カウンター販売の本家が売り場を畳む。Estée Lauder決算が映す美容の買われ方

Estee Lauder Companies, Inc. (The)

百貨店の一角にカウンターを構え、美容部員が一人ひとりの肌に合わせて商品を薦める。プレステージ化粧品の代名詞ともいえるこの売り方を成長の土台にしてきた名門が、いまその売り場を自ら畳み始めています。Estée Lauderの再建は、業界の常識の書き換えとともに進んでいます。

2026年6月期決算から浮かぶのは、稼ぎ方の構造が丸ごと置き換わりつつある姿です。売り場は対面のカウンターからECや専門店チェーンへ。収益源はスキンケア一本足からの分散へ。中国での戦い方から広告の買い方まで、事業の土台が同時に組み替えられています。

ステファン・ドゥ・ラ・ファヴェリCEOは説明会の冒頭、この数カ月に市場で浮上した経営への疑問を自ら列挙し、一つずつ潰してみせました。通期は4年ぶりの増収となり、EPSは66%増。数字と同じくらい、経営陣の語り口の変化が目を引く決算でした。

では、凋落が語られた名門は何を畳み、何で稼ぎ直そうとしているのか。買収観測への異例の回答と合わせて、説明会の中身から読み解きます。

自ら築いた売り場を畳む決断

2026年6月期の決算説明会で好業績と並んで語られたのは、売り場の組み替えでした。同社は利益貢献の乏しい百貨店の売り場や直営店から撤退し、世界で美容部員の削減を進めています。構造改革「PRGP」の個別施策の承認は6月末で完了。前回の決算説明会では、人員削減拡大分の約7割が百貨店など採算の低いチャネルの美容部員に関わると説明されていました。

撤退の裏で、消費者が集まる場所への移植が急ピッチで進みます。象徴が3月のM·A·Cの米国Sephora投入です。前回の説明会では発売月にSephora導入店舗でリップブランド首位になったと報告されており、今回もドゥ・ラ・ファヴェリCEOは「4〜6月期に首位の座を取り戻し、シェアも拡大した」と手応えを語りました。

オンラインの存在感は過去最高に達しています。通期のオンライン売上はオーガニックで二桁成長となり、報告売上に占める比率は前年から3ポイント上昇の34%になりました。中国や米国を含む多くの市場で、オンラインチャネルのシェアを押し上げたといいます。

対面のカウンター販売は、同社が長年磨き上げてきた勝ちパターンでした。それを自ら解体するのは、化粧品が「診てもらって買う」ものから「見つけて買う」ものへ変わったからにほかなりません。消費者のいる場所に店を移す。単純ですが痛みを伴う原則を、名門は実行に移しています。

「部屋の中の象」に自ら触れる

説明会の冒頭、ドゥ・ラ・ファヴェリCEOは異例の切り出し方をしました。CEO就任から18カ月、この数カ月に浮上した疑問へ自分から答えるとして、成長を加速できるのか、M&Aをどうするのか、変革で人材が抜けていないか、という3つの論点を並べたのです。

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