金融機関が好調なときに自社株買いを減らすと、市場は何か悪い知らせを疑います。JPモルガン・チェースの2026年7〜9月期決算では、まさにその疑問がアナリストから投げかけられました。純利益153億ドル、有形株主資本利益率20%という数字を出しながら、自社株買いは例年のペースを大きく下回ったからです。
ジェイミー・ダイモンCEOの答えは、不安でも規制でもない別の場所にありました。同じ決算説明会では、銀行株を揺らしたAIエージェントへの対処と、年7億ドルを投じるAIの「見えない効果」も議題に上がりました。好況の頂点で、この銀行はお金と技術をどこに向けているのでしょうか。
自社株買いが減ったのは守りに入ったからではなく、株を買うより儲かる使い道が見つかったからです。あるアナリストは今期の自社株買いが10億ドルにとどまり、通常の70億ドル前後から大きく減ったと指摘し、資本の優先順位を問いました。ダイモンCEOは「自社株買いが減った主な理由は前向きなもので、含み損や環境の読み、バーゼルIIIとも関係がない」と言い切りました。余剰資本は約300億ドルあり、配当、自社の成長投資、自社株買いという順番は昔から変わっていないという説明です。
決め手は益利回りとの比較でした。ダイモンCEOは「今日株を買えば益利回りは6%程度だが、その資本を良い利回りで再投資するほうがはるかに良い」と述べました。益利回りとは株価に対する1株利益の割合で、自社株買いの「儲け」の目安になります。つまり、6%で自分の株を買い戻すより、高い利回りで貸せる相手がいるなら貸したほうが株主のためになるという、投資判断としての単純な計算です。