2026年の初め、中央銀行は利下げに向かうと誰もが考えていました。ところが米FRBと欧州中央銀行は逆に利上げに動きます。顧客から320億ドルの預かり金を抱える海外送金のWiseにとって、これは何もしなくても利息収入が増える追い風です。
その追い風の使い道を問われたエマニュエル・トマサンCFOは、「まだ判断するには早すぎる」と前置きしたうえで、顧客に返す可能性に言及しました。手数料を毎四半期下げる計画、売上の半分を超えた送金以外の収益、他社に送金網を貸す事業。2026年7〜9月期のWiseの決算は、安さを武器にする会社の損益がどう組み立てられているかを映しています。
Wiseの送金手数料率は、2026年7〜9月期に0.49%まで下がりました。1年前は0.52%です。送金額は22%増の720億ドルに達したのに、送金収入は16%増の3億5,500万ドルにとどまりました。この差は競合に奪われた分ではなく、Wiseが自分で値下げした分です。効率化で浮いた利益を顧客に返す仕組みが、この会社の設計そのものになっています。
値下げは行き当たりばったりではありません。前回の決算説明会(2026年4〜6月期)では、7〜9月期に0.02ポイント、その後の2四半期に0.01ポイントずつ下げる計画を示していました。実際に8月に値下げを実施しましたが、7〜9月期の手数料率の低下は前四半期比で0.01ポイントにとどまっています。ドル安で米国発の高額送金が減り、もともと手数料率の低い取引の比率が下がったためです。値下げしたのに取り分率が計画ほど下がらない、という珍しい現象が起きました。