高い成長率と利益率を両立するフードデリバリー企業「Grubhub」、その高いポテンシャルとは

今回は、アメリカでオンデマンドのフードデリバリーサービスを展開するGrubhubについて調べます。

創業は2004年のことで、腹をすかせた二人の開発者が紙のメニューの代替を作るために「Grubhub」を設立。

2012年には飲食店向けに注文プロセスを円滑化するタブレット用のソリューションを開発。

2013年にはデリバリーサービスを1999年から展開してきた競合の「Seamless」と合併します。

2014年にはニューヨーク証券取引所に上場。


事業規模はそれほど大きくありませんが、急速な売上成長を黒字のまま実現しています。

売上成長率は若干マイルドになりつつあるものの、36%と驚異的な成長率です。

なおかつ営業利益率がこの5年で10%から17%前後に改善しています。


どうしてGrubhubは、非常に高い成長率と収益性を両立することができるのでしょうか?ビジネスモデルと事業数値という2つの側面から考えてみた上で、アメリカにおけるフードデリバリー市場の高いポテンシャルについて軽く触れておきたいと思います。



Grubhubのビジネスモデル

Grubhubの事業モデルはとてもシンプルです。図解するのもアホらしいほどシンプル。

上の図では「カレー」を例に説明していますが、要するに「ご飯を食べたい人(注文者)」と「レストラン」をマッチングするサイトということです。

注文者は、Grubhubの中で食べたいものを見つけ、注文・支払いを行います。

レストランは、それを受けてご飯を注文者に配達。注文者の支払いのうち、Grubhubが手数料を引いた分がレストランに代金として支払われます。

Grubhubの競争力

Grubhubの事業において最も大きな競争力となっているのは、注文者(Diners)とレストランの両方で大きなネットワークを形成していることです。

注文者の数(Active Diners)は、2016年には817万人にまで増加しています。このほとんどが米国内です。

また、レストランの数は75,000にも及んでいます。

Grubhubの事業上、注文者が増えるほどレストランも導入しやすくなるし、レストランの数が増えるほど注文者の選択肢が増えます。

注文者・レストランの両方でこれだけのネットワークを形成していることこそが、Grubhubが有する最大の優位性と言えます。いわゆるネットワーク外部性ですね。


高い収益性(テイクレート)

上記の競争力があることにより、Grubhubの収益性はとても高くなっています。

まずは年間の食事取扱高(GFS, Gross Food Sales)をみてみましょう。

2016年にはおよそ30億ドルほどにまで成長。日本円でいうと3000億円ほどです。

このうち何パーセントがGrubhubの売上になるかの指標は「テイクレート」と呼ばれますが、それをGFSと売上の2つから計算してみました。

なんと、2016年には取扱高(GFS)のうちの16.45%がGrubhubの売上になっていることがわかります。

非常に有名な「MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣」によると、Eコマースのテイクレートはアメリカで10%弱、日本で7-8.5%、中国だと3%程度がスタンダードとのこと。

Grubhubの16.45%というテイクレートは極めて高い数字であることがわかります。

コスト構造の変化:概ね改善する中で配送費用は増大

Grubhubが取扱高に対して高い収益性を持っていることがわかりました。

次に、利益率の高さの理由を探るため、コスト構造をチェックしてみます。

2012年からの5年間で、セールス&マーケティング費用(Sales and marketing)は売上に対して32.7%から22.4%へと大きく改善しています。

テクノロジー費用(Technology)も12.4%から8.6%、一般管理費(General and administrative)も14.9%から10%へと極めて低い水準になっています。

その一方、オペレーション&サポート(Operations and support)費用は22%から34.8%へと、売上に対して大きく増加しています。

オペレーション&サポート費用に含まれるのは、決済手数料やカスタマーサポート、デリバリーなどに関する費用。

増加の理由について、年次報告書(Form 10-K)には次のように説明されています。

デリバリー(配送)コストの上昇とカスタマーサポート費用の増大、そして買収によるものと書かれています。

Grubhubの営業費用の中では最も大きいものになっているので、今後この数値がどう変化していくか注目です。

財政状態とキャッシュフロー

Grubhubの財政状態も確認します。まずは資産の内訳。

総資産12億ドルのうち、買収によるのれん(Goodwill)が4.4億ドルとかなり大きくなっています。この多くは2013年にSeamlessと合併したことによるようです。


資産の源泉である負債と自己資本の内訳です。

資本剰余金(Additional paid-in capital)が8億ドルと大きく、資産のほとんどが株式発行による資金調達によるものだとわかります。

最後にキャッシュフローです。

営業キャッシュフロー(Net cash by operating activities)は安定してプラスです。

2014年に財務キャッシュフローが1.6億ドルのプラスになっているのは、そのほとんどが株式上場によるものです。

フリーキャッシュフローも安定してプラスですが、まだ1億ドルにも達していません。

オンラインフードデリバリーの高いポテンシャル

Grubhubはほとんどアメリカ国内だけで事業を展開しているだけということもあり、規模の面ではまだまだ小さいと言わざるを得ません。

しかし、モルガン・スタンレーによる調査によると、「もしあらゆる食事がピザみたいに出前できるようになれば」フードデリバリー市場はアメリカ国内だけでも2100億ドルの市場になるポテンシャルを秘めているとしています。

The Pizza Paradigm for Online Food Delivery

2016年時点での市場規模は110億ドルと言われており、その中でGrubhubは30億ドルの注文高なので、米国内27%のシェアを握っていることになります。

特に一部地域でのシェアは圧倒的で、テキサス州エル・パソでは92%、ニューヨークでは85%ものシェアを握っています(参考)。

もし仮にモルガン・スタンレーの言う通り市場規模が2100億ドルになったとすると、そしてGrubhubの市場シェアやテイクレート、利益率が今のままなら、取扱高は567億ドル、売上は90億ドル、営業利益は15億ドルにものぼる計算になります。


一方で、未上場のUberも「UberEATS」として食品のデリバリーサービスを展開していたり、食材配送サービスの「Blue Apron」も上場したりと、近い分野で動きは起き続けています。

こうしてみると、Grubhubの戦いと躍進はまだ始まったばかりのように思えます。今後がとても楽しみです。