Switch効果で売上高2.5倍になった任天堂の増収要因と今期の見通し
任天堂

先日決算短信を見ていたら、任天堂がなかなかすごいことになっていました。

第一四半期の売上高は1540億円で前年同期からプラス148%の成長です。

営業利益も162億円(前年同期には51億円の赤字)だったので大躍進ですね。


今期の通期業績予想は、売上高7500億円、営業利益650億円となっているので、ペース的にはこれでも予定には達していません。かなり強気の予想だったのですね。

最近の任天堂を見ている感じだと、この増収の要因はまあ「Nintendo Switch」だろうなーという気がしますが、念のためもう少しちゃんと読み進めてみることにします。

売上内容から増収の要因を探る

決算短信の補足にある「連結経営成績に関する説明」には、次のようにあります。

「当第1四半期(平成29年4月~6月)の状況は、NintendoSwitchでは4月に発売した『マリオカート8デラックス』が好調に推移し、全世界で354万本の販売を記録したほか、6月に発売した『ARMS』も全世界で118万本の販売と順調な滑り出しを見せています。また、前期に発売した『ゼルダの伝説ブレスオブ ザワイルド』も全世界で116万本(累計販売本数392万本)と引き続き堅調に推移しており、ハードウェアの販売台数は197万台、ソフトウェアの販売本数は814万本となりました。」

やはりSwitchによる新ゲームの売れ行きが好調のようです。

『マリオカート8デラックス』『ARMS』は一本6000円くらい、『ゼルダの伝説ブレスオブ ザワイルド』は6980円とのことなので、ソフトウェアの平均卸売単価を4500円と仮定すると、これらのソフトウェア814万本で366億円の売上があったことになります。

一方、NintendoSwitch本体の希望小売価格は29980円なので、仮に卸売価格を20000円とすると197万台で394億円の売上。

これらの仮定のもとで合計すると、Switch関連の売上が760億円あったことになります。

平成29年3月期1Qの売上高が619億円なので、Switchだけで前年同期を超える売上を稼いだ、ということになります。


また、さらに読み進めると、その他の要点は次のような感じです。

・ニンテンドー3DSでは『ファイアーエムブレムEchoesもうひとりの英雄王』が人気となったが、ハードウェアの販売台数は95万台(前年同期比1%増)、ソフトウェアの販売本数は585万本(前年同期比31%減)

・amiibo(アミーボ)は、フィギュア型が約160万体、カード型が約130万枚の販売にとどまった

・ダウンロードビジネスは、NintendoSwitchのパッケージ併売ソフトやダウンロードコンテンツによる売上が伸び、110億円(前年同期比41%増)の売上

・スマートデバイスビジネスでは、『スーパーマリオラン』『ファイアーエムブレム ヒーローズ』などの継続的な利用で売上は90億円(前年同期比450%増)の売上

・その結果、売上高は1,540億円(海外1,138億円、海外売上比率73.9%)、営業利益は162億円、経常利益は309億円、四半期純利益は212億円

以上のことから考えると、『スーパーマリオラン』などのスマホ関連ゲームによる増収により+28%、NintendoSwitchによる増収が+120%という感じでしょうか。かなりざっくりとした推定ですが。。

短信を読み進めると詳しい補足情報がありました。

売上高1540億円のうち、1038億円がNintendoSwitchによるものとなっています。思ったより大きかったですね。

グラフにしてみます。

こうしてみるとNintendo Switchの大きさがわかりますね。突然全体の7割近くを占めているわけですから。。

Nintendo Switchの地域別の売上もみてみましょう。

日本での売上は236億円で、Switch全体の22.7%ほど。米大陸が一番大きくて446億円(43%)、欧州が246億円(23.7%)となっています。

任天堂のゲームはアメリカで人気ということでしょうか。ニンテンドー3DSでも日本よりアメリカの方が多く売り上げています。

今期の見通し

さて、大きく増収したものの、通期予想の売上高7500億円を達成できるペースではありません。今後の見通しはどんな感じでしょうか。

「連結業績予想に関する説明」をみると、以下のように書いてあります。

・NintendoSwitchについては、7月に『Splatoon2』、10月に『スーパーマリオオデッセイ』を全世界で発売するほか、ソフトメーカーからも複数の有力タイトルを発売予定

・ニンテンドー3DSでは、新ハード「Newニンテンドー2DSLL」を全世界で6月から7月にかけて発売。ソフトウェアでは、全世界で7月に『Hey!ピクミン』を発売するほか、11月には『ポケットモンスターウルトラサン・ウルトラムーン』の発売を予定。ソフトメーカーからもニンテンドー3DS向けに大型タイトル投入が発表されている

・1990年に発売した「スーパーファミコン」をコンパクトなサイズに仕上げ、スーパーファミコン用ゲームから21本のソフトを収録した「ニンテンドークラシックミニスーパーファミコン」を9月から10月にかけて国内外で発売予定

・スマートデバイスビジネスでは、新たなゲームアプリを投入するとともに、継続運営に注力


NintendoSwitchの好調に加えて、ニンテンドー3DSの新しいラインナップである「Newニンテンドー2DSLL」の発表や、「スーパーファミコン」の懐古マシンを発売することで業績は加速する見込みのようです。

ポケモンGoにもそういうところがありましたが、任天堂は黄金時代に子供だった層をターゲットとして、ちょっとしたセンチメンタリズムに訴求していますね。嫌いじゃないですが。

NintendoSwitchに関してはかなりの品薄状態に陥ったこともあり、6月22日に任天堂が「品薄へのお詫び」を掲載しています。

任天堂はここ数年の業績があまり好調でなかったこともあり、在庫の読みが少し保守的だったのかもしれません。

バランスシートの状況

最後に、四半期末時点でのバランスシートをチェックしておきましょう。

資産の合計は1兆4756億円で、そのうち1兆1390億円が流動資産、3365億円が固定資産です。かなり流動資産に寄ってますね。

流動資産の内訳は、7020億円が現預金、2510億円が有価証券、632億円がたな卸資産、653億円が貸倒引当金となっています。総資産の半分が現預金というキャッシュリッチさ。

たな卸資産は商品の在庫、貸倒引当金は売掛金が回収できなくなった場合に備える資産のようですね。

固定資産3365億円の内訳は、投資有価証券が1752億円、有形固定資産が860億円、無形固定資産が128億円となっています。

続いて負債・資本の部です。

負債合計は2409億円。そのうち流動負債が2094億円で固定負債が314億円。

流動負債のうち1193億円が買掛金などです。

純資産合計は1兆2346億円で、そのうち利益剰余金が1兆4591億円もあります。純資産超えてるし。

自己株式の保有によってマイナス2524億円が生じています。


あまり任天堂のバランスシートをしっかりと読んだことがなかったですが、これがいわゆる日本の優良企業か〜という感じになっていると思います。積み上がった膨大な利益剰余金。。

今期の任天堂がどうなるのか、楽しみにみていきたいと思います。