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なかなか資金繰り厳しそうだけど、JD.comは「中国版Amazon」として成功できるのか?

  • 店舗販売から始まったJD.comの歴史
  • NTTドコモや三井物産並みの売上規模に成長
  • コスト構造をAmazon.comと比べてみる
  • 今後の戦いに十分な資金力はあるか?財政状態をチェック

今回は中国でEコマース事業を展開するJD.comについて調べます。

中国ECではアリババがトップシェアを握っていますが、アリババがマーケットプレイス型であるのに対し、JD.comは「直販型」Eコマースとなっています。

アリババは中小ECの仲介役として機能しているのに対し、JD.comは自社で在庫を仕入れて自ら販売しているのです。

例えていうなら、アリババのビジネスモデルはeBayや楽天などに近いのに対し、JD.comはAmazon.comとほとんど同じです。


ただ、Amazon.comのビジネスモデルは、創業者のジェフ・ベゾスも言っているように「Eコマースにおいて圧倒的なシェアを獲得すること」を前提に成立するモデルです。

大きなシェアを獲得することで売上原価率を下げ、その分は営業費用としてさらに投資することで消費者に最高のサービス体験を提供する。逆に言うと、そのレベルまでたどりつかないと「儲からない」ビジネスでもあります。

しかし、中国では前述のように、アリババが圧倒的なシェアを築いています。JD.comはその中で十分大きなシェアを握り、キープしていくことができるのでしょうか?

店舗販売から始まったJD.comの歴史

まずはJD.comの歴史を軽く振り返ってみます。

1998年6月、創業者のリチャード・リュー氏が貯めた1万2000元で中関村のテクノロジー・ハブの4平方メートルの小売ユニットを借り、「JDマルチメディア」を創業。

当初はハードディスクやフロッピーディスクなどの「光磁気ディスク」を販売する、小さな小売店だったようです。

2003年、SARSが流行したとき、リチャード氏はオンライン商取引の可能性を感じ、商品をオンラインで売り始めます。

2007年には独自の物流ネットワークを作り始め、サプライチェーンの最適化に取り組みます。その目的は「顧客体験を素晴らしいものにするため」ということで、Amazonに通ずるものがあります。

2008年には電化製品以外の一般商品も扱い始め、2013年には流通総額が1255億元(207億ドル)に達します。

2014年3月には中国最大のSNS「WeChat」「QQ」を有するテンセントと戦略的提携を結び、同社のSNSへの独占的なアクセスを手にします。

同年5月にはアリババより一足先に上場(NASDAQだけど)。  


また、マーケットプレイス型プラットフォーム(2010年)、クラウドファンディング(2014年)、未上場のスタートアップ企業向けのエクイティ・ファイナンスサービスなど、直販EC以外の事業も展開しています。

2016年には米国小売チェーンの巨人、ウォルマートとも戦略的提携を結びます。ウォルマートは過去に中国のEC企業「Yihaodian」を買収しており、同社の経営権をJDに譲る代わりに、JDの株式の5%を取得しています。

NTTドコモや三井物産並みの売上規模に成長

ここからは事業数値を追ってみましょう。まずは損益の推移です。

2010年の売上は85億元だったのが、2016年には2601億元(4.4兆円)にまで増えています。

日本企業で近い売上規模を持つのはNTTドコモ(4.6兆円)、デンソー(4.5兆円)、三井物産(4.4兆円)、住友商事(4.0兆円)、ブリジストン(3.3兆円)など。そう考えるとJD.comの事業規模のデカさがわかります。


収益の内訳もみてみましょう。

売上のほとんどが「Online direct sales」、つまり直販によるものだということがわかります。

他の事業からの収益も2242億元(3804億円)ということで大きいですが、全体の比率で言うと8.6%にすぎません。しかし、割合は年々増加しています。

コスト構造をAmazon.comと比べてみる

JD.comの特徴は何と言ってもその売上規模のデカさです。Amazonの2016年の売上は1359億ドルですが、JD.comはすでにその27.5%の規模に到達しています。

JD.comの通期営業黒字化はまだ果たされていませんが、現時点でのコスト構造はどのようになっているでしょうか?対売上比率でグラフにしてみます。


売上原価率が営業費用の大部分を占めていますが、2012年の売上原価率は91.6%だったのに対し、2016年には84.8%にまで改善しています。

直販型の巨大Eコマース企業として、これは大きな改善ですが、Amazonと比べるとどうでしょうか?

売上原価率以外にも、物流コスト(Fulfillment)、広告宣伝費(Marketing)、技術&コンテンツ(Technology & content)、それから営業費用の合計を比べてみましょう。



まずはダイレクトコマースのキモとも言うべき、売上原価率について比べてみます。

Amazonの売上原価率は80%以下と小さく、2016年には65%にまで改善しています。JD.comの原価率も改善していますが、2016年時点で84.8%と、Amazonと比べると20%近く大きくなっています。


続いて、同じく直販型ECのキモである物流(Fullfilment)コストです。

JD.comが8%に対してAmazonは13%と、物流オペレーションにより潤沢なコストを投資できていることがわかります。

続いて、広告宣伝費です。

両者とも売上に対して6%以下ということで割合としては小さいですが、Amazonの方がより多くのマーケティング費用を費やしています。

次に、開発・コンテンツ費用(Technology & content)です。

開発・コンテンツ費用はJD.comの場合、売上に対して2%ほどとなっていますが、Amazonは12%近くに上っています。中国とアメリカにおける給与水準の違いもありますが、それにしても大きな違いです。

最後に、営業費用全体の比較をします。

Amazonの営業費用は売上に対して30%以上ありますが、JD.comは15%前後と半分程度になっています。

Amazon売上原価率がJD.comに比べると低いため、その分を開発費用などに潤沢に透過できていることがわかります。

今後の戦いに十分な資金力はあるか?財政状態をチェック

JD.comが今後、Amazonと同じように売上原価率を改善できるかどうかは、これからさらに事業規模を拡大できるかどうかにかかっています。

しかし、利益を生み出していない以上は、原資をどこから持ってくるかというのが問題になります。

JD.comはそのために必要な軍資金を十分に持っているのでしょうか?資産や負債の状態をバランスシートから紐解いてみます。

まずは資産の推移です。

資産の合計は2016年末には1603億元(2.7兆円)に上っています。

一目見てわかるのは、現預金(Cash & cash equivalents)の割合が減っていること、商品在庫(Inventories)と投資(Investments)がかなりの部分を占めていることです。

割合でも見てみましょう。

2013年には現金同等物が総資産の40%を占めていましたが、2016年には12%にまで低下しています。商品在庫(Inventories)も24.6%を占めていたのが、18%に割合が減少しています。

代わりに増加したのが、投資(Investment)とのれん(Goodwill)、貸付金(Loan receivables)などで、それぞれ総資産の14.5%、4%、7.9%に増加しています。


続いて負債の内訳を見る前に、自己資本比率を確認しておきます。

2013年の自己資本比率は7.95%と、債務超過にかなり近い水準になっていましたが、2014年の株式上場により56%に改善しています。

しかし、その後また負債が増え続け、2016年には21%にまで減ってしまいました。

負債の内訳はどのようになっているか確認してみます。

負債のほとんどが1年以内に返済しなくてはならない流動負債(上のグラフの最初の4項目)で、2016年にはそれが1047億元(1.8兆円)に及んでいます。

総資産が1603億元(2.7兆円)、現金同等物が198億元(3359億円)ですから、どう考えても資金繰りは大変そうです。


純資産もみておきましょう。

2014年の株式上場により資本剰余金(Additional paid-in capital)が471億元(7991億円)に増加しています。株式上場による資金調達に大きく頼っていることがわかります。


株式発行による資金調達にも限界がありますし、今後、借入金に頼る必要に迫られると、自己資本比率は20%からさらに低下し、債務超過に陥ってしまう可能性も小さくありません。

そうなると、成長率を犠牲にしてでも一旦営業黒字化を目指した方がいいのではないか、、と考えてしまいます。


実際、今年の四半期決算を見ると、2017年3月期には四半期での営業黒字化を果たしています。

しかし、直近の2017年6月期には再び営業赤字に転じています。

ただ、営業費用は売上高とほとんどトントンくらいの水準には管理されているので、JD.comとしては、今のコスト水準を保ちながらどれだけ急速にシェアを拡大できるか、というのが今後の勝負になっていくのではないかと思います。


今後、JD.comは直販のメリットを活かしてどれだけアリババの牙城を崩すことができるでしょうか。とても楽しみですね。

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