米ホームデポは世界最大のホームセンターチェーンです。米国、カナダ、メキシコに2364店舗を展開し、DIY顧客と建設業者などのプロ顧客の双方に建材や工具、家電を販売しています。近年は建材ディストリビューターのSRSやGMSを相次いで買収し、プロ向け流通事業を強化しています。
同社が8月18日に発表した2026年5〜7月期決算は、売上高479億ドル(前年比5.7%増)、調整後1株利益4.92ドル(同5.1%増)でした。既存店売上高は1.7%増と会社の想定を上回り、通期ガイダンスを据え置きました。決算からは、関税還付や即時配送、店内AIなど、米国の小売と消費の変化を示すトピックが浮かび上がります。

今期最大の特殊要因は、IEEPA(国際緊急経済権限法)に基づく関税の還付金です。リチャード・マクフェイルCFOによると、同社は6月末に総額7.3億ドルの還付金を受け取りました。このうち6.85億ドルが売上原価の減少として今期の損益に反映。残る4500万ドルは在庫の消化に伴い期中に計上されます。
還付金の効果で、粗利率は33.7%と前年から約25bps改善しました。内訳をみると、還付金の総押し上げ効果が約145bpsです。一方で燃料やエネルギー、樹脂や金属といった製品原価の上昇が約60bps、GMSなど買収に伴うミックス変化が約60bpsの押し下げ要因となりました。
注目すべきは、同社がこの還付金を利益の上積みに使わない姿勢です。マクフェイルCFOは「関税還付は市場全体にもたらされた恩恵であり、ホームデポ固有のものではない」と述べました。還付金は想定外のコスト上昇の相殺と、店頭価格の維持に充てると説明しています。通期では還付の恩恵とコスト増が完全に打ち消し合う想定です。
関税制度そのものが期中に動き続けている点も見逃せません。ウィリアム・バステック商品担当執行副社長は、2月に更新された関税規定「セクション101」が7月に失効し、「セクション301」に置き換わったことが想定外のコスト要因になったと明かしました。米国企業にとって関税は、もはや静的な前提条件ではなく、四半期ごとに損益を動かす変数になっています。
決算発表と同じ日、同社は即時配送サービス「エクスプレスデリバリー」の全米展開を発表しました。数万点の商品を対象に、少額の定額料金で注文から3時間以内に届けるサービスです。ジョーダン・ブロッギ執行副社長は「実際の配達の過半数は1時間未満で完了している」と述べました。今後さらに約束時間の短縮を進める方針です。
配送スピードの向上は宅配可能な小型商品にとどまりません。在庫のある小型商品では、すでに配達の65%超が当日または翌日に届いています。木材や家電のような大型商品でも、直近18カ月で米国の配送リードタイムを約45%短縮しました。現在は在庫品の大型配送の約55%が2日以内に完了しています。
家電では購買行動の変化に合わせた供給網の再構築も進みます。バステック氏は「即時購入へのシフトが進んでいる」と指摘し、主要製品を在庫として持ち翌日に届ける体制を人口カバー率で約60%まで広げたと説明しました。対象地域では売上の押し上げ効果を確認しており、対象商品と地域を年内に拡大する計画です。
こうした物流投資はオンライン販売の成長に直結しています。デジタル経由の売上高は前年比11%増となり、2桁成長は5四半期連続です。ブロッギ氏は「トラフィックとコンバージョンがともに増加した」と述べました。フードデリバリーで定着した即配の体験が、肥料や配管部品といった商材にまで広がりつつあります。