ロボットや自動運転を支える「エッジAI」関連銘柄!注目の国内企業
DXの進展とともに、AIの活用は新たな局面を迎えています。
従来のクラウド集中処理に加え、データが生成される「現場(エッジ)」でAIが瞬時に判断を下す「エッジAI」の重要性が急速に高まっています。
低遅延、高セキュリティ、通信コスト削減といったメリットから、スマート工場や自動運転、サービスロボットなどでの実装が加速。
本稿では、ハードウェア、ソフトウェア、半導体IPといった多様なアプローチで、この成長著しいエッジAI市場に挑む国内の企業を紹介します。
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1966年創業のNSW(日本システムウエア)は、長年にわたり多様な業界へITソリューションを提供してきた独立系システムインテグレーターです。
製造、流通、金融といった幅広い分野の顧客基盤が同社の強みであり、近年はその基盤を活かしてIoTやAIを活用したDX支援に注力しています。
同社のエッジAIへのアプローチは、顧客の現場課題に密着したソリューションとして具体化されています。
そのアプローチは、デバイスからクラウドまでをトータルコーディネートするIoTクラウドプラットフォーム「Toami」を核としています。
これをベースに、データの蓄積から分析・活用までを支援するIoT&AIサービスを提供。
さらに、各種センサー・デバイスベンダーと提携することで、顧客ごとに最適なエッジデバイスソリューションを提案している点も特徴です。
これは、長年のシステム開発で培った業務知識と、最新のAI・IoT技術を融合させることで実現しており、同社のSIerとしての総合力を示しています。
既存の強固な顧客基盤に対し、エッジAIを含むDXソリューションを提案・展開していくことは、同社にとって大きな事業機会となる可能性があります。
一方で、技術の進化は著しく、最新トレンドへの追随と、それを実装できる高度IT人材の育成が、今後の競争力を左右する重要な鍵となるでしょう。
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1984年設立のACCESSは、組込みソフトウェアの分野で長年の歴史と実績を持つ企業です。
同社は、IoT、Webプラットフォーム、ネットワークの3つの事業を柱とし、世界中の多様なデバイスに技術を提供しています。
同社がエッジAI市場で発揮する競争優位性は、機器に直接組み込まれるソフトウェア開発で培われた高度な技術力と、省リソース環境での動作を前提とした豊富な知見にあります。
エッジデバイス上でAIの処理結果を可視化・操作する基盤技術が、同社の強みの源泉です。
その代表例である高性能ウェブブラウザ「NetFront® Browser」シリーズは、スマートテレビや車載インフォテインメントシステムなど、世界中で数多くの採用実績を誇ります。
近年では、これらの技術を応用し、エッジデバイスからのデータ収集や管理を効率化するクラウドプラットフォーム「ACCESS Connect」なども展開しています。
IoTの普及により、あらゆるモノがインターネットにつながる時代において、同社が持つ組込み技術の重要性は増していくでしょう。
グローバルな市場での競争は激しいものの、同社が長年築き上げてきた顧客基盤は、今後の事業展開において大きな強みとなると考えられます。
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ジーデップ・アドバンスは、GPUを中心としたAI・ディープラーニング向けコンピューティングソリューションを提供する企業です。
2016年の設立以来、特にNVIDIA社の高性能製品群の提供において高い実績を誇り、国内のAI開発におけるハードウェアインフラの供給者として重要な地位を占めています。
同社のエッジAIへの貢献は、AI開発用のワークステーション「DeepLearningBOX®」や、推論処理に特化した「InferenceBOX」といった自社ブランド製品に集約されています。これらの製品は、企業や研究者のAI開発を対象としています。
具体的には、AIの「学習」フェーズでは高性能なワークステーションとしてモデル構築を、そして「推論」フェーズではエッジ端末として現場でのアプリケーション利用・検証を可能にします。
これにより、研究開発全体のスピードアップに貢献しています。
NVIDIA社の最上位パートナーとしての強固な関係性は、最新技術への迅速なアクセスを可能にし、同社の競争力を担保しています。
今後、AIモデルの高度化に伴い、高性能な開発・推論環境の需要は一層高まることが予想されます。
しかしながら、事業の中核が特定の半導体メーカー製品に深く依存しているため、世界的な半導体供給網の変動や、サプライヤー企業の戦略変更が事業リスクとして常に存在すると考えられます。
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2015年設立のAI insideは、手書き文字などを高精度でデジタル化するAI-OCR「DX Suite」を開発・提供する企業です。
この主力製品で培ったAI技術と顧客基盤を基に、より広範なAIプラットフォームカンパニーへの進化を目指しています。
同社のエッジAI戦略の核となるのが、オンプレミス環境でAI-OCRを利用できる「AI inside Cube」です。
これは、セキュリティ要件が厳しい金融機関や自治体など、クラウド利用に制約がある顧客層のニーズに応えるものです。
データを外部に出すことなく、セキュアな環境下で高度な文字認識処理を可能にすることで、新たな市場を開拓しました。
さらに、誰でも簡単に高精度なAIを作成できる「Learning Center」を提供し、AI開発の民主化を推進しています。
AI-OCR市場での確固たる地位を築いた今、同社の将来はエッジデバイスとAI開発プラットフォームを両輪に、多様な業界・用途へソリューションを水平展開できるかにかかっていると言えるでしょう。
そして、激化する競争環境の中で差別化を図るべく、「誰もが特別な意識をすることなくAIを使える、その恩恵を受けられる社会」を目指す「AI inside X」というビジョンを掲げています。
顧客自身によるAI活用を促す「AI Growth Program」などの提供は、このビジョンを具体化する取り組みです。
こうした独自の戦略が結実し、AIがより社会に浸透した際には、同社のさらなる事業拡大が見込まれます。
>>AI insideについてもっと詳しく:高機能OCRで売上13億円予定!創業4年「AI inside」が東証マザーズ上場
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2005年設立のヘッドウォータースは、AIインテグレーションサービスを主軸に事業を展開する企業です。
同社は、顧客企業のDXをAI活用という側面から支援し、企業の課題解決に貢献しています。
同社の強みの一つは、マルチAI・マルチクラウドを複合的に組み合わせる技術力です。
この技術により、独自のプラットフォーム「SyncLect」を通じてMicrosoftやGoogleなどのAIサービスを柔軟に活用することを可能にしています。
さらに、エッジAI領域では、NVIDIA社の「Jetson」プラットフォームを活用したソリューションも手掛けており、リアルタイム性が求められる現場でのAI活用を推進しています。
高まるDX需要を背景に、同社の事業機会は拡大していくと考えられるでしょう。
一方で、競争優位性を維持するためにはいくつかの課題も存在します。
まず、AI関連業界の極めて速い技術革新に追随し続ける必要があり、それを実現するためには、高度なAI人材の継続的な確保と育成が不可欠となるでしょう。
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2018年に設立されたニューラルグループは、AI技術を駆使したソリューション開発を行う企業です。
同社は、AIを活用したマーケティング支援やエンジニアリングサービスを国内外で展開しており、特に画像認識技術を応用したリアルタイム解析に強みを持っています。
同社のエッジAI戦略の中核を担うのは、AIソフトウェアを搭載したサイネージやエッジコンピュータ、AIカメラなどのハードウェア群です。
これらは、店舗や施設など、データが生成される「現場」で即座に情報を処理。
これにより、顧客の属性や動線をリアルタイムで分析し、最適な広告配信を行うなど、高度なマーケティング施策を可能にしています。
また、タイを含む海外に拠点を設け、早期からグローバル市場への展開を進めている点も同社の特徴です。
エッジAI市場の拡大は、同社にとって大きな追い風となることが期待されます。
しかし、急速な技術進化に対応するための継続的な研究開発が、今後の成長に向けた重要な課題となるでしょう。
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2002年設立のディジタル・メディア・プロフェッショナルは、GPUの設計資産であるIPコアとAI技術を融合させた半導体開発を手掛ける企業です。
独自のグラフィックス技術を基盤に、AI、特に画像認識分野において、差異化された技術を提供し、社会・環境課題の解決に貢献しています。
同社は「Making the Image Intelligent」をパーパス(存在意義)として掲げています。
同社の技術ポートフォリオは多岐にわたります。
中核となるAIプロセッサIP「ZIA™」シリーズは、特にロボットの自律走行に不可欠なVisual SLAM技術やステレオビジョン処理に強みを発揮します。
一方で、LSI製品も手掛けており、画像処理半導体「RS1」は主にアミューズメント機器向けに量産出荷を継続しています。
さらに、新たな取り組みとしてAI LSI(FPGA)の提供や、次世代エッジAI半導体「Di1」の開発にも着手。
この「Di1」は、AMRやスマートファクトリーといった産業分野のエッジデバイスで、低消費電力かつ高性能なAI処理を実現することを目指しています。
FAやサービスロボット市場の拡大は、同社の「眼」の技術にとって大きな追い風となるでしょう。
しかし、半導体業界は技術革新のサイクルが非常に速く、研究開発への継続的な投資が不可欠です。
また、主要な採用先の市場動向に業績が左右されるリスクも考慮すべき点と言えます。