KDDIが約200億円の評価額で買収するIoT企業ソラコムの真価とは

今日、IoTのための通信プラットフォームを展開するベンチャー企業「ソラコム」のKDDIによる買収が発表されました。

株式会社ソラコムの子会社化について ~グローバルにも通じる「日本発」のIoTプラットフォーム構築へ~

KDDIがソラコムを約200億円で買収―日経新聞が報道

評価額はおよそ200億円とされ、ここ最近の国内ベンチャーのM&Aとしてはかなり巨額の部類に入ると思います。

しかしながら、とある情報筋から「ソラコムが200億円というのは安いんじゃないか」と聞きました。「200億円が安いとか、金銭感覚ずれてるんじゃないか」と思いましたが、自分はソラコムのことをよく知りません。

せっかくなのでこれを機に少し調べてみたいと思います。まずは、創業からこれまでの経緯をみてみましょう。

ソラコムのこれまでの経緯

ソラコムは2014年11月に、Amazon Web Servicesのエバンジェリストだった玉川憲氏によって設立されました。

玉川、AWSやめるってよ!走り続けた5年と卒業後を聞く(2015/2/2)

玉川氏はAWS時代から業界では知られた存在で、黎明期のAWSの国内普及に尽力した人物として高く評価されています。

その彼が設立した会社ということで、創業当初から7億円の資金調達を決めるなどかなり話題になったことをよく覚えています。

【詳報】ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?(2015/9/30)

IoT向け格安MVNO「SORACOM Air」とセキュリティ「SORACOM Beam」を発表

最初に取り組んだのがIoTのための格安MVNOサービス「SORACOM Air」です。月額300円からという破格の安さで大きな話題を呼びます。

また、同時に発表された「SORACOM Beam」では、IoT最大の課題の一つであるセキュリティの観点から、通信経路の暗号化などを提供するサービスも展開。

あらゆる「モノ」をインターネットでつなぐ「IoT」分野は当時から注目されていて、それを実現するためのプラットフォームということで期待を集めたようです。

公開半年で24億円の資金調達とグローバル展開

翌年にはベンチャーキャピタルや事業会社からさらに24億円を調達。グローバル展開に力を入れることを発表していました。

ソラコム、シリーズBで24億円を追加資金調達して早くも「同時多発的な」世界展開へ(2016/5/11)

この時点で2000社がアカウントを開設し、パートナー社数は150社に達したそうです。ドコモベースだったんですね。

およそ2000のアカウントは全て有料アカウントで、一旦使い始めると移行が難しく解約が少ないことも評価のポイントだったようです。

その数ヶ月後にはアメリカの本家テッククランチでも取り上げられています。

Soracom launches SIM cards and services easing IoT rollout cost

LoRaWAN(ローラワン)対応の製品を発表

今年の初めには新しい通信規格である「LoRaWAN(ローラワン)」対応の製品を発表。

牛の個体管理や橋梁センサーにも―、ソラコムが低消費電力IoTに新技術を採用(2017/2/7)

WANというのは「ワイド・エリア・ネットワーク」のことで、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)が室内などの近距離で使われるのに対し、広域で利用される通信規格です。

「LoRaWAN(ローラワン)」はWANの中でも低消費電力で、伝送距離が最大10キロメートル程度ととても長いことが特徴。

乾電池でも数年は使えるということで、記事の中には牛の個体管理などで実用化されているとのこと。

そして、それから半年後の今日、KDDIからの買収が発表されました。

ソラコムの現在と約200億円の評価額の要因

さて、2015年9月の公開からわずか2年弱で200億円(300億円という説も)買収ということで、やはり国内のM&A事例としてはかなり大規模だと思います。

ソラコムが革新的なのはわかりますが、どの辺りが200億円という評価額に通じたのでしょうか。

株式会社ソラコムの子会社化について

KDDIの公式発表によれば、ソラコムのサービスは120を超える国と地域で利用可能であり、利用実績は国内外合わせて7,000顧客を超えているそうです。

また、パートナープログラム「SORACOM パートナースペース」ではすでに350社以上が登録しており、その中で技術資料やマーケティング支援などを提供しています。

ソラコムの料金体系について

売上を推定したいので、ソラコムの料金体系について調べます。

ソラコムが現在提供しているサービスは「データ通信」「アプリケーション連携」「ネットワーク」の三つあります。

1. データ通信「SORACOM Air」

初期費用954円、基本料金一日10円、そのほかデータ通信料

2. アプリケーション連携「SORACOM Beam」など

リクエストごとに0.0009円など。

3. ネットワーク「SORACOM Canal」など

セットアップ一回につき980円または9800円(サービスによる)、基本料金が一時間あたり60円から310円ほど。

ネットワークサービスについてはAWSと連携しての提供になっているようです。


これだけの情報からソラコムのARPU(ユーザーごとの売上)を推測するのは難しいですが、「SORACOM Air」だけでも1アカウントあたり月3万円程度の売上は見込めそうです。

なぜなら、ソラコムのターゲット顧客はIoT事業者であり、その人たちがデータ通信機器を100も使わないということはまずないと考えられるからです。

仮に一アカウント当たり月3万円の売上が立っているとして、それが7000社ですから、それだけで月2.1億円の売上になります。年間だと25.2億円。


この仮定は完全なる妄想なので、もしかしたら見当はずれな計算になっているかもしれませんが、仮にこんな感じだったとしたら、ソラコムはすでに年間数十億円以上の売上をあげていることになります。

実際はもっと大きい可能性が高いと思いますが、これより少ないということはおそらくないのではないでしょうか。

そうすると、成長性がとても高いことなども考慮すれば上場するには十分な規模です。そう考えると、200億円評価額での買収というのは確かにちょっと意外。

世界で戦える可能性という点でも日本のベンチャーとしてはレアでもあります。

ただ、TechCrunchのその後の記事によれば全株取得ではなく、過半数株式の取得ということです。

今後、次のネットワーク規格である「5G」が実用化される中で、いかに5G対応のIoTサービスを市場に投入できるかが、ソラコムにとっての勝負所となります。

それを高い確率で実現するために大手キャリアへのグループ入りを選んだ、という形のようです。

ソラコムは2016年の夏頃からKDDIとの協業を進めてきたということです。子会社上場という可能性もありますし、今後も引き続き注目していきたいと思います。

まとめ

結論です。ソラコムの価値と200億円買収の理由は次の3点に集約されると思います。

・注目されるIoTの「土台」を提供し、7000社の有料顧客と350社のパートナー企業を有している

・一顧客あたり月数万円の売上が立つと考えると、年間売上高は数十億円以上の規模に達していると推定できる

・上場も目指せる規模だが、来るべき5Gへの対応を確実なものとするため、大手キャリアのグループ傘下に入る