顧客は2年先まで発注を確約。AMAT決算が映すAI半導体の供給逼迫

アプライド・マテリアルズ

米アプライド・マテリアルズ(AMAT)は、半導体製造装置の世界最大手です。成膜、エッチング、検査など、チップ製造の幅広い工程をカバーする装置を手がけます。顧客にはTSMCやサムスン電子、インテルなど世界の主要チップメーカーが名を連ねます。装置販売に加え、納入後の保守・改善を担うサービス事業も収益の柱です。

同社は2026年8月13日、2026年5〜7月期の決算を発表しました。売上高は前年比25%増の91億ドルで、四半期ベースの増収額として過去最大を記録しました。調整後EPSは前年比41%増の3.5ドルです。AI向け半導体の生産投資が需要を押し上げており、決算説明会では経営陣が業界の構造変化を具体的に語りました。

顧客が「8四半期分の予測」を提出する

半導体装置業界は、需要が数年周期で急変する「シリコンサイクル」の代名詞でした。今回の説明会では、その前提を覆す発言が相次ぎました。ゲイリー・ディッカーソンCEOは「最大手顧客は長期のコミットメントと、8四半期分のローリング予測を提供している」と述べました。装置メーカーが2年先までの詳細な需要データを受け取る状況は、従来にない光景です。

ブライス・ヒルCFOは、変化の中身をさらに具体的に説明しました。顧客からは従来より長いリードタイムで発注書を受け取っているといいます。加えて、キャンセル料や特急対応料といった条項も契約に組み込まれるようになりました。需給の逼迫が、発注の在り方そのものを変えています。

視野はさらに先まで伸びています。ヒルCFOは「一部の顧客との会話は2030年まで及ぶ」と明かしました。大口顧客については技術ロードマップを共有しており、約5年分の見通しを持てるといいます。8四半期の時点でノードや装置の種類が具体化し、その情報がサプライヤーにも共有される仕組みです。

背景には、先端チップの需給ギャップがあります。ディッカーソンCEOは「AIが半導体需要をかつてない水準に押し上げ、先端チップの需要と供給には大きなギャップがある」と説明しました。顧客が装置の納期を確実に押さえるため、自ら情報を差し出す構図です。この可視性の高さを根拠に、同社は2027年も力強い成長が続くと明言しました。

成長を規定するのは「クリーンルームの床面積」

決算説明会で繰り返し登場した言葉が「クリーンルーム」です。ヒルCFOは2027年以降の成長について「何が成長を規定するかといえば、クリーンルームの利用可能性だ」と述べました。資金でも装置の生産能力でもなく、チップを作る物理的な空間が制約になるという認識です。顧客のクリーンルーム建設計画が、そのまま装置需要の上限を決めます。

顧客側の動きも変わってきました。ディッカーソンCEOは「顧客はスペースを拡張し、装置を前倒しで受け取るために非常に創造的になっている」と語りました。2026年に入り、顧客がクリーンルームの空間制約を解消する方法を見つけたことで、装置納入の需要が大幅に増えたといいます。同社が通期見通しを引き上げた直接の理由も、この動きです。

この制約は、新しい製品カテゴリーを生み出しています。同社は「クリーンルームの単位面積あたりのウエハー処理量を増やす製品群」の開発を進めています。一例が、DRAM向けの新しいエピタキシー装置です。デバイス性能を高めるだけでなく、従来製品より設置面積を20%削減しました。

同様の製品は複数が顧客の工場で評価中です。ディッカーソンCEOは「すべての顧客が、1平方メートルあたりのチップ生産量を最大化することに注力している」と述べました。省スペース性そのものが装置の価値になる局面です。工場の物理的制約が、装置メーカーの製品戦略を方向づけています。

「全装置を再値付け」で粗利率は13四半期連続改善

装置メーカーは長年、価格交渉で強い立場にあるとは言えませんでした。顧客が少数の巨大チップメーカーに集中しているためです。しかしAMATの粗利率は、13四半期連続で前年比の改善を続けています。2026年5〜7月期の調整後粗利率は50.4%に達し、半導体システム部門に限れば55.4%です。

続きを読むには

Strainerプレミアムに
ご登録いただく必要があります。

初回30日間無料体験実施中!

無料で続きを読む
または

人気記事