テクノロジーの心臓部!精密モーター銘柄のトレンドと展望

現代社会において、精密モーターは私たちの生活や産業を支える不可欠な存在です。
EVの普及に伴うトラクションモーターの需要拡大から、ロボットやAI関連技術の進化を支えるサーボモーター、さらにはデータセンターや医療機器を動かす小型・高効率モーターまで、その活躍の場は広がる一方です。
脱炭素社会への移行が加速する中で、モーターにはさらなる省エネルギー性能や小型・軽量化が求められ、各メーカーは環境負荷低減への貢献も重視しています。
一方で、地政学的リスク、サプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰といった外部環境の変動は、業界全体にとって大きな課題です。
このような状況下で、企業はグローバルな生産体制の最適化やBCPの強化に努めています。
本記事では、精密モーター業界を牽引する企業の戦略と今後の展望を深掘りします。
各社がどのように技術革新と市場ニーズに対応し、持続的な成長を目指しているのか、その実像に迫ります。
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1973年設立のニデック(旧日本電産)は、精密小型モーターから超大型モーターまで、幅広い製品群を擁する世界トップクラスのモーターメーカーです。
同社の強みは、HDD用モーターで培った技術力を基盤に、M&Aを積極的に活用し、車載、家電、商業、産業用など多岐にわたる分野へ事業領域を拡大してきた点にあります。
特に注力するのが車載事業で、EVの普及を見据え、駆動力を生み出すトラクションモーターシステム「E-Axle」の開発・量産に力を入れています。
また、温室効果ガス排出量削減への貢献も重視しており、2040年度までに事業活動におけるCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、省エネ製品の開発や再生可能エネルギーの活用を推進しています。
一方で、同社は地政学的リスクやサプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰などを事業運営上のリスクとして認識しており、グローバルな生産・販売体制の最適化やBCP(事業継続計画)の強化に取り組んでいます。
市場の変動に対応しつつ、M&Aによるシナジーを最大限に引き出し、持続的な成長に向けた同社の取り組みが続きます。
>>ニデックについてもっと詳しく:対立激化!ニデックvs牧野フライス『敵対的買収』の行く末やいかに
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ミネベアミツミは、1951年に日本ミネチュアベアリングとして設立され、ボールベアリングやモーター、半導体などを製造・販売する総合部品メーカーです。
同社は、超精密機械加工技術と、それをグローバルで展開する大量生産技術に強みを持っています。
そして、これらの技術を融合させる「相合」を最大の特長とし、例えばモーターにセンサーや半導体を組み合わせることで、高機能・高付加価値な製品を生み出し、競争優位性を築いています。
モーター事業においては、HDD用スピンドルモーターやステッピングモーター、ファンモーターといった精密小型モーターが主力です。
DCモーターを含む主力事業において圧倒的なシェアを獲得することを目指しています。
さらに、アナログ半導体事業との連携により、モーター制御技術においても高い競争力を有しています。
同社は、自然災害やサプライチェーンの混乱、地政学的リスクなどを事業上のリスクとして認識しており、生産拠点の分散化やBCPの強化を進めています。今後の成長戦略としては、既存事業の強化に加え、M&Aやアライアンスを積極的に活用し、新たな事業領域の開拓を目指す方針です。
多様な技術の「相合」によっていかにシナジーを創出し、市場のニーズを超える製品を生み出せるかが、同社の事業展開における重要な要素となると考えられます。
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1954年に東京科学工業株式会社として設立されたマブチモーターは、小型直流モーターの専業メーカーとして、自動車電装機器市場およびライフ・インダストリー機器市場を中心に事業を展開しています。
同社の競争優位性は、徹底した標準化戦略とグローバルな生産・販売体制にあります。
自動車電装機器市場では、パワーウインドウやドアロック、パワーステアリングなどに使われるモーターを供給しています。
EV化の進展に伴い、モーターの需要はさらなる拡大が見込まれます。
一方、ライフ・インダストリー機器市場では、電動歯ブラシなどの健康医療機器や、OA機器向けのモーターなどを手掛けており、安定した収益基盤を形成しています。
同社は、2030年に向けた経営計画で、事業コンセプト「e-MOTO」を掲げ、Mobility、Machinery、Medicalの3つのM領域に注力しています。
また、持続可能な社会への貢献も重視しており、製品の小型・軽量化や省エネルギー化を通じて、SDGs(持続可能な開発目標)の達成にも取り組んでいます。
市場の変動や原材料価格の高騰といったリスクに対応しつつ、主要な自動車電装機器市場およびライフ・インダストリー機器市場において、同社が安定した成長を維持できるかどうかが、今後の事業動向を評価する上で重要な要素となるでしょう。
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1927年創業の山洋電気は、冷却ファン「San Ace」、無停電電源装置(UPS)「SANUPS」、サーボシステム「SANMOTION」の3つを主力製品とする電機メーカーです。
同社の強みは、これらの製品群を情報通信機器や産業用ロボット、医療機器など、幅広い分野に供給することで、社会インフラの安定稼働に貢献している点です。
モーター関連では、ACサーボシステムやステッピングシステムなどのサーボシステム事業が中核を担っています。
同社はこれらのモーター製品の開発・製造を手掛けており、その技術力は現在も高く評価されています。
これらの製品は、工場の自動化や半導体製造装置、医療機器などに不可欠な部品であり、高い精度と信頼性が求められます。
同社は、自然災害やサプライチェーンの混乱、地政学的リスクなどを事業リスクとして認識し、BCPの策定やサプライヤーの多様化などの対策を講じています。
今後の成長戦略としては、AI関連市場やデータセンター、再生可能エネルギー分野など、成長が見込まれる市場への製品供給を強化していく方針です。
技術革新が著しい市場において、顧客のニーズを的確に捉え、最適なソリューションを提供できるかが、同社の事業成長における重要な要素となるでしょう。
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1937年創業のキヤノンは、カメラやプリンター、複合機などのイメージングおよびプリンティング製品で世界的に知られる企業です。
長年培ってきた光学技術、画像処理技術、精密加工技術は、同社の多様な製品における高精度な動作を実現する基盤となっています。
光装置といったインダストリアル事業が重要な柱の一つです。
これらの製造装置には極めて高い精度で動作する精密なシステムが不可欠であり、同社は多様な自社製品の開発・製造で培われた超精密位置合わせや高速マテリアルハンドリングの技術を活かしています。
また、同社はこれらの製造装置に関して、単なる部品供給にとどまらず、自社製品開発で培った知見を活かした「ソリューション提案」を強みとしています。
同社は、サプライチェーンリスクや自然災害、国際政治経済リスクなどを主要なリスクとして認識しており、グローバルな生産・販売体制の最適化やリスク管理体制の強化に努めています。
今後は、既存事業の強化に加え、メディカル事業や産業機器など、新たな事業領域の拡大を目指しています。
そのため、多様な技術をいかに融合させ、新たな価値を創造できるかが、同社の持続的成長に向けた重要な課題となるでしょう。