値上げは、客を遠ざける行為だと考えられてきました。コストが上がれば価格に転嫁し、客はそれを嫌って足が遠のく。外食業界にとって、この因果は疑いようのない常識でした。
ところが、その常識をあえて手放した企業があります。回転寿司を米国で展開するくら寿司USAです。
同社が2026年3〜5月期に発表した決算には、奇妙なねじれがあります。店を訪れる客の数は目に見えて減りました。にもかかわらず、事業の稼ぐ力はむしろ強まっています。客足が鈍った四半期に、なぜ利益率は上向いたのか。その答えは、値上げをめぐる同業他社との距離の取り方にあります。
くら寿司USAは、日本のくら寿司が米国事業を切り出して上場させた企業です。店舗数はまだ約94で、年20%を超えるペースで出店を続ける成長途上の外食チェーンです。日本の本体とは別に、米国の消費者と向き合いながら独自の戦略を描いています。
安く売ることが、なぜ客単価を押し上げるのか。日本発のアニメやゲームは、どのように客を呼び込む装置になっているのか。そして売上が伸び悩む中で、同社は何を削って利益を作り出したのでしょうか。