「終わったブランド」——祖業のGapブランドは、長らくそう見られてきました。その祖業が2桁成長を続ける一方で、会社を支えてきた稼ぎ頭は夏物ワンピースでつまずく。Gap Inc.の2026年5〜7月期決算は、ブランド再生の「型」の威力と、それを別のブランドへ移植する難しさを、同時に映し出す内容になりました。
リチャード・ディクソンCEOは不振について「実行のどこが足りなかったのかを明確に理解し、計画の強化へ迅速に動いた」と述べ、原因を消費者ではなく自社の実行に求めました。CEO就任から丸3年、変革の途上で訪れた試練です。
明暗はブランドごとにくっきり分かれました。祖業Gapブランドの既存店売上高は前年比10%増と勢いを保つ一方、最大ブランドのOld Navyは4%減と、11四半期ぶりのマイナスに沈みました。それでも全社の粗利率が改善した背景には、好調ブランドの利益余力を不振ブランドの立て直しに回す、多ブランド経営ならではの仕組みがあります。

祖業を蘇らせた「型」とはどんなものか。稼ぎ頭の値下げ原資はどこから捻出されたのか。そして新しく就くトップは何を変えるのでしょうか。決算説明会の中身をひもときます。
ファッション界で強い影響力を持つヘイリー・ビーバー氏とGapの定番デニム2型を再解釈した「Hailey Jean」は、発売後まもなく完売しました。単品のヒットにとどまらず、店への集客と周辺商品への波及効果を生んだといいます。5〜7月期のGapブランドは既存店売上高が前年比10%増。プラス成長は11四半期連続で、2桁成長はこれで2四半期連続となりました。

ディクソンCEOは「優れた商品が、説得力のあるストーリーテリングと規律ある実行に組み合わさると、顧客エンゲージメントとブランドの勢いという強力なはずみ車が生まれる」と語ります。実際、値引きの縮小と顧客基盤の拡大が同時に進んでおり、値ごろ感ではなくブランドの熱量で売る体質への転換がうかがえます。
成長の裾野も広がっています。女性向けが牽引しつつ男性向けも堅調で、子ども・ベビー向けは市場ランキングを6位から4位へ引き上げました。音楽との接点も途切れません。歌手マルコム・トッドを起用した新キャンペーンでは、ロビンの名曲「Dancing On My Own」をデニム姿で再解釈し、Z世代との接続を保ちながら幅広い世代への訴求を続けています。
秋にはアクセサリー参入の第1弾としてバッグをファッションウィークで披露し、7月に再投入した往年のフレグランスも滑り出しは良好とのこと。店舗改装は年内に約35店を予定し、北米専門店網の約4分の1が新コンセプトに切り替わります。祖業が再び、会社全体の成長エンジンとして回り始めました。
その裏で、稼ぎ頭の失速が決算全体の印象を曇らせました。全米最大の専門アパレルであるOld Navyは既存店売上高が前年比4%減。ディクソンCEOによれば11四半期ぶりのマイナスです。主因は女性向けの夏物で、ワンピース、ショーツ、水着の不振が既存店売上の約3ポイント分の逆風になったと説明されています。