人手不足という社会課題に商機。店舗DXを支えるセルフレジ関連銘柄
人手不足が深刻化する小売・飲食業界において、店舗運営の効率化と顧客体験の向上は喫緊の課題です。
その解決策として、セルフレジを中核とした「店舗DX」が急速に普及。単なる会計の自動化に留まらず、店舗経営そのものを変革する可能性を秘めています。
本記事では、こうしたセルフレジを巡る主要プレイヤーたちの戦略と、それを支える技術やビジネスモデルをご紹介します。
東芝テックは、POSシステムで世界No.1、国内で約5割というシェアを誇る、リテールソリューションのリーディングカンパニーです。
同社は今、この強固なハードウェア基盤を活かし、店舗のDXを総合的に支援する「グローバルトップのソリューションパートナー」への変革を加速。その戦略の中核の一つが、グローバルリテールプラットフォーム「ELERA」です。
これは、POSや不正利用防止、セキュリティといった多様な機能を、店舗が必要に応じて導入できるサービスで、海外の大手小売店を中心に採用が進んでいます。
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セルフレジの領域でも技術革新は留まりません。
多様なラインナップに加え、RFID技術と融合させ、買い物かごの商品を瞬時に一括会計するシステムも提供。さらに、非接触・空中ディスプレイ技術を用いた次世代レジや、無人決済店舗システムの実証にも取り組み、未来の店舗像が描かれています。
また、同社はPOSデータという「宝の山」の活用にも本格的に着手。生成AI等を活用して業種横断での課題解決を目指す新会社「ジャイナミクス」を設立し、データを新たな価値創造の源泉とする取り組みが始まっています。
世界中の大手小売店との強固な顧客基盤と、グローバルな営業・保守ネットワーク。そして、ハードウェアからソフトウェア、サービスまでを一貫して提供できる総合力。東芝テックは、これらの強みを武器に、小売業界が抱える課題に対し、最先端のソリューションで応え続けています。
>> 東芝テックの企業情報
グローリーは、日本で初めてお金を数える機械を開発した、通貨処理機のパイオニア企業です。
同社の競争優位性の源泉は、国内シェア約5割を誇る「レジつり銭機」にあります。
このコア製品を組み込んだセルフレジは、会計の自動化によるレジ待ち時間の短縮や、現金管理業務の大幅な省力化を実現。店舗スタッフの負担を軽減し、より付加価値の高い接客業務への集中が可能になります。
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グローリーの戦略は、国内のハードウェア提供に留まりません。海外M&Aを積極的に活用し、グローバルなリテール市場への展開を加速。特に、海外子会社が持つソフトウェアやプラットフォームの能力と、自社のハードウェア技術を融合させることで、総合的な店舗ソリューションの提供が可能です。
さらに、同社はPOSデータを活用した新たな価値創造にも挑戦。リアル店舗の購買データを可視化・分析して効果的なマーケティングを支援するソリューションや、ローコストで出店可能な無人決済店舗システム「TOUCH TO GO」なども展開し、未来の店舗像を提案しています。
通貨処理という「お金」の識別に特化した技術と、グローバルに拡大する顧客基盤。この両輪を軸に、グローリーは店舗のDX化という市場のニーズに対応するソリューションを展開しています。
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サトーは、バーコードやRFIDといった自動認識技術を核に、人やモノに情報を紐付ける「タギング」ソリューションを提供する企業です。
同社は今、そのコア技術であるRFIDを活用し、小売業界が抱える人手不足や業務効率化といった課題に、セルフレジや在庫管理の革新を通じて応えています。
電波を用いて非接触で複数のタグ情報を一括で読み取れるこの技術をセルフレジに応用することで、顧客は買い物かごの商品を一つずつスキャンすることなく、瞬時に会計を済ませることが可能になります。
これにより、レジ待ち時間の大幅な短縮と、顧客体験の向上が実現されます。
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同社の取り組みは、レジ業務の効率化に留まりません。小売店向けSaaS「大車輪®」シリーズは、RFIDを活用して店舗やバックヤードの在庫をリアルタイムで把握することを目的としています。これにより、品切れの防止や、棚卸し作業の負担軽減などが期待されます。
サトーは、こうしたハードウェア、ソフトウェア、ラベルなどの消耗品、そして保守サービスまでを組み合わせた「DCS & Labeling」という独自のビジネスモデルを展開。
単に製品を売る「モノ売り」から、顧客のROIまでを提示する課題解決型の「コト売り」へと、事業の進化を推進しています。
サトーは、RFIDという強力な技術を武器に、店舗のあらゆる場面での効率化と、持続可能なサプライチェーンの実現に貢献し続けています。
>> サトーの企業情報
スマレジは、iPadなどを活用したクラウド型タブレットPOSを主軸に、小売店や飲食店などの店舗運営のDXを支援する企業です。
同社は、人手不足やコスト削減といった店舗が抱える課題に対し、多様なセルフレジ機能を提供することで、業務効率化と顧客体験の向上に貢献しています。
スマレジのソリューションは単一のセルフレジではありません。
顧客が商品のスキャンから会計までを行う「フルセルフ」、支払いのみを顧客が行う「セミセルフ」、飲食店向けの「券売機」や「テーブルオーダー」、そして顧客自身のスマートフォンで注文・決済が完結する「モバイルオーダー」まで、店舗の業態やオペレーションに合わせ、最適な「セルフ化」の形を提案できる点が大きな特徴です。
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これらのサービスは、売上分析や在庫管理など100以上の豊富な機能を備えたPOSシステムがその核となります。
月額課金を中心としたSaaSモデルであり、IR資料によると解約率は低い水準で推移していると報告されています。これは、同社のストック型の収益モデルを特徴づける要素の一つです。
スマレジは、クラウド型のPOSシステムをはじめとする柔軟なソリューションを提供することで、日本のサービス業のDX化を推進しています。
>> ローンチ3年で黒字化したドル箱「スマレジ」 代表が語るクラウドPOSレジ市場で天下を取る“勝算”
日本プリメックスは、1979年の創業以来、産業用小型プリンタの専門家として、社会の様々な自動化・省力化を支えてきた企業です。
同社は、セルフレジや券売機といったKIOSK端末に組み込まれるプリンタや周辺機器を提供することで、リテールテックや交通、医療など幅広い分野のDXに貢献しています。
同社の事業は、自社開発のオリジナル製品と、国内外の有力メーカー製品を扱う代理店事業の両輪で構成されています。このメーカーと商社の機能を併せ持つユニークな立ち位置が、顧客の多様なニーズに対して最適なソリューションをトータルで提案できる強みとなっています。
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主力となるのは、セルフレジや自動精算機に組み込まれる高信頼性のキオスクプリンター。無人環境での安定稼働を前提とした、ユーザー目線の設計が特徴です。
近年では、店舗の省人化ニーズを背景とした自動釣銭機の需要が、同社の事業における重要な要素となっています。プリンタだけでなく、キャッシュドロアやスキャナー、それらを連携させる制御装置までを一括で提供できる点が、同社のソリューションの特徴です。
セルフサービス化が進む現代において、レシートやチケットを発行する小型プリンタは、デジタルとリアルを繋ぐ重要な接点です。日本プリメックスは、このニッチながらも不可欠な市場で、長年培った専門性と技術力でその基盤を支え続けています。
TBグループは、電子レジスターやPOSシステムの分野で50年以上の歴史を持つ、店舗向けソリューションの専門企業です。
同社は今、長年培ってきたハードウェア開発のノウハウを基盤に、従来の売り切り型から、継続的な収益を生むストック型ビジネスへの大きな転換を推進。
その変革を象徴するのが、クラウド対応のセルフレジシステム「CashHive」や、新ブランド「GO!プラットフォーム」です。
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特に「GO!REGI」はサブスクリプション型のPOSレジサービスとして、導入コストを抑えたい店舗のDXニーズに応えます。これらは、同社が目指すストック型収益モデルへの転換を牽引する重要なサービスと位置付けられています。
一方で「CashHive」は、他社の高性能な自動つり銭機と連携し、現金とキャッシュレスの両方に対応するなど、様々な業態に合わせて柔軟なシステム構築が可能な点が特徴です。さらに、多言語対応や直感的な操作性により、店舗スタッフの業務負荷軽減と、顧客の利便性向上が両立されています。
同社は、累計330万台以上の出荷実績を持つものづくりの知見を活かし、サービス主導のビジネスモデルへの転換を進めています。
>> TBグループの企業情報