持続可能な海底資源開発銘柄:環境と経済のバランスを追求する国内企業
原油・天然ガス市場は、世界経済や地政学的リスク、為替変動といった多様な要因に影響を受ける一方、脱炭素社会への移行はエネルギー業界に大きな変革を促しています。
こうした背景から、各企業は既存の石油・天然ガス事業の効率化・クリーン化を進めています。
加えて、再生可能エネルギーやCCS(二酸化炭素回収・貯留)、クリーン水素・アンモニア、さらにはメタンハイドレートといった新たな海底資源開発への投資を加速させています。
本記事では、この変化の波を捉え、技術革新を通じて持続可能なエネルギー供給体制の構築を目指す国内企業を紹介します。
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株式会社INPEXは、石油・天然ガスなどの鉱物資源の探鉱、開発、生産、販売を主要事業とする企業です。
2025年5月13日に発表された第1四半期決算短信によると、同社はイクシスプロジェクトをはじめとする主要プロジェクトの安定操業を基盤とし、連結業績を着実に進めています。
同社は2050年までのネットゼロ排出目標を掲げ、再生可能エネルギーやCCS事業といった低炭素ソリューションの提供にも注力しています。
INPEXは、メタンハイドレート開発の初期段階において、米国アラスカ州で実施された長期陸上産出試験の進捗が報告される検討会にオブザーバーとして参加した実績があります。
また、同社は過去にメタンハイドレートの基礎試錐実績を有しており、今後のガス資源開発における同社の技術的知見や経験は、引き続き注目されるでしょう。
加えて、石油・天然ガス分野のクリーン化を推進しつつ、CCSやクリーン水素・アンモニアといった新たな事業領域への投資も積極的に行い、エネルギー転換における主導的な役割を果たすことを目指しています。
一方で、同社の事業は、原油価格や為替レートの変動、生産・販売計画の進捗、および政府規制などの不確実な要素に大きく影響されます。
特に、低炭素エネルギーへの移行に伴う原油・天然ガス価格の下落や、内部炭素価格(ICP)の上昇は、海底資源資産の評価に重要な影響を与える可能性があります。
これらの市場環境の変化に柔軟に対応し、技術革新を通じて競争力を維持することが、INPEXが今後も競争力を維持し、事業を継続していく上で重要な要素となるでしょう。
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日揮ホールディングス株式会社は、1928年に設立された日本の総合エンジニアリング企業です。
同社は、プラントエンジニアリング分野で国際的に認知された実績を持つ企業であり、エネルギーソリューション、サステナブルソリューション、ファシリティソリューションの3つの主要分野で事業を展開しています。
特に石油、天然ガス、LNGなどのプラント建設や、水素・燃料アンモニア、CCSといった低・脱炭素分野の技術開発とプロジェクト遂行に強みを持っています。
同社は、洋上LNGプラントの建造で世界有数の実績を持ち、海洋石油・ガス開発分野にも関与しています。
また、浮体式海洋石油生産・貯蔵・出荷設備上での高濃度CO2分離回収・海底再注入技術の経済性検討など、海底資源開発における脱炭素化ソリューションにも取り組んでいます。
世界各地で多岐にわたるプロジェクトを手掛けており、特にサステナブルソリューション分野において積極的な事業展開を進めています。
例えば、グリーン水素製造プラントの基本設計役務、CO2分離回収・利用設備の事業化調査、SAF製造設備の開発など、多岐にわたる取り組みを行っており、これらの技術とサービスは、脱炭素社会の実現に貢献するものと考えられます。
しかしながら、同社の事業は、金利上昇や建設費用等の増加による顧客の設備投資時期の先送り、または海外プロジェクトにおける工事採算の悪化といったリスクに直面しています。
また、触媒やファインセラミックスといった機能材製造事業も、半導体市場の回復や電気自動車関連需要に支えられているものの、世界経済の変動による影響を受ける可能性があります。
これらの課題に対し、技術革新と効率的なプロジェクト管理で対応することが、同社の将来的な成長を左右すると考えられます。
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三井海洋開発株式会社は、1987年に設立された、浮体式海洋設備EPCIおよびチャーターサービスを提供する企業です。
同社は、浮体式海洋石油・ガス生産設備の建造と関連サービス提供を主要事業としています。
特に超大水深かつ大型のプロジェクトにおいて強みを発揮し、設計から建造、設置、さらにはオペレーション&メンテナンスまでを一貫して手掛けることで、顧客に対して包括的なソリューションを提供しています 。
浮体式海洋石油・ガス生産設備分野で培った設計技術を活用し、メタンハイドレート開発に取り組んでおり、特に「表層型メタンハイドレート」の開発に注力しています。
これは将来のエネルギー供給源の一つとして注目される分野です。
また、新規案件の受注や既存プロジェクトの契約延長により、同社は市場における地位を維持しています。
しかし、同社の事業は、原油価格や為替レートの変動、特にブラジルレアル高による金融費用の増加など、外部環境の変化に影響を受ける可能性があります。
加えて、建造プロジェクトの進捗や、新たな技術開発への投資も、将来の収益性に影響を与える要因です。
同社は、これらのリスクを適切に管理しながら、エネルギーの安定的かつ持続可能な供給に貢献し、事業モデルの進化を通じて、市場における競争力維持と発展を目指しています。

石油資源開発株式会社は、1955年設立の日本を拠点とする企業です。
同社は、日本国内外で石油や天然ガスの探鉱、開発、生産、販売を主要事業としており、特に国内のインフラ・ユーティリティ事業においては、天然ガスやLNGの供給、電力販売なども手掛けています。
同社は、脱炭素社会の実現に向けた「JAPEX2050」の目標を掲げ、石油・天然ガス事業の収益力強化と持続的な事業基盤の構築を目指しています。
同社は、E&P事業を主要事業の一つと位置づけています。特に、世界で初めてとなるメタンハイドレートの海洋産出試験に成功するなど、メタンハイドレート開発における技術的リーダーシップを示しています。
将来のエネルギー安定供給に貢献するため、砂層型メタンハイドレートの商業化に向けた技術開発に注力している点が特徴です。
同社の事業は、原油価格や為替レートの変動、生産・販売計画の進捗、および政府規制などの不確実な要素に影響を受ける可能性があります。
また、海外事業における税制変更など、市場環境の変化が事業収益性に影響を与える可能性を考慮し、リスク管理を徹底しています。
これらの課題に対し、メタンハイドレートのような新たなエネルギー資源開発への取り組みは、同社の事業の持続可能性を高める可能性を秘めています。