SaaSの次は「エージェント労働」を売る。米Veeva決算が映す企業AIの転換点

Veeva Systems Inc.

米Veeva Systems(ヴィーバ・システムズ)は、製薬・ライフサイエンス業界に特化したクラウドソフトウェア企業です。営業支援(CRM)から臨床試験、薬事申請、品質管理まで、業界の業務プロセスを一気通貫でカバーするアプリケーション群を提供しています。

創業者のピーター・ガスナーCEOはセールスフォース・ドットコム初期のクラウド開発に携わった人物で、同社は米上場企業として初めてパブリック・ベネフィット・コーポレーション(公益企業)へ移行したことでも知られます。

同社が8月26日に発表した2026年5〜7月期決算は、売上高9.28億ドル、非GAAP営業利益4.16億ドルと会社計画を上回りました。ガスナーCEOは「CRMにとって過去最高の四半期だった」と総括し、AIエージェント製品「Veeva Falcon」の急速な進展を強調しました。

「第4の事業」としてのエージェント労働

ガスナーCEOはFalconを「エージェント労働」と定義します。「我々はこれまでクラウドソフトウェア、データ、コンサルティングを手がけてきた。エージェント労働はそれらとは異なる4つ目の事業だ」と説明。ソフトウェアの利用権ではなく、AIが遂行する業務そのものを売るという発想です。

導入の軽さも従来のソフトウェアと一線を画します。ガスナーCEOは「Falconには大掛かりな実装がない。データマッピングも、システム切り替えも、ETL(データ移行処理)もない」と述べました。「早期導入顧客が今すでに稼働して成功していたら、Falconは飛ぶように売れていただろう」とも語っています。現在は医薬品安全性監視などの領域で5社の早期導入顧客と開発を進めており、年内の初稼働を見込みます。

売る相手も変わります。ガスナーCEOは「エージェント労働にITはほとんど関与しない。安全性業務向けのソリューションなら、それは安全性チームの予算の話だ」と述べました。買い手は事業部門のトップや業務責任者であり、予算はIT予算ではなく人件費や業務委託費に近い財布から出ることになります。もっとも同社の場合、安全性や臨床、薬事の領域は「もともと6割方はビジネスサイドへの販売だった」といい、10年来の顧客接点をそのまま生かせると説明しています。

品質保証の考え方も人間の労働に寄せています。ガスナーCEOは「エージェント労働は人間の労働と同じで非決定的だ。人間に適切な訓練とガードレールを課すのと同じことをエージェントにも行う」と述べました。作業結果はVaultアプリケーション上で人間が確認できる設計です。新市場ゆえにFalcon事業の責任者はCEO直属とし、「まだすべての答えを持っているわけではない」と慎重な姿勢も崩していません。

AIの値段は「年齢」で決まる

Falconの価格設計について、ガスナーCEOは印象的な比喩を使いました。曰く、「10代のFalconならxかかるとすると、25歳のFalconならもう少し高くなる。」AIの能力は急速に向上するため、成熟度に応じて価格が段階的に上がる契約を想定しています。

続きを読むには

Strainerプレミアムに
ご登録いただく必要があります。

初回30日間無料体験実施中!

無料で続きを読む
または

人気記事