【レアアース関連銘柄】リサイクルと素材技術で資源リスクに挑む日本の企業
EVの駆動モーターから洋上風力発電のタービン、データセンターを支えるハードディスクドライブまで、脱炭素化とデジタル社会の進展を支える製品にレアアース(希土類)は不可欠です。
「産業のビタミン」とも呼ばれるこの戦略物資は、今や世界の産業競争力を左右する重要な要素となっています。
しかし、その生産は特定の国に大きく偏在しており、国際情勢の変化が供給網を揺るがす地政学リスクを常に内包しています。
資源ナショナリズムの高まりや各国の政策変更は、レアアースの安定調達を産業界にとって最重要課題の一つへと押し上げました。
本記事の目的は、まずレアアースに関連する企業をリストとして把握していただくことです。 個々の企業の詳細な戦略分析や最新の動向については、Strainerの特集記事や開示検索機能をご活用ください。
finboard
1935年に世界初の磁性材料フェライトの工業化を目的に設立された電子部品メーカーです。
受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品といった多様な事業をグローバルに展開しています。
同社は創業以来のコア技術である磁性材料技術や素材・プロセス技術を基盤とし、受動部品、センサ応用製品、磁気応用製品、エナジー応用製品といった多岐にわたる製品群を展開しています。
特に、磁気応用製品セグメントではデータセンター向けなどで需要が回復するHDD用ヘッドや、希土類磁石を手掛け、ICT市場の進化を支える重要な役割を担っています。
その技術革新を象徴するのが、ネオジム磁石の性能向上に不可欠なレアアース「ジスプロシウム」の使用量を大幅に削減する技術です。
独自のHAL(High-Anisotropy field Layer)構造を開発し、ジスプロシウムを磁石の結晶粒界面に効率よく配置することで、使用量を抑えつつ高い保磁力を維持することに成功しました。
今後、自動車の電動化(xEV)の進展に伴い、高性能磁石の需要はさらに高まるでしょう。
レアアースは産出地の偏在による地政学的な調達リスクや価格変動が常に課題ですが、同社の省ジスプロシウム技術はこれらのリスクを低減し、製品の安定供給やコスト競争力の維持に寄与するものと見られます。
finboard
1926年設立の化学メーカーである信越化学工業は、生活環境基盤材料、電子材料、機能材料、加工・商事・技術サービスの4事業を営んでいます。
同社の製品には、半導体シリコンや塩化ビニル樹脂といった主要なものが含まれます。
電子材料事業では、レアアースを用いた希土類磁石を製造・販売しています。高性能で小型のレア・アースマグネットは電気自動車などの駆動モーターに利用が広がっており、エレクトロニクス産業に貢献しています。
また、同社は独自の技術開発力を競争力の源泉としています。
同社の重要な技術の一つに、独自に開発した「粒界拡散合金法」があります。この技術は、磁石の性能向上に重要なジスプロシウムやテルビウムといった重希土類元素の拡散を、焼結後の熱処理によって必要な量に制御し、粒界近傍に集中配置させます。
これにより、従来の二合金法と比較して保磁力の更なる向上を実現し、効率的な重希土類元素の利用が可能となりました。
このように重希土類元素を効率的に活用する技術は、資源リスクの低減に直結します。
今後、電気自動車や省エネ家電の普及に伴い、高性能磁石の需要はさらに拡大すると見込まれており、同社の技術は安定供給と製品性能の両立を目指す上で、重要な要素の一つとなっています。
>>信越化学工業についてもっと詳しく:「素材の水平展開」で世界を掴んだ信越化学工業、中国リスクの顕在化が逆風
finboard
1884年創業の歴史を持つ企業で、環境・リサイクル、製錬、電子材料、金属加工、熱処理の5つの事業をグローバルに展開しています。
非鉄金属の製錬とリサイクルに独自の強みを持っています。
同社の中核は、鉱石から金属を取り出す「製錬」と、使用済み製品から金属を回収する「リサイクル」を組み合わせた独自の「循環型ビジネスモデル」です。
このモデルにより、希少金属(レアメタル)を含む多様な金属のリサイクルに取り組んでいます。
使用済み電子機器(E-Scrap)などから、金・銀・パラジウムといった貴金属だけでなく、さまざまな希少金属を効率的に回収する高度な技術を保有しています。
この技術力は、資源の有効活用と安定供給に貢献し、サステナブルな社会の実現に向けた重要な役割を担うものです。
DOWAグループは、資源循環や環境問題を解決すべき社会課題と捉え、リサイクルを含む循環型ビジネスの進化を成長機会としています。
特に電気自動車や電子機器関連を成長分野と位置付け、使用済み製品からのレアメタル回収を推進。
一方で、事業は金属相場や為替変動、各国の環境規制といった外部環境の影響を受けやすい側面も持ち合わせています。
finboard
双日は2003年の設立以来、自動車から化学、金属・資源まで多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。
なかでも、先端産業に不可欠なレアアースを含む資源分野は、金属・資源・リサイクルと化学の両セグメントで取り扱われています。
総合商社として世界中に築いた事業基盤が、これらの事業を推進する上での基礎となっています。
化学セグメントでレアアースを取り扱うほか、金属・資源セグメントではリサイクル事業も推進しており、資源の川上から川下までをカバーする総合的な対応力が同社の強みです。
こうした事業活動は、同社が最優先事項の一つと位置づけるサステナビリティへの取り組みとも密接に関連しています。
成長戦略の一つに「3R(リデュース、リユース、リサイクル)事業の深化」を掲げ、資源リサイクルを含むサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
将来、脱炭素社会への移行は新たな事業機会をもたらす一方、その背景にある地政学的な緊張の高まりや環境変動は、サプライチェーン寸断などの事業リスクも内包しています。
こうした外部環境の変化にいかに対応していくかが、今後の成長の鍵となるでしょう。
finboard
1871年創業の総合素材メーカーで、高機能製品、加工事業、金属事業、再生可能エネルギー事業などを展開しています。
非鉄金属から電子材料、セメントまで幅広い製品を手掛ける企業です。
同社は、銅や金などのベースメタル製錬で培った技術力を基盤に、E-Scrap(使用済み電子機器スクラップ)などからのリサイクル事業を強化しています。
同社は都市鉱山からの資源回収分野にも注力しており、特に、使用済みの家電製品などに含まれるレアアース磁石のリサイクル技術開発に取り組んでいます。
開発した技術は、乾式処理と湿式処理を組み合わせた工程を持ち、事前の脱磁処理が不要なため、レアアース磁石を含むローターのまま処理が可能となりました。
この技術は、レアアースを効率的に分離・回収できる可能性を秘めており、現在、将来的な事業化を検討しています。
レアアースは産出地の偏在から地政学的な調達リスクが常に課題とされますが、同社のリサイクル技術は、国内でレアアースを再資源化し、安定供給に貢献するものです。
この取り組みは、資源循環型社会への貢献と同時に、自社のサプライチェーンリスクを低減する上で、大きな強みとなるでしょう。
finboard
AREホールディングスは、貴金属リサイクルを核とする「貴金属事業」と「環境保全事業」の二本柱で事業を展開する企業です。
貴金属事業では、電子材料、歯科材料、宝飾、自動車触媒など多様な分野から貴金属・希少金属含有スクラップを回収・分離・精錬する独自の技術開発を進めています。
また、国内に加え、北米やアジアにも拠点を持ち、グローバルなネットワークを構築しています。
具体的な施策として、各分野から発生する貴金属含有スクラップを回収し、高純度の地金として再生させることで、資源の循環利用を推進しています。
近年の動向として、北米では金銀加工品の市場縮小を受け、加工分野から撤退し、関連する減損損失を計上しました。
一方、トレーディング分野や倉庫分野では営業利益が増加しています。
今後、資源の安定確保や環境負荷低減が重要な社会課題となる中、同社が手掛ける都市鉱山からの資源リサイクルは、これらの課題解決に貢献するものと期待されます。
こうした事業は、同社が目指すカーボンニュートラルの達成にも繋がるものです。
しかし、リサイクルの原料となるスクラップの回収量は経済活動の動向に左右され、また、貴金属の国際相場の変動も事業リスクとなります。
本記事では、レアアースに関連する企業をリストアップしてご紹介しました。
しかし、個々の企業の真の価値や将来性を見抜くためには、表面的な情報だけでは不十分です。
▼Strainerプレミアム会員(有料)なら、さらに深い分析へ

・4,000本以上の有料記事が読み放題:
各社の詳細な事業モデルや戦略、業界構造の変化まで、専門家が徹底的に解説した記事で、本質的な理解を得られます。
・開示検索AIチャットが無制限に:
気になった企業の開示資料について、AIに質問し、瞬時に要点や疑問点を解消できます。
>>プレミアムプランの詳細はこちら
▼まずは無料で試してみる
・無料メルマガ会員登録:
週に一度、最新の注目記事のダイジェストが届きます。まずはここから、Strainerの質の高い情報に触れてみませんか?
>>無料メルマガ会員登録はこちら