東大発・ガチの人工知能ベンチャー「パークシャテクノロジー」はすでに驚くほどの高収益体質

PKSHA Technology

2012年創業のベンチャー企業であるパークシャ(PKSHA)テクノロジーの上場承認が本日発表されました。

ホームページがやたらカッコいいですが、巷の情報によれば、上場を機にコーポレートブランドを一新したようです。

パークシャ(PKSHA)テクノロジーとは

ホームページでは「未来のソフトウェアを形にする」というキャッチコピーが輝いていますが、一体何をしている会社なのでしょうか。

パークシャ・テクノロジーは2012年にアルゴリズムの研究を行う技術者・研究者により創業されました。

これまで、世界中に存在するソフトウェアは、プログラムを人間の手で実装することによって作られています。

多少自動化された部分があるとしても、それはあらかじめ人間が設計したコードを吐き出すだけです。

しかし、2012年以降、深層学習技術(いわゆるディープラーニング)により、ソフトウエアに帰納的推論能力を埋めこむことが可能になったそうです。

パークシャ・テクノロジーは、現存する世界中のソフトウェアのほとんどが、帰納的推論能力をもつアルゴリズムを具備し知能化されたものによっていずれ置き換えられるという予測のもと、それを自ら実現する企業として事業を展開しているようです。


技術顧問には東大で人工知能の研究者として知られる松尾 豊氏が名を連ねているほか、創業者で代表取締役の上野山 勝也氏も松尾研究室で博士(機械学習)取得後、助教になった経歴があるようです。

いわゆるハードコアのテクノロジーベンチャーですね。

パークシャ・テクノロジーの製品ラインナップ

パークシャ・テクノロジーの事業内容は「アルゴリズムライセンス事業」となっています。

最新テクノロジーを駆使したアルゴリズム・モジュールを開発し、それをライセンスすることで収益をゲットする構造のようです。

主なアルゴリズム・モジュールは以下の7つ。

テキスト理解モジュール <Dialogue_1>

テキスト内容を理解、テキストを分類・類型化する。社内文書からの特定文書の抽出や、コールセンターログの分析・可視化などに使える。

対話モジュール <Dialogue_2>

自然言語処理技術での対話・応答の制御を行う。チャットボットやロボットとの自動対話に使える。

画像/映像解析モジュール <Recognizer>

画像・映像データ内の物体認識を行う。利用用途は店頭カメラの自動認識機能など。

推薦モジュール <Recommender>

レコメンデーションによる情報出しわけを行う。ECサイト上の商品推薦や、ウェブサイト上での情報推薦など。アマゾンでよく見るタイプのやつですね。

予測モジュール <Predictor>

時系列情報に対して未来予測を行う。利用用途はECサイトのユーザーの購買予測や、金融機関での与信スコアの構築など。これは金の匂いがします。

異常検知モジュール <Detector>

器の故障検知、不適切コンテンツの検知など、異常値の検出。工場の検品処理の自動化・半自動化に使えるそうです。

強化学習モジュール <Reinforcer>

行動履歴から学習を行う。顧客シナリオの自動・半自動選択など。


また、これらのモジュールをベースとしたパッケージ・ソフトウェアも販売しており、主要なものとして次の三つがあるようです。

CELLOR(セラー)

学習技術を用いたCRM(顧客関係管理)ソリューション。

小売業やサービス業などで、優良顧客が離れるのを防いだり、新規顧客が定着するのを促進するためのツールのようです。

これまで人力で行われていたデータ分析を自動化・半自動化することで時間やコストを削減。

PKSHA Vertical Vision(パークシャヴァーティカルビジョン)

領域特化型の画像・動画の認識エンジンです。

今後、さまざまな業界でカメラを利用したイメージング機器が普及すると予想される中、それらと連携して動作し、物体検知や認識を行い、サービス品質を高めることが狙いとのこと。

BEDORE(ベドア)

子会社の株式会社BEDOREで提供する、チャット対応やFAQ対応の自動化ソリューション。

現在は人手で行われている接客、コールセンターなどの自動化や半自動化を実現。

パークシャ・テクノロジーの事業展開

基本的にすべて法人向けソリューションなので、一般ピーポーにはなかなか理解ができません。

実際にどんな企業が導入しているのでしょうか。

「パークシャ 協業」でググってみたところ、いくつかのケースを見つけることができました。

インベスターズクラウド

東京大学発ベンチャー パークシャテクノロジー社と共同開発 人工知能を活用したチャットボット「TATERU Bot AI」 2017年2月28日サービス提供開始

アプリではじめるアパート経営「TATERU」を提供するインベスターズクラウドが、パークシャとの協業でチャットボット「TATERU Bot AI」の開発を行なっていたようです。

2017年2月末にサービス開始したそうですが、「TATERU」の利用者向けということで、同サービスの一部として提供されているようです。

NTTドコモ

(お知らせ)株式会社PKSHA TechnologyとAI分野での業務資本提携について

天下のドコモとも協業しています。

2016年9月27日に業務資本提携契約を締結し、パークシャ社に出資を行なっていたようです。

具体的なサービスとしては、AIの技術を活用した購買支援システム「ecコンシェル」を共同開発し、2016年6月8日から提供。

昨年10月末の時点でファッション業界など約250社の法人企業が契約していたそうです。

LINE

カスタマーサービス領域の汎用型対話エンジン「BEDORE(ベドア)」がLINE株式会社の「LINE Customer Connect」と連携、日本語の自動応答領域での協業を開始

子会社であるBEDORE社を通じ、LINEとも提携していたようです。

LINEの法人向けカスタマーサービス「LINE Customer Connect」と連携し、日本語の自動応答領域での協業を開始。

これが2016年の11月ですが、その直前(10月)時点ですでにチャットプラットフォーム上での導入ユーザー数は3000万人を超え、アルゴリズム配信ベースでの月間アクティブユーザー数は300万人を超えていたそうです。


上記のような協業の中で急速に業績を伸ばしていったことが伺えます。

パークシャ・テクノロジーの業績と財務状況

最後に、同社の業績や財務についてもチェックしておきましょう。

まずは全体の業績から。

2012年の創業から4年あまりで売上は4.6億円、経常利益1.6億円ほどに達しています。

経常利益率は34%あり、ライセンス供与型ならではの利益率の高さがうかがえます。

次に、直近四半期の損益計算書を見てみます。

売上高は7億円と、すでに前年の通期売上高を超えています

売上原価は2.2億円で、原価率は31.5%、粗利率は68.5%ということになります。

販管費はわずか1.1億円です。このほとんどはおそらく人件費でしょうね。

営業利益は3.7億円で、営業利益率は52%。。

純利益はすでに2.5億円になっています。なかなかとんでもない感じになっていますね。

バランスシートもみてみます。まずは資本の部から。

資産合計は11億3635万円。そのうち流動資産が9億7510万円、固定資産が1億6057万円となっています。

流動資産のうち8億2477万円が現預金、1億3292万円が売掛金。

固定資産のうち有形固定資産が2435万円、無形固定資産が9927万円、投資その他が3695万円となっています。

次は負債と純資産の部です。

負債の合計は2億2645万円で、そのうち流動負債が2億2632万円。無借金経営っぽいですね。

これから上場するというのにすでに5億円近い利益剰余金があります。こんなことってあるんですね。

キャッシュ・フローも確認しておきたいのですが、四半期決算ではキャッシュフロー計算書は出ないのと、前年から大きく変わっていそうな感じなのでスキップします。


まあでも目立ったコストは研究者・技術者たちの「頭脳」への報酬だと思うので、究極の低資本経営というか、驚くような利益率を叩き出してくるのは間違いない気がします。