【アルミニウム関連銘柄】EV軽量化と資源循環でリードする国内企業
脱炭素社会への移行が世界的な潮流となる中、素材産業は大きな変革期を迎えています。
中でもアルミニウム業界は、その「軽量性」と「リサイクル性の高さ」という特性から、この変革で中心的な役割を担う存在として注目されています。
また、サステナビリティへの要求の高まりは「資源循環」を重要なテーマに押し上げました。
使用済み製品から高品質な再生地金を生み出すリサイクル技術は、CO2排出量削減と資源の有効活用の両面で、企業の競争力を左右する鍵となっています。
本記事では、こうした業界の大きなうねりの中で、独自の技術や戦略で成長を目指す国内のアルミニウム関連企業を紹介します。
各社の取り組みから、市場の未来を探ります。
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神戸製鋼所は、鉄鋼アルミ、素形材、溶接、機械、エンジニアリング、建設機械、電力という7つの事業セグメントを持つ、国内でも有数の複合経営企業です。
アルミニウム事業においては、自動車やIT関連分野向けにアルミ板やアルミ鋳鍛造品などを製造・販売しています。
同社の最大の特徴は、この多角的な事業ポートフォリオを活かし、社会課題の解決にアプローチしている点にあります。
「KOBELCO」ブランドの下、2050年のカーボンニュートラル達成に向けたビジョンを掲げ、グループ全体の総合力を結集して取り組んでいます。
具体的には、自動車の軽量化に貢献する高張力鋼板やアルミ素材の供給に加え、製鉄プロセスにおけるCO2排出量を大幅に削減する「MIDREX®プロセス」といった独自の環境貢献技術を国内外に提供しています。
また、2030年度までに生産プロセスから排出されるCO2を大幅に削減するという具体的な目標も設定しています。
今後の展望として、世界的な自動車の軽量化ニーズや環境規制の強化は、同社の素材事業にとって事業機会となり得ます。
鉄鋼とアルミ、さらには機械や電力といった異なる事業間のシナジーを創出し、新たな価値を生み出せるかが、今後の成長における重要な要素と考えられます。
一方で、鉄鋼・アルミ市況やエネルギー価格の変動は、経営の安定性を左右するリスク要因です。
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三菱マテリアルは、高機能製品、加工事業、金属事業、再生可能エネルギー事業など、多岐にわたる事業を展開する大手非鉄金属メーカーです。
銅や金をはじめとする非鉄金属製錬から、高機能な銅加工品、超硬製品まで、その事業領域は広範にわたります。
同社は「中期経営戦略2030」を策定し、金属資源の循環をビジネスの核に据えることで、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を目指しています。
特にE-Scrapリサイクル事業は、金属事業の重要な戦略であり、有価金属の回収技術を発展させ、処理能力拡大や海外展開を推進するなど注力していますが、市場競争は激化しています。
さらに、2045年度までに温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロにするという野心的な目標を掲げ、地熱発電などの再生可能エネルギー事業にも積極的に取り組むなど、サステナビリティ経営を強力に推進している点が特徴です。
現代社会において、環境問題への対応は企業の重要な責務とされており、同社の資源循環とクリーンエネルギーへの取り組みは、長期的な成長を支える大きな強みとなるでしょう。
E-Scrapリサイクル市場は競争が激化していますが、同社はこの分野を金属事業における重要な戦略と位置づけ、処理能力拡大や海外展開を推進するなど、事業の強化・拡大に取り組んでいます。
他方、非鉄金属価格やエネルギーコストの変動は、同社の事業における主要なリスク要因として挙げられます。
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アルミ圧延品事業を主力とするUACJは、海外に多数の拠点を構え、グローバルに事業を展開するアルミニウム総合メーカーです。
「UACJ VISION 2030」を指針とし、環境負荷の低減を目指しています。
特に飲料用アルミ缶を再びアルミ缶原料として再生する「CAN to CAN」リサイクルは、同社の先進的な取り組みの象徴と言えるでしょう。
技術面では、環境配慮型製品ブランドである「UACJ SMART」を展開し、ニーズの多様化に対応するための研究開発を進めています。
さらに、2050年カーボンニュートラルへの挑戦を掲げ、その実現に向けて低炭素地金の調達やリサイクルの推進、GHG排出量削減に貢献する技術開発などに注力しています。
今後の事業環境を見ると、世界的なEVシフトは同社にとって重要なテーマです。
アルミニウムの軽量性はLCA視点でのGHG排出量削減に貢献するため、自動車部品事業では需要構造の変化が見込まれます。
また、ライフスタイルやヘルスケアといった新分野でのアルミニウム活用も、同社が事業機会として捉えている分野です。
一方で、事業運営上のリスクも存在します。
主原料のアルミ地金や生産に必要なエネルギー価格の市況は製造コストを左右し、グローバルな事業展開は為替レートの変動リスクも伴います。
これらの外部環境の変化にいかに対応していくかが、今後の安定的な成長を実現する上で重要な課題となるでしょう。
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日本軽金属ホールディングスは、原料のアルミナから加工製品まで、アルミの川上から川下までを網羅する事業を展開。
広範な知見と多様な事業群を「チーム日軽金」として一体運営し、高付加価値な商品を生み出す点が強みです。
その製品群は輸送、自動車、食品・健康、環境・エネルギーなど幅広い分野にソリューションを提供します。
同社グループはカーボンニュートラルへの貢献を経営の重要課題と位置づけ、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目指します。
その達成に向け、自動車軽量化部材やEVバッテリー関連部材などの開発に注力。
さらに、リチウムイオン電池の量産技術開発にも他社と共同で着手するなど、未来の市場ニーズを捉えた技術革新を進めています。
今後の事業環境として、EV市場の拡大やデジタル化の進展に伴う高機能材料への需要増が見込まれています。
そこで、同社グループは、独自技術を基盤にアルミ箔や粉末製品を含む高機能材料の開発を進めています。
特に太陽電池用部材の技術開発では、低コスト化につながる成果を発表するなど、これらの市場動向に対応する動きを見せています。
しかし、アルミ地金価格やエネルギーコストの変動は、事業運営上のリスク要因です。
さらに、主要な顧客である自動車や半導体業界の生産動向も業績に影響を与える可能性があり、これらの外部環境の変化への迅速な対応が、今後の安定的な技術的リーダーシップ維持の鍵となるでしょう。
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アルコニックスは、商社流通と製造の2事業を軸に、電子機能材、アルミ銅、装置材料、金属加工の4セグメントで事業を展開しています。
同社はアルミ・銅といった主要な非鉄金属から、レアメタル、レアアースに至るまで幅広い商材を取り扱う専門商社機能と、M&Aによって強化してきた製造機能を併せ持つ「総合企業」として、独自のポジションを築いています。
同社は特に自動車関連取引を有望な成長分野と捉えており、EV化の進展を背景とした事業拡大に期待を寄せています。
社内では、気候変動への取り組みの一環として自動車関連取引におけるシナリオ分析を実施しており、自動車の電動化に伴う関連部品の需要は中長期的に増加していくものと見込んでいます。
今後の成長を占う上で、EVや半導体、二次電池といった成長市場への注力は重要な鍵となるでしょう。
商社としての情報網と製造業としての技術力をいかに融合させ、シナジーを創出していくかが、持続的な成長の原動力になると考えられます。
その一方で、事業の根幹をなす非鉄金属の市況変動は、業績に直接的な影響を与えるリスク要因です。
また、グローバルな取引の拡大に伴い、為替相場の動向も無視できない要素であり、これらの外部環境の変化への的確な対応が求められます。
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1922年創業の大紀アルミニウム工業所は、アルミニウム二次合金の製造・販売が中核です。
国内外に子会社19社および関連会社1社を持ち、特にアジア市場で強固な事業基盤を構築しています。
同社は長年培ってきたアルミニウムのリサイクル技術や溶解技術を活かし、品質・コスト・サービスで世界水準を目指すとともに、行動指針として顧客第一主義を掲げています。
同社は「G&G (Global & Green)」をコンセプトに、グローバルな事業展開と環境貢献の両立を目指しています。
長期ビジョン「DAIKI∞NEXT∞」を策定し、サステナビリティを重視した経営に取り組んでいます。
特に、EV化の進展による軽量化ニーズの高まりは、自動車分野での再生アルミニウム需要を拡大させる可能性があり、同社はこれを重要な事業機会と捉えています。
また、世界的な環境規制の強化と循環型社会への移行は、リサイクル技術に強みを持つ同社にとって重要な事業環境の変化と言えます。
アジアを中心とした海外拠点を活用し、グローバルな需要を取り込むことで、事業機会を追求しています。
一方で、事業運営上のリスクとして、アルミニウムスクラップなどの原材料価格や、ロンドン金属取引所の地金相場、為替レートの変動が収益に影響を及ぼす可能性があります。
これらの市況変動に対しては、購買体制の構築などで敏速に対応し、持続的成長を目指していく方針です。
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アーレスティは、自動車部品を中心としたダイカスト事業をグローバルに展開する企業です。
同社はCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)時代を見据え、特に電動車向け部品へのシフトを加速させており、2040年を目標とする長期経営計画の下で持続的な成長を目指しています。
技術戦略としては、CO2排出量削減(2030年度50%削減目標)や電動車向け部品の受注拡大、車体部品の開発に注力しています。
これらの取り組みは、自動車業界の構造変化に対応し、新たな市場機会を捉えるための重要な布石と言えるでしょう。
今後の事業環境として、EV市場の拡大は同社が注力する分野の一つです。
燃費・電費向上のための車体軽量化ニーズを背景に、電動系部品や車体系部品へのアルミニウムダイカストの採用が拡大する可能性があり、同社はこれを事業機会と捉えています。
しかしながら、事業は主要顧客である自動車メーカーの生産動向に大きく依存しており、その変動が経営に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、エネルギー価格や人件費といった製造コストの高騰も、収益性を圧迫するリスク要因として注視が必要です。