朝日ネット 事業内容・ビジネスモデル

フォロー
時価総額 314億5600万 円
銘柄コード 3834(市場第一部(内国株))

株式会社朝日ネットは東京銀座に本社をおく企業。1990年に株式会社アトソンとして設立され、パソコン通信を中心に事業を展開。1994年よりインターネット接続サービスを開始。2006年東証二部上場。2007年東証一部に指定。2011年には会員数50万人達成。現在は主にインターネット接続サービス「ASAHIネット」の運営と、教育支援サービスの「manaba」やグループウェア「AsaOne」など自社開発によるクラウドサービスを提供。

沿革

株式会社朝日ネットは、1988年11月にパソコン通信サービス「ASAHIパソコンネット」をスタートさせた株式会社朝日新聞社内のプロジェクトチームが前身。その後、1990年4月に朝日新聞社とトランスコスモス株式会社の出資により株式会社アトソンとして設立。「ASAHIパソコンネット」のシステムと運営を継承した。

 1993年7月「ASAHIネット」にサービス名を変更し、1994年6月にインターネット接続サービスをスタート。1995年1月にはダイヤルアップIP接続サービス(電話回線を使ったインターネット接続)を開始し、1997年には米国最大手インターネット・サービス・プロバイダーであるUUNET(現・Verizon Communications Inc.)と契約。米国500カ所にアクセスポイントを開設した。

2000年3月には、役員と社員が全株式を取得して独立系通信事業者となり、同年7月には株式会社エースネットを完全子会社化。12月には東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社の「フレッツ・ADSL」に対応したADSL接続サービス(電話回線の音声に使用していない帯域を使ったインターネット接続サービス)を開始。

翌2001年1月、株式会社エースネットと朝日ネット株式会社を吸収合併し、社名を株式会社朝日ネットに変更。同月に「ASAHIネット」の会員数は20万人を突破した。

2003年にはエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・エムイーとの提携によりIP電話サービスを開始。2006年4月には、ブロードバンド映像サービス「ASAHIネットTV(現「ひかりTV for ASAHIネットauひかり」)を、12月にはKDDI株式会社と提携したFTTHサービス「ASAHIネット ひかりone(現「ひかりTV for ASAHIネットauひかり」)」をそれぞれ開始した。

2007年2月に教育支援サービス「manaba(マナバ)」を開発。同年11月には「ASAHIネット」会員数が40万人を突破し、12月には東証一部に指定した。 2011年4月、「manaba」のグローバル展開を図るため、米国に子会社Asahi Net International,Incを設立。同年9月に「ASAHIネット」会員数が50万人と突破。 2018年9月、IPv6接続サービスをサービス化し、「v6コネクト」として電気通信事業者へ提供開始。 2019年7月、IP電話サービス「Asahi Net 光電話」を開始。2020年4月にはNTT東日本、NTT西日本と提携した最大通信速度10Gbps(上り・下り)のFTTH接続サービス「AsahiNet 光クロス」をスタートさせた。

事業内容

朝日ネットはISP(インターネット・サービス・プロバイダ)事業として、「インターネット接続サービス」と「インターネット関連サービス」を提供している。

1つめの「インターネット接続サービス」とは、顧客にインターネット接続環境を提供するサービスである。

朝日ネットは、全世界のサイトやネットワークと相互に接続できる通信環境を構築し、顧客にインターネット接続環境を提供している。提供にあたっては、全国各地の中継点との間に構築した「バックボーン回線」を自社の技術で運用することで、「回線の安定性」や「回線速度」など品質を高く維持しながら、通信費を適切な範囲に収める努力を重ねている。

顧客と最寄りの中継点を結ぶ「アクセス回線」は、複数の提携電気通信事業者と契約しており、現在はFTTHやモバイル回線を利用する顧客が増えている。

また、顧客が接続サービスを利用する際に必要なルータなどの「通信機器」も提供している。

ISP事業の運営に当たっては、ネットワーク設備やサーバー設備を複数のデータセンターに設置。またコールセンター業務や課金業務、24時間365日サービスを監視するネットワークオペレーションなどを実施している。

2つめのISP事業である「インターネット関連サービス」とは、インターネット接続サービスに加えて顧客に提供するサービスのことで、次の三つのセグメントで構成されている。1つめはメール、セキュリティ、IP電話、独自ドメインを提供する「接続付加価値サービス」。2つめはホームページやブログを開設するスペースを提供する「ホームページサービス」。3つめは「manaba(マナバ)」「respon」などを提供する「教育支援サービス」である。

「manaba」は自社開発によるクラウド型教育支援サービスで、LMS(ラーニング・マネジメント・システム)としての役割に加え、既存の学内システムや外部教材とも連携し、教育支援のソリューションを広範囲に提供している。

「respon」はスマートフォンやタブレット端末にインストールできる大規模多人数同時参加型(MMO)のオンラインアンケートアプリで、授業中に取ったアンケートの集計結果をアニメーション化して、参加者が一斉にリアルタイムで共有できる「プレイヤー機能」を備えている。

経営方針

朝日ネットは、社会基盤として重要な役割を担う先進的で高品質なインターネット接続サービスを、適切な価格で安定的に提供することを経営方針に掲げており、「接続料金」「回線の安定性」「回線の速度」「サポート」など、基本的な価値の向上を図ることが重要だと考えている。 また、自社開発した教育支援サービス「manaba」を大学などの教育機関へ提供することで、IT技術の活用により教育の質を高めるインフラとしての価値向上に努めている。

経営戦略と経営指標

インターネット接続サービスは、生活インフラおよび事業インフラとしての役割がますます増大しており、朝日ネットでは、顧客が求める通信品質を維持しながら、オペレーションのさらなる向上によって顧客の利便性を高めていくことが重要課題だと考えている。

またWi-Fi、VPN、監視カメラソリューションなど、インターネット接続の周辺領域の事業も進めている。

そして先進的で高品質なインターネット接続サービスを適切な価格で継続的に提供するには、健全な財務基盤が必要である。そのため、ROEおよび1株あたり純利益を収益性の指標としている。またISP「ASAHIネット」については、会員制ビジネスであることから、会員数の増加を図ることが将来の収益源につばがっている。そのため、「ASAHIネット」の会員数、平均退会率、第三者による顧客満足度調査などを重要な指標としている。他電気通信業者へIPv6接続サービスをローミング提供する「v6 コネクト」については、提携する電気通信事業者数を重要な指標としている。また「manaba」については、契約ID-POS数に応じた課金体系のため、全学導入校数と契約ID数を重要な指標としている。

経営環境と戦略

朝日ネットは、通信業界における動向について、新型コロナウイルス感染症に伴う行動の変化により、通信を伴う非接触機会の拡大やテレワークへの動きなど、インターネットの役割が日常生活や企業活動においてますます重要になると考えている。インターネット上で見られる動画などのコンテンツ配信サービスの増加や4K/8Kコンテンツの拡大などにより、国内ブロードバンド契約者のダウンロードトラフィックは増加しており、IoT、ビッグデータ、AI(人工知能)などICT(情報通信技術)の官民を挙げた推進が促されているなか、今後もISP業界が重要な役割を担っていくものと想定している。

ISP事業の事業構造は、売上が会員に対するインターネット接続機能の月額課金で計上するのに対し、売上原価は通信費仕入れと通信を処理する通信機器などの設備投資が主な原価となっている。そのため、インターネット動画の通信量が増加するのに比例して売上原価が増加し、結果的に営業利益が押し下げられていることがISP業界の共通課題となっている。朝日ネットでは、この課題を解決するためNTT東西のフレッツ網と直接接続し、シンプルにインターネット接続ができるネイティブ方式でのIPv6接続サービスを提供。そうすることで、通信トラフィックが増加する中でも高い品質と収益性の確保に努めている。朝日ネットは、「IPv6接続サービスを提供する電気通信事業者が限られていること」と「トンネル方式でIPv4接続サービスを提供する電気通信事業者が多数存在すること」をあげ、「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」を差別化要因として事業の拡大に取り組んでいくとしている。

また、ISP事業ではB2B2Xとなる法人顧客を主なターゲットとしているが、NTTドコモやソフトバンクトウノ携帯キャリアが、移動通信と固定通信をセット販売することに注力しているため、個人向け会員の獲得効率が悪化することを懸念している。そのため、法人向けに「接続料金」、「通信の安定性」、「通信の速度」に加え、固定IPアドレスなどの付加価値サービスや業務オペレーションの効率化を提供することで会員が得られる価値を高める戦略に取り組んでいる。また小規模事業者との契約数を積み上げることを意識しており、競合とのサービス比較や料金比較などの競争を避けながら、高い利益率を確保することを目指している。

教育業界では、新型コロナの影響でキャンパス内での講義が困難になり、遠隔授業に取り組む大学が増加している。その中で、全国786の大学のうち、約200校程度が遠隔授業に必要なシステム(LMS)を導入していない(朝日ネット調べ)ことから、今後「manaba」への引き合いの増加を見込んでいる。またLMSを導入している大学においても、遠隔授業の開始などによりサーバー接続などのリソースが不足している。そのような大学に対して、「manaba」が管理するデーターセンターの利用環境の提供を行うことで、他社と差別化し、導入校数の増加を進めていくとしている。

事業上の課題

朝日ネットは現在、次の七つを事業上の課題と考えている。

1つめは、新型コロナウイルス感染症拡大の抑止に向けた対策と事業継続への取り組みである。在宅勤務の促進、重点業務(保守、コールセンターなど)におけるチーム交代制の採用など、従業員の安全確保をはじめとした感染拡大抑止の対策に最大限取り組んでいる。

2つめは、顧客満足につながる品質のサービス維持と通信コストの抑制である。ネイティブ方式でのIPv6接続サービスを会員向けに提供することで、高品質の維持と売上原価率の抑制を実現させている。

3つめは、ISP「ASAHIネット」会員の獲得である。会員からの接続料収入が収益構造の基礎となっているため、新規会員獲得につながる効率的な販促展開や、品質と利便性のさらなる向上に取り組んでいる。

4つめは、「v6コネクト」の拡販である。「v6コネクト」の利用顧客は集合住宅向け事業者やISP事業者など電気通信事業を想定しており、新たな事業領域を開拓する取り組みを進めている。

5つめは、教育支援サービス「manaba」の拡販である。現場のニーズを取り込み、教育の質を高めるイノベーションに貢献するサービスの開発に加え、新しい需要に応えるサービスの拡充と設備増強を検討している。

6つめは、ブランドの構築と顧客満足度の維持、向上である。退会を抑止し競合からの乗り換えを促すには、質の高いサービスと安定した接続環境を提供して信頼感を高め、顧客満足度を維持・向上させることが必要である。

最後に、情報セキュリティへの取り組みである。情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格ISO/IEC 27001:2013と、プライバシーマークを取得したのに加え、「安全・安心マーク」の使用許諾も得るなど、情報管理体制の維持・強化に向け積極的な取り組みを行っている。