製造小売(SPA)で勝ち抜くアパレル銘柄4選!各社の「勝ち筋」から見る事業モデル

アダストリア

消費者の価値観が多様化し、トレンドの移り変わりが激しいアパレル業界。
この変化の激しい市場を勝ち抜くためのビジネスモデルとして、多くの企業が「SPA(製造小売業)」を採用してきました。
SPAとは、商品の企画から製造、物流、販売までを一気通貫で行うモデルのことで、顧客ニーズへの迅速な対応やコスト削減、高い利益率を実現できるのが特徴です。

しかし、同じSPAモデルを採用していても、その戦略は各社で大きく異なります。
グローバル市場で圧倒的な存在感を放つ企業、国内で多様なブランドを展開し顧客の心を掴む企業、あるいは独自のデータ経営で新たな市場を切り開く企業など、その戦い方は千差万別です。

本記事の目的は、まずアパレル業界を代表するSPA関連企業をリストとして把握していただくことです。
個々の企業の詳細な戦略分析や、具体的な業績動向については、ストレイナーの特集記事開示検索機能をご活用ください。

その世界戦略の鍵は?柳井氏がかつて語った”グローバルブランドの条件”とは?「ファーストリテイリング(9983)」

finboard

「ユニクロ」や「GU」を擁し、日本を代表するアパレル企業として世界にその名を轟かせるファーストリテイリング。
アジア市場での成功を基盤に、欧米市場でも確固たる事業基盤を構築し、名実ともにグローバルブランドとしての地位を確立しています。

同社は大きな変革期を経験してきました。
2022年8月期の決算会見の場で、柳井正会長兼社長は「本当の意味でグローバルブランドになれる条件が整った」と語り、経営体制の刷新を宣言。
当時は、欧州での商品開発チーム新設や自前の配送網整備など、次なる成長に向けた布石を次々と打ち出す方針を示していました。

では、当時語られた「グローバルブランドになれる条件」の真意とは何だったのでしょうか。
そして、その宣言から数年が経過した今、同社の経営体制はどのように進化を遂げ、世界と戦っているのでしょうか。

▼ファーストリテイリングが欧米で成功するための「次の一手」とは?
>>【注目決算】ファーストリテイリング 本決算で過去最高業績 柳井氏「条件整った」

多ブランド戦略の勝算は?複数ブランドの集合体で市場を攻略する「アダストリア(2685)」

finboard

「GLOBAL WORK」や「niko and ...」、「LOWRYS FARM」など、テイストの異なる多様なブランドポートフォリオで、幅広い世代のニーズに応え続けるアダストリア。
同社は、それぞれのブランドが持つ世界観を大切にしながら、全体として安定した成長を目指す「多ブランド展開SPA」の代表格です。

2019年2月期の決算時点では、各ブランドの特性を見極めた店舗運営が行われており、ニコアンドなどの一部ブランドでは店舗当たりの売上が向上していました。
当時は2021年2月期に向けて営業利益率8.0%という野心的な目標を掲げていたことからも、その勢いがうかがえます。

多数のブランドを抱えることは、一見すると非効率にも思えます。
かつて描いた成長戦略は、その後の市場環境の変化の中でどのように進化してきたのでしょうか。
巧みなポートフォリオ戦略の核心に迫ります。

▼アダストリアが多ブランド展開でも高収益を維持できる理由とは?
>>営業利益44%増!「アダストリア」2019年2月期決算

“しない経営”の真髄とは?データ活用で新市場を拓く「ワークマン(7564)」

finboard

作業服という専門領域で圧倒的なシェアを誇りながら、「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」で一般消費者向け市場をも席巻するワークマン。
高機能・低価格という明快なコンセプトを武器に、アパレル業界の常識を覆す快進撃を続けてきました。

その成長の原動力となったのが、2022年当時、土屋哲雄専務(当時)が提唱した「第2のデータ経営」です。
「頑張らない」「在庫を持たない」といった独自の哲学のもと、需要予測にデータを活用し徹底した効率化を実現。
このユニークな経営手法を武器に、次なる一手として靴の専門店展開へと本格的に乗り出しました。

当時打ち出された「第2のデータ経営」というコンセプトは、現在のワークマンの成長にどう結びついているのでしょうか。
その根底に流れる独自の経営哲学の真髄を紐解きます。

▼ワークマンを急成長させた「第2のデータ経営」の全貌とは?
>>ワークマン土屋哲雄専務インタビュー「第2のデータ経営で世界トップ10へ」

構造改革の先に描く未来は?プラットフォーム戦略を推進する「ワールド(3612)」

finboard

「UNTITLED」や「TAKEO KIKUCHI」など、数多くの有名ブランドを擁するアパレル業界の雄、ワールド。
同社は従来OEM生産の比率が高かったものの、市場の変化に対応すべく、自社で企画から製造、販売までを一貫して行うSPAモデルへの構造転換と、ブランドポートフォリオ戦略の見直しを進めてきました。

同社の近年の動きで特に注目すべきは、自社ブランド事業で培ったノウハウを、他社ブランドにも提供する「プラットフォーム事業」の強化です。
これは、ワールドが持つ企画、生産、販売などの機能を外部に解放する試みであり、自社の成長だけでなく、「ロス・ムダのない持続可能なファッション産業の構築」や「ファッションの多様性と永続性の実現」を目指し、業界全体の活性化にも貢献する可能性を秘めています。

既存のブランド事業を着実に成長させつつ、デジタル事業やプラットフォーム事業といった新たな領域を同時に展開するワールドの経営戦略は、消費者の多様化やデジタルシフト、市場の成熟化、競争激化といった激変するアパレル市場において、どのような未来を描くのでしょうか。
その成長戦略の行方が注目されます。