなっているのでしょうか。
2017年ごろから株価はうなぎのぼりです。
今回のエントリでは、Grubhubの状況について事業KPIを中心にまとめていきたいと思います。
最初にチェックしたいのは「アクティブ・ダイナー(注文者)数」。
Grubhubのプラットフォームを実際に注文しているユーザーの数です。
2017年10月の「Eat24」買収に伴って2017年Q4にダイナー数が急増し、現在は1550万人を突破。
四半期で5万人増のペースを維持しています。
次に、「総注文高」について。実際にGrubhub上で注文されたディナーなどの金額です。
"冬になると注文が増える"という季節性があるため、グロスでは前四半期を下回っているものの、12億ドルという水準。
前年同期比は38.73%と、引き続き非常に高い水準です。
3つ目は「1日あたりの平均注文回数」。
総注文高と同様、前四半期よりは減っていますが、前年同期比+34.82%の増加。
1日に42万3200回ということは、1分に293回、1秒に5回近くのオーダーが入っている計算になります。
以上は、Grubhubが報告している事業KPIをそのまま表したものですが、それらの数値をもとに簡単な分析を行うだけで、色々なことが分かります。
例えば、「注文1回あたりの平均単価」。
これは、総注文高を「1日あたりの平均注文回数×3か月分」で割ることで計算することができます。
実際の数値を見ると、直近では32ドルという数字。
ここ5年間、ほぼずっと右肩上がりの増加を続けています。
自宅のディナーに32ドルというのは高い気もしますが、家族で注文するケースが増えているのかもしれません。
続いて、「1ユーザーあたりの四半期注文回数」。
「アクティブ・ダイナー数 ÷ (1日あたりの平均注文回数×3か月)」で計算します。
前四半期までの減少傾向は変わらず、月に1回使うか使わないかというラインで推移しています。
Eコマースにおいては、プラットフォーマーの取り分を示す「テイクレート」も重要です。
「Grubhub」の「テイクレート」は「総注文高 ÷ 総売上高」でシンプルに割り出します。
この5年間、テイクレートは一貫して上昇しています。今期は19.64%と20%の大台に迫る勢い。
Gruhubのようなマーケットプレイス型の事業において、テイクレートが上がるというのは消費者にとっても飲食店側にとってもマイナスです。
それでも数字が伸びるということは、それだけニーズの高いビジネスなのだといえます。
ひととおりKPIを見てきたたところで、財務諸表から全体像を確認していきます。
収益
売上高は2億3974万ドル、税引前利益は3431万ドルとなっています。
売上高は前年同期比で51%増加と高い成長率を維持しています。
コスト構造もチェックしていきましょう。
マーケティング費用(Sales and marketing)が4623万ドルと、前四半期に比べて5%減少。
対して、オペレーション・サポート費用(Operations and support)が1億244万ドルまで増加しています。
前年同期比で+62.8%、2018/6期は営業費用2億542万ドルのうち49.8%を占めるまでに。
マーケティングによるユーザー獲得からカスタマーサポートによる顧客維持へと舵を切っていることが伺えます。
財政状態
資産の内訳を確認していきます。
総資産17億7475万ドルに対し、現金および現金同等物が4億4367万ドルまで積増しています。
調達サイドの負債・純資産をチェックしていきます。
払込剰余金(Additional paid-in capital)が10億6616万ドル。
自己資本比率は78.6%となっています。
キャッシュフローも見ていきます。
「Eat24」買収により総売上高が増加したことで、2018/6期に営業キャッシュフローが1億ドルを突破しました。
成長を維持する「Grubhub」ですが、決算発表に合わせてビッグニュースを盛り込んできました。
モバイル決済サービスを展開する「LevelUp」を3億9000万ドルで買収することを発表したのです。
「LevelUp」は2011年、Amazonのジェフ・ベゾス氏と同じプリンストン大学出身のセス・プリバッチ氏によって創業されたテクノロジースタートアップ。
提供するサービスの仕組みとしては、「自分のQRコードを店舗側に読み取ってもらう」QR決済システムとなっています。
他の決済サービスと比べて特徴的なのは、「店側が自由にリワード(ポイントやクーポンなどの特典)を設定できる」ことです。
ユーザー分析ツールも豊富で、ケンタッキー・フライド・チキンやタコベルといった大手チェーンとのアライアンスを次々と構築し、急成長を遂げていました。
実店舗だけでなくオンライン決済にも対応しており、「Grubhub」は"決済インフラ"と"利用店舗"の両方を同時に獲得したことになります。
これに対して市場は即座に反応。株価が+23.56%と急騰しました。
CNNは「Grubhubがフードデリバリー戦争の常勝街道をまい進中」とまで大々的に報じています。
DoorDashやUber Eats、Amazonフレッシュといった競合に対して先手を打つ姿勢は、投資家を良い意味で驚かし続けています。
決算発表前の7月19日にはデリバリーエリアの拡大も発表しており、新たに17州29都市でサービス利用が可能となりました。
決済インフラ獲得によるプラットフォームのコア機能強化は、ダイナー数や減少傾向にある1ユーザーあたり注文数にどのような影響を及ぼすのでしょうか?次のQ3決算はその真価が問われることになるでしょう。
競合企業の動向も含め、フードデリバリー市場全体のさらなる盛り上がりに期待しながら引き続き注目していきたいと思います。
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